北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 銀のやんま
銀のやんま
二人(ふたり)ある日はやうもなき
銀のやんまも飛び去らず。
君の步みて去りしとき
銀のやんまもまた去りぬ。
銀のやんまのろくでなし。
[やぶちゃん注:「銀のやんま」トンボ(蜻蛉)目不均翅(トンボ)亜目ヤンマ科ギンヤンマ属ギンヤンマ亜種(東アジア産)ギンヤンマ Anax parthenope julius。ウィキの「ギンヤンマ」他によれば、『頭から尾までは』七センチメートル、翅長は五センチメートルほどの『大型のトンボである。ヤンマとしては体長に比して翅が長い。頭部と胸部が黄緑色、腹部が黄褐色をしている。オスとメスは胸部と腹部の境界部分の色で区別でき、オスは水色だが』、『メスは黄緑色である。翅は透明だがやや褐色を帯びていて、メスの方が翅色が濃い。昔は』東京附近では『オスを「ギン」、メスを「チャン」と呼んでいた』。『基亜種は日本を含む東アジア、インド、カザフスタンまで分布する。日本に分布する』本亜種は『日本の他に島嶼部も含めた東アジア全般に生息する』(北海道では稀れ)。『湖、池、田など、流れがないか、もしくはごく緩い淡水域に生息する。ヤンマ類の中では馴染み深い種類で、各地にいろいろな方言呼称がある』。『成虫は』盛夏に最も多く、『昼間に水域の上空を飛び回る。飛翔能力は高く、高速で飛ぶうえにホバリングなどもこなす』とある。「やんま」は大形のトンボの総称で古くからあり、漢字では「蜻蜒」などと書く。この呼称はトンボの古名「ゑむば」「えば」が転じたとする説、「山蜻蛉(やまゑんば)」の義とする説などがある。因みに、その「ゑむば」自体もよく判らず、「羽の美しい」の意で「笑羽(ゑば)」からとする説、四枚ある羽が重なっていることから「八重羽(やゑば)」が転じた説など多数ある。]
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