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2020/06/03

石川啄木 詩集「あこがれ」(初版準拠版) のぞみ

 

   の ぞ み

 

    

 

やなぎ洩る

月はかすかに

額(ぬか)を射(ゐ)て、ほの白し。

かすかなる『のぞみ』の歌は、

砂原にうちまろぶ

若人(わかうど)の琴にそひぬ。

 

つきかげは

やや傾ぶきぬ。

川柳(かはやぎ)に風やみぬ。

おもへらく、ああ我が望み、

かたぶきぬ、衰ろへぬ。

夢のあと、あはれ何處(いづこ)。

 

    

 

月かげの

沈むにつれて、

白き額(ぬか)また垂(た)れぬ。

ああいのち、そはかの薔薇(さうび)、

蕾(つぼみ)なる束(つか)の間(ま)の

まだ咲かぬ夢の色か。

 

あるは又、

なげきの丘に

ふと萠(も)えし夢小草(ゆめをぐさ)

根をひたすなげきの水に

培(つちか)はれ、かなしみの

犧(にへ)と咲く黃の小花か。

 

わが望み、

(夢の起伏(おきふし)、)

ゆめなれば、砂の上の

身は既に夢の殘骸(なきがら)、

かたぶきぬ、おとろへぬ、

夢のあと、あはれいづく。

 

    

 

月落ちて、

心沈みて、

聲もなき暗の中、

琴は猶、のこる一絃(ひといと)、

雲路(くもぢ)にも星一つ、

『のぞみ』をば地にたたず。

 

たれし額(ぬか)、

ややにあがりぬ。

彼は云ふ、わが望み、

夢ならば永世(とこよ)の夢よ、

うつり行く『時』の影、

起伏は皆夢ぞと。

わかうどは

きれたる絃(いと)を

星かげにつなぎつつ、

起(た)ちあがり、又勇ましく

ほほゑみて、砂の原

趁(お)ひ行きぬ、生命(いのち)の影を。

           (甲辰十一月十九日)

 

[やぶちゃん注:初出は明治三七(一九〇四)年十二月号『明星』。「国文学研究資料館 電子資料館」の「近代書誌・近代画像データベース」のこちらで初出形を読むことが出来る。但し、有意な異同はない。]

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