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2020/06/12

北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) カステラ

 

カステラ

 

カステラの緣(ふち)の澁さよな、

褐色(かばいろ)の澁さよな、

粉(こな)のこぼれが眼について、

ほろほろと泣かるる。

まあ、何とせう、

赤い夕日に、うしろ向いて

ひとり植ゑた石竹。

 

[やぶちゃん注:「褐色(かばいろ)」既出既注であるが、白秋の好きな色にして好きな呼称なので再掲しておく。漢字表記は「蒲色」「樺色」。蒲 (がま) の穂のような色で、かなり強めの赤みを帯びた黄色である。

「石竹」ナデシコ目ナデシコ科ナデシコ属セキチク Dianthus chinensis。初夏に紅・白色などの五弁花を咲かせる。葉が竹に似ていることが名の由来とされる。中国原産。]

 

[やぶちゃん注:以上の詩篇は見開き右ページ(ノンブル「108」)に全篇、配され、左ページは挿絵(目次では「幼年の日」と標題する)差し込みとなっている。

 この挿絵は、御覧の通り、右上部から左中間の空白に以下のような詩篇が手書きで記されてある。

   *

 

ⅠⅡ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ

 Ⅷ Ⅸ Ⅹ Ⅺ Ⅻ ‥‥‥

  ‥‥‥‥

  過ぎゆく時計

   の音のあや

   しさよ。

    晝ハ晝とて

      苅麥に…

      ‥…

 

   *

実際には二行目は少年の帽子の左側(絵では向かって右側)が挟まっているのを無視した。この末尾は赤い色が最後の点の下から右へ「」のように入って不規則な太くなぞった波線が右手に伸びており、最終行のリーダは等間隔で六つ打たれてある。少年の左腰辺りに「白秋」の赤いサインが縦に入っている。左上に蟬のようなよく判らないものが描かれてあるが、何だか判然としない。赤い丸が二つ上部にあり、ずっと蟬だと思っていたが、今、見るに蟬ではない。「遠景なら頭部を寄せ合った二人のシルエットか?」などとも勝手に思ったりしたが、これ、形状から見るに、螢の胸部背側の赤色のそれと見ると、下方の羽根の開きも非常にしっくりくる。そう言えば、序の「4」で、『この騷ぎが靜まれば柳河にはまたゆかしい螢の時季が來る。 

   あの眼の光るは

   星か、螢か、鵜の鳥か、

   螢ならばお手にとろ、

   お星樣なら拜みませう…… 

 稚(をさな)い時私はよくかういふ子守唄をきかされた、さうして恐ろしい夜の闇にをびえながら、乳母の背中(せなか)から手を出して例の首の赤い螢を握りしめた時私はどんなに好奇の心に顫へたであらう。實際螢は地方の名物である』とあった。さればこれは螢に間違いない。

 さても、この詩篇は本詩集には存在しない。自然に想起するのは、採用されなかった「おもひで」詩篇のこの「過ぎし日」詩群の一つとしてよいだろう(手元の資料やネット上のデータを見たが、見当たらないようだ。何時か全集に当たって調べてみようとは思うている)。言わずもがなであるが、冒頭のローマ数字は時計の文字盤である。標題も絵もそれに相応しい。厚手の外套を着たこの可愛い少年は白秋自身と見てよかろう。]

 

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