北原白秋 抒情小曲集 おもひで (初版原拠版) 目くばせ
目くばせ
門づけの*みふし語(がた)りがいふことに
高麗烏(かうげがらす)のあのこゑわいな。
晝の日なかに生れた赤子
埋(う)めた和尙が一人(ひとり)あるぞえ。
古寺の高麗烏(かうげがらす)のいふことに、
みふし語(がた)りのあの絃(いと)わいな。
今日(けふ)も今日とて、かんしやくもちの
振(ふ)られ男がそこいらに。
*鄙びて粗末なる一種の琵琶を抱きて卑近なる
物語を歌ひながらゆく盲目の門づけなり、
地方特殊のものにてその歌ひものをみふしと
云ふ。
[やぶちゃん注:「みふし語(がた)り」「みふし」の太字部分は底本では傍点「ヽ」。但し、「語」にルビを振った関係上、「語」には傍点が実はない。しかし、これは版組上の止むおえない仕儀と考えられるので、特異的に「語」も太字とした。また、その冒頭部分の「*」は底本では「み」の右上方位置にある。部分は底本では注は底本では全三行であるが、ブラウザの不具合を考えて、四行で示した。
「みふし語り」「みふし」孰れも確認出来ない。小学館「日本国語大辞典」にも載らない。]
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