北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 斷章 四十
四 十
つねのごと街(まち)をながめて
ナイフ執りフオク執り、女らに言葉かわせど、
色赤きキユラソオの酒さかづきにあるは滿たせど、
かなしみはいよいよ去らず、
かにかくにわかき身ゆゑに淚のみあふれていでつつ。
[やぶちゃん注:「キユラソオ」Curaçao(フランス語)。リキュールの一種。古くからオランダが主産地で、現在もオランダ自治領であるカリブ海のクラサオ(キュラソー)島特産のビター・オレンジの未熟果の果皮を乾燥させ、基酒であるラムに浸出したもの。フランス産キュラソーはブランデーを基酒とする。オレンジ色のオレンジ・キュラソーや無色のホワイト・キュラソーなどがあり、アルコールは約四十度と高く、カクテルによく用いられる。]
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