北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 三十五
三 十 五
緣日(えんにち)の見世ものの、臭(くさ)き瓦斯にも面(おもて)うつし、
怪しげの幕のひまより活動寫眞(くわつどう)の色は透かせど、
かくもまた廉白粉(やすおしろひ)の、人込(ひとごみ)のなかもありけど、
さはいへど、さはいへど、わかき身のすべもなさ、淚ながるる。
[やぶちゃん注:「臭(くさ)き瓦斯」アセチレン・ガス灯の臭い。ロケーションは浅草辺りであろう。]
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