北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 朝
朝
日は皐月(さつき)、
小野のしら花
鈴狀(すずなり)に咲きて夜あけぬ。
靜(しづか)なり、ひとり坐れば。
靜なり、ひとり坐れば。――
くるる戶の
きしるにほひも。
君は早や、
麥の靑みを――
鈴鳴らし朝の禱(いの)りに、――
白(すら)ぎぬに摺りもこそゆけ、
白ぎぬに摺りもこそゆけ、
野の寺へ。――
かくも思ひぬ。
ああしばし、
星のうすれに、
髮なぶる風のなよびも、
水鳥のほののしらべも、
水鳥のほののしらべも、
われききぬ。
きみがこころも。
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