北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 三十三
三 十 三
あはれ、去年(こぞ)病みて失せにし
かのわかき辯護士の庭を知れりや。
そは、街(まち)の角(かど)の貸家の
褪(さ)めはてし飾硝子(かざりがらす)の戶を覗(のぞ)け、草に雨ふり、
色紅き罌粟のひともと濡れ濡れて燃えてあるべし。
あはれまた、そのかみの夏のごとくに。
[やぶちゃん注:「かのわかき辯護士」不詳。]
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