越境して温泉に行く
結婚記念日は国や県の籠城指示下にあったので、妻と祝うことが出来なかった。昨日から一泊で網代の温泉に行き、真珠婚式を祝った。二月の私の誕生日の温泉以来、四ヶ月振りの県境越境であった。と言っても、私はこの七年余り、実際には、この神経症的な騒ぎの間の籠城と全く同じように、終始一貫して書斎に籠城してきたのであり、全く以って、この COVID-19 の出来なんぞは、私の生活に微塵も変化を与えはしなかったのだ。というより、多くの人々がこの短期の籠城で憂鬱になる以前に、とっくに私の憂鬱は私の固着し凝集した惨めな魂の核として完成していたのである。だから、この世間の騒擾など、実は、どうということは――ない――のである。