北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 白粉花
白粉花
おしろひ花の黑きたね
爪を入るれば粉のちりぬ。
幼(をさ)なごころのにくしみは
君の來たらぬつかのまか。
おしろひ花の黃(きな)と赤、
爪を入るれば粉のちりぬ。
[やぶちゃん注:ナデシコ目オシロイバナ科オシロイバナ属オシロイバナ Mirabilis jalapa。ウィキの「オシロイバナ」によれば、『南アメリカ原産で江戸時代始めごろに渡来。花が美しいため観賞用に栽培されるが、広く野生化もしている』。『茎はよく枝分かれして灌木状となるが』、『節がはっきりしていて、木質化はしない。全体にみずみずしい緑。花は赤、黄色、白や絞り模様(同じ株で複数の色のものもある)などで、内、白と黄の絞りは少ない。花は夕方開き、芳香がある。このため和名としてはユウゲショウ(夕化粧)とも呼ばれるが、この名はアカバナ科』(フトモモ目アカバナ科 Onagraceae。マツヨイグサ属 Oenothera などが属する)『のものにも使われているので注意を要する。英語ではFour o'clock、中国語では洗澡花(風呂に入る時間から)、煮飯花(夕飯の時間から)などと呼ばれる。夜間に開き』、『花筒が長いので口吻の長い大型の夜行性鱗翅目でなければ吸蜜は困難である。日本のオシロイバナでは主にスズメガ』(鱗翅目スズメガ科 Sphingidae)『が吸蜜し、送粉に関わっている。オシロイバナは網状脈である』。『花弁はなく、花弁に見えるのは』萼(がく)で、『基部は緑色でふくらんでいる。また花の根元にある緑色の』萼『のようなものは総苞』(そうほう:花序全体の基部を包む葉が変化した器官)『である。花が咲き終わった後、がくは基部を残して脱落し』、果実(種子を一個含む)が萼の『基部に包まれたまま熟して全体が黒い種子のようになる。種子には粉状の胚乳があり、これからオシロイバナの名がついた。根はいも状になり、暖地では冬に地上部が枯れてもこの地下部が生き残り』、『次の年に根から芽を出す』。『根や種子に窒素化合物のトリゴネリン』(trigonelline)『を含み、誤食すると嘔吐、腹痛、激しい下痢を起こす』。根は利尿や『関節炎の生薬として処方され』、『葉は切り傷』などにも効果がある、とある。私の好きな花である。]
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