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« 柴田宵曲 俳諧随筆 蕉門の人々 丈艸 三 | トップページ | 今日――先生はKの「覚悟」を致命的に誤読し――掟破りの卑劣な先手に着手してしまう―― »

2020/07/29

大和本草卷之十三 魚之下 緋魚 (最終同定比定判断はカサゴ・アコウダイ・アカメバル)

 

【外】

緋魚 其色如緋有一種紅魚金緋一種婦魚近緋

右ハ王氏彙苑ニ出タリ今筑紫ノ方言ニ馬ヌス人ト云

魚アリ形狀紅鬃魚ノコトク長五寸許鯛ノ類ニ非ス

其首ハメハルノコトシ口ト目ト大ナリ色ハ甚赤クシテ

朱ノコトシ是緋魚欤赤魚其形狀頗メハルノコトシ色

赤ク乄黃色マシレリ無毒病人食ツテ無害赤キ叓

馬ヌス人ニ及ハスアコノ類多シ色紅ナラサルアリ黃㸃多

キモアリ又長州ノ海ニカラカコト云魚アリアコヨリ小ニ乄

赤キコトアコヨリ甚シ順和名ニ䱩魚ヲカラカゴト訓

○やぶちゃんの書き下し文

【外】

緋魚 『其の色、緋のごとし。一種、紅魚有り、金緋。一種、婦魚、緋に近し。』〔と。〕右は「王氏彙苑」に出たり。今、筑紫の方言に「馬ぬす人」と云ふ魚あり。形狀、紅鬃魚〔(こうそうぎよ)〕のごとく、長さ五寸許り。鯛の類〔(るゐ)〕に非ず。其の首は「めばる」のごとし。口と目と大なり。色は甚だ赤くして朱のごとし。是れ、緋魚か。赤魚(あこ)。其の形狀、頗〔(すこぶ)る〕「めばる」のごとし。色、赤くして、黃色、まじれり。毒、無し。病人、食つて、害、無し。赤き事、「馬ぬす人」に及ばず。「あこ」の類、多し。色、紅ならざるあり。黃㸃多きものあり。又、長州の海に「からかご」と云ふ魚あり。「あこ」より小にして、赤きこと、「あこ」より甚し。順〔が〕「和名」に「䱩魚」を「からかご」と訓ず。

[やぶちゃん注:本種は以下の叙述を一つ一つ検証して行かないと同定は出来ない。しかも困ったことに後の方になっても、必ずしも本当の姿が見えてこない厄介な叙述なのである。そこで今回はまず、変則的に、最後にある、この項の中で、本邦で最も古い叙述記載(平安中期)である源順の「和名類聚抄」(承平年間(九三一年~九三八年)に勤子内親王の求めに応じて源順(みなもとのしたごう)が編纂した類書(百科事典)的要素を持った国語辞典)から攻めてゆくことにする。

『順が「和名」に「䱩魚」を「からかご」と訓ず』「和名類聚抄」の「卷第十九 鱗介部第三十 龍魚類第二百三十六」のここ(国立国会図書館デジタルコレクションの寛文七(一六六七)年版本)に、

   *

䱩魚 崔禹錫食經云䱩【莫往反与罔同和名加良加古】似䱌魚而頰著鉤者也

(䱩魚(カラカコ) 崔禹錫が「食經(しよくけい)」に云はく、『䱩【「莫(ク)」・「往(ワ)」の反、「罔(マウ)」と同じ。和名「加良加古(からかこ)」。】は䱌魚(いしふし)に似て頰に鉤(かぎ)を著(つ)くる者なり。)

   *

とある。「䱌魚」はここの二つ前に(画像で原文は見えるから、推定訓読のみ示す)、

   *

䱌(イシフシ) 崔禹錫が「食經」に云はく、『䱌【音「夷」。和名「伊師布之」。】は、性(しやう)、伏沈(ふくちん)し、石閒(せきかん)に在る者なり。

   *

まず、この似ているという「(イシフシ)」は「石伏」で「イシブシ」、則ち、日本固有種で北海道南部以南の日本各地に広く分布している(現在、絶滅危惧IB類(EN)指定を受けているから「していた」とすべきであろう)、

条鰭綱スズキ目カジカ科カジカ属カジカ Cottus pollux

を有力な候補と考えてよい。「鰍」が最も知られる漢字表記で、「ゴリ」「ドンコ」の異名も広く行われており、基本、淡水系で多く認められ、捕獲も川であり、非常に古くから食用にされてきた、日本人には馴染みの種(群)である(古く朝廷が内陸にあったことを考えると、淡水魚であるという比定はまず一番に挙がってくる)。さて、カジカ種群(Cottus pollux complex)には、生活史や形態的・遺伝的特徴が有意に異なる集団が明確に存在し、主な区別群としては、現在、大卵型(河川陸封型)・中卵型(両側回遊型)・小卵型(両側回遊型・湖沼陸封型)が知られている(詳しくはウィキの「カジカ(魚)」を参照されたい)。そこである人はこう言うかも知れぬ。

『それなら、そのカジカ類の一部を「魚(カラカコ)」=「カラカゴ」と呼んでいたのだと解釈すればいい』と。

ところが、それで手打ちとなるかというと、そうは問屋が卸さないのだ。そもそもが本邦で食用とされた川や河口・潟で主に獲れる魚はカジカ以外にも、他に多くの、

ハゼ類(条鰭綱ハゼ目ハゼ亜目 Gobioidei

がおり、それらも生態や面相の類似から、やはり「いしぶし」と呼ばれていたと考えてよいからである。いや、さらに、同じように川底の石の下にいる状態で獲れる全然違う他の川魚だってまさに「石伏」魚に含まれるのである。近代以前の一般人にとっては生物学的分類による区別は、有毒生物がその中に含まれない限りは、必要性が、ほぼ、ないからである。

しかも、ここで戻って「和名類聚抄」の肝心な「䱩魚」の方をよく読まなくてはいけない。そこには魚に似て」いるけれども、「頰に鉤(かぎ)を著(つ)くる者」だと言っているのだ。これは中国の本草書「食經」の記載だからと言って無視は出来ない。源順がこう書くに際しては、それなりに腑に落ちた認識があるからであると考えねばならず、それが実際、後の本草学者によって少しも否定されなかった以上は、「からかご」は「いしぶし」似ているけれども、区別があって、頰=鰓附近に棘(或いは針)を持っていると言っているということである。しかし、一般的な淡水のカジカやハゼでそのような種はピンとこない(胸鰭部分が吸盤化している種や肥大した種はカジカやハゼにいくらもいるが、それを「鉤」と敢えて言っているのは、とりもなおさず、「痛い棘」としか私は読めない)。
しかし、川底辺りに棲息し、胸鰭辺りに危険な棘を持っている淡水魚はいるのだ!

条鰭綱ナマズ目ギギ科ギバチ属ギバチ Pseudobagrus tokiensis

ギバチ属アリアケギバチ Pseudobagrus aurantiacus

ギバチ属ギギ Pelteobagrus nudiceps

孰れも日本固有種で、三種ともに背鰭・胸鰭の棘は鋭く、刺さると激しく痛む。前二者(嘗てはアリアゲギバチ(九州西部・長崎県壱岐にのみ分布)はギバチと同一とされていた)では生物学的・薬理的に単離されたわけではないが、古くから「毒を持っている」ともされる。

則ち、彼らも同定候補に含まれてくるということになるのである。

「私の風呂敷が広げ過ぎだ」という御仁のために示しておこう。非常によくお世話になるサイト「真名真魚字典」のこちらの、

341

を見られたい。そこでは参考字体に「」も一緒に挙がっているのだ。頭は『○邦名』『(1)[罔]魚=カジカ(集覧「大日本水産会編・水産宝典」「水産俗字解」「水産名彙」)。カラカゴ(同「水産俗字解」「水産名彙」)』。『(1)カラカキ(カラカギ)。カラカコ(カラカゴ)。(2)チチカフリ。チチカムリ。チチンカムリ』と始まり、「和名類聚抄」その他の考証を経て、結論として、「・「」・「カラカゴ」・「イシブシ」とは、『おそらく棘ないし鉤をもつギギの仲間、あるいはハゼ・カジカの仲間を指して付けられた用例として多く集』まった対象を指すと考えるのが適切であるとされているのである。

 さて。ではこれで範疇を囲い込んだかと言うと――これがまた――ダメ――なのだ。

 何故か? 既にお読みになった時から感じておられるであろうが、益軒の叙述は、凡そ、

淡水産魚類の記載ではなく、海産魚類としか思われないから

なのである。

益軒は『「馬ぬす人」と云ふ魚』がいるが、それは「鯛の類〔(るゐ)〕に非ず」と言い、『其の首は「めばる」のごと』くだ、と孰れもタイとメバルと、海産魚類を比喩に用いているからである。無論、川魚を比喩形容するのに海産魚類を用いてはいけないという法はない。スズキ目ケツギョ科 Coreoperca 属オヤニラミ Coreoperca kawamebari のごとく、海の魚みたような川魚もいますからな。しかし、決定的なのは『長州の海に「からかご」と云ふ魚あり』と言ってしまっていることである。

 さてもまた、振り出しに戻ってしまうことになる。

 いや! 挫けまいぞ! またしても「ケツ」から行こうじゃないか!

『長州の海に「からかご」と云ふ魚あり。「あこ」より小にして、赤きこと、「あこ」より甚し』零から始める。「カラカゴ」の異名を持つ海産魚を探す。早速、釣り具サイトで引きがある。『週刊つりニュース』の「釣・楽(ちょうらく)」の「カサゴ カサゴ科」だ。『カサゴ科に属し、体長は三十五センチに達する。日本各地、朝鮮半島、台湾、中国の沿岸に分布し、岩礁や藻場にすむ。頭が大きく、眼・鼻・額・頚のそばに強い棘を持ち、ごつごつした感じを与える。体色は沿岸のもので黒褐色、沖合のものは暗赤色で、個体による差が大きい』として、以下、かなり詳しい地方名が並ぶが、そこに『山口県でホウゴウ・ウドホウゴウ・カラカゴ・カラコ・ゴウチ・山口・福岡・長崎県でアラカブ、福岡県でアルカブ・オオアルカブ・モアルカブ・ゴウゾウ、長崎県でゴウザ、熊本県でガラカブ・カラカブ』と出るのだ(なお、今一つ、『兵庫・岡山県でメバル、兵庫県・大阪府でアカメバル』と呼んでいることにも注意しておきたい)。この「カラカゴ」は無論のこと、一見、似ていない「アルカブ」が熊本で「ガラカブ」「カラカブ」となるのを知ると、これは「カラカゴ」系の血を引く呼称と強く感じられるのである。しかも、これらが、益軒が殆んどの時間を過ごした福岡に近いという点も頼り甲斐があるというもんなのだ。されば、ここに、俄然、

条鰭綱新鰭亜綱棘鰭上目カサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科 Scorpaenidae〈或いはメバル科 Sebastidae〉メバル亜科カサゴ属カサゴ Sebastiscus marmoratus

或いはその仲間たちが、新しい候補者として名乗りを挙げてくるのである。カサゴは一般には、体色を暗い褐色とすることが多いが、ウィキの「カサゴ」によれば、『浅い所に棲むカサゴは岩や海藻の色に合わせた褐色をしているのに対し、深い所に棲むカサゴは鮮やかな赤色である。赤色光の吸収と残留青色光の拡散が起こる海中、すなわち青い海の中では、赤色系の体色は環境の青色光と相殺されて地味な灰色に見えるため、これは保護色として機能する。簡単に言うと、赤い光は海の深い所まで届かないので、赤い色をしたカサゴは敵や獲物から見つかりにくい。これは深海における適応の一つで、実際、深海生物には真っ赤な体色のものが多く見られる』とあって、本文の赤い魚体にしっかり合致するのである。別なミクシイの公開記事(私は先般やめてしまった)に「カサゴ」を下関で「カラカゴ」と呼んでいるとあった。ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」の「カサゴ」のページの「地方名・市場名」の欄には『カラカブ』と『カラコ』がある。

 さて、では、その「カラカゴ」は「あこ」より小さいが、遙かに赤いと言っているところの、「あこ」は何だ? これはまんず、ピンとくるのがいる。深海魚の

フサカサゴ科 Scorpaenidae〈或いはメバル科 Sebastidae〉メバル属アコウダイ Sebastes matsubarae

だ。彼はズバリ! 「アコ」と別称し、他に「アコウ」「メヌケ」「メヌキ」などとも呼ばれ(近縁種にオオサガ(顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱棘鰭上目スズキ目カサゴ亜目メバル科メバル属オオサガ Sebastes iracundus)・サンコウメヌケ(カサゴ亜目メバル科メバル属サンコウメヌケ Sebastes flammeus)・バラメヌケ(カサゴ亜目メバル科メバル属バラメヌケ Sebastes baramenuke)がいるが、これらも一括して「メヌケ」と呼ばれることが多い)、太平洋側では茨城県から高知県沖、日本海側では新潟県から山口県沖に分布し、特に相模湾や駿河湾の深所で多獲される。深海の岩礁地帯に棲息し、体色は鮮やかな赤色で、しばしば背中に大きな黒斑を持つのを特徴とする。全長六〇センチメートル以上になる。十二月から四月頃までの間は水深二〇〇から三〇〇メートルのやや浅いところに移動して産卵するとされているが、他の季節には水深六〇〇から七〇〇メートルの深所を住み家としている。以上は主文を平凡社「世界大百科事典」に拠ったが――さても――アコウダイは漢字ではどう表記するか? ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」の「アコウダイ」のページを見よう!

阿侯鯛・赤魚鯛・緋魚・阿加魚

だ! やっと本文の頭からちゃんと落ち着いて読み始められる、正常に注が出来る!

「王氏彙苑」中国の古い類書(百科事典)と思われるものに「彙苑」があり、それを明代の文人政治家王世貞(一五二六年~一五九〇年)が註したものがあるが、それか。よく判らぬ。中文サイトでも電子化したものを見出せなかった。

「緋魚」実は私の寺島良安の「和漢三才圖會 卷第四十九 魚類 江海有鱗魚」に「緋魚」がある。そこには以下のようにある。

   *

あかを    赤魚【俗】

緋魚     【俗云阿加乎又略阿古】

フイ イユイ

 

興化府志云緋魚其色如緋

△按緋魚狀畧似鯛而厚※〔→濶〕眼甚大而突出其大者二三尺細鱗鰭窄尾倶鮮紅如緋肉脆白味甘美關東多有各月最賞之攝播希有之以藻魚大者稱赤魚而代之

[やぶちゃん字注:※=「濶」の(つくり)が「闊」。]

赤鱒【俗云阿加末豆】 狀類緋魚又似鱒色深赤味亦不佳

   *

あかを    赤魚【俗。】

緋魚     【俗に阿加乎と云ふ。

フイ イユイ  又、略して阿古。】

 

「興化府志」に云ふ、『緋魚、其の色、緋のごとし。』と。

△按ずるに、緋魚、狀、畧ぼ鯛に似て、厚く濶し。眼、甚だ大にして突出す。其の大なる者、二~三尺。細鱗、鰭、窄(すぼ)く、尾倶に鮮紅、緋のごとし。肉、脆く白し。味、甘美。關東に多く有り。各月、最も之を賞す。攝[やぶちゃん注:摂津。]〕・播[やぶちゃん注:播磨。]、希に之有り。藻魚(もいを)の大なる者を以て赤魚(あこ)と稱して之に代ふ。

赤鱒(あかます)【俗に阿加末豆と云ふ。】 狀、緋魚(あかを)に類して、又、鱒に似たり。色、深赤。味も亦、佳ならず。

   *

そこで私は嘗て以下のように注した(ここでは注を追加した)。

   *

[やぶちゃん注:カサゴ目フサカサゴ科メバル属アコウダイ Sebastes matsubarae か。スズキ目ハタ科のキジハタ Epinephelus akaara も瀬戸内や大阪地方にあってアコウ又はアカウと呼称されるが、ここは深海から引上げる為に著しく突出する眼球及び全身が極めて赤い色を呈している点等から、前者をとる。

・「興化府志」は明の呂一静(李攀竜 (りはんりょう) らとともに「後七子 」(ごしちし) の一人とされ、盛唐の詩・秦漢の文を尊ぶ古典主義を唱えたことで知られる)らによって撰せられた現在の福建省の興化府地方の地誌。一五七五年成立。

・「赤鱒」アカマス。スズキ目フエダイ科バラフエダイ Lutjanus bohar をこのように呼称するが、これは南洋系で現在でも小笠原方面から入荷するとあり、同定候補とはならない。これがスズキ目ハタ科のキジハタ Epinephelus akaar か? キジハタには三重県で「アズキマス」という異名を持ち、他に「アカハタ」という異名もあるようだが、「アカマス キジハタ」の検索ではヒットしない。「アカマス」という異名ではカサゴ目フサカサゴ科 Sebastiscus marmoratus がいるが、「深赤」は疑問であるし、以下の「藻魚」の項に「笠子魚」が掲げられている以上、除外される。識者の意見を伺いたい。

   *

「婦魚」不詳。検索でヒットせず。ただ、緋色の魚の一種を、かく異名するというの附には落ちる。

『筑紫の方言に「馬ぬす人」と云ふ魚あり』サイト「みんなの知識 ちょっと便利帳」の「魚(魚介類)の名前と漢字表記」のこちらに、「アコウダイ」の項に『ウマヌスビト、アコウ、アコ』とある。また、ネット検索で見出した「Ⅲ 魚等にかかわる漢字」(PDF)の表中に『アカウオ 馬盗人(ウマヌスビト)』とある。この「アカウオ」とは、カサゴ亜目メバル科メバル属アラスカメヌケ Sebastes alutus を指すから、何ら問題はない。但し、同種はオホーツク海から太平洋沿岸、青森県から宮城県の太平洋沿岸でしか捕獲されない。しかし、「アカウオ」は近代以前は「アコウダイ」の異名としても少しもおかしくない。いや! ぼうずコンニャク氏の「市場魚貝類図鑑」の「アコウダイ」異名に、東京都などで「アカウオ」「赤魚」が載り、『赤いメバル類の総称。後にアラスカメヌケや輸入ものの赤いメバル類の呼び名に変わる』とある。則ち、赤いメバル類或いは、もっと広くカサゴ類の赤みの強い種群はやはり嘗て「アカウオ」と普通に市場で呼ばれていたのである。 

「紅鬃魚〔(こうそうぎよ)〕」「鬃」これは馬の鬣を意味する語である。背鰭の棘鰭を言っていると考えてよいから、以上のアコウダイを始めとするカサゴ群の魚類に相応しい。ただ、個人的には「馬盗人」という命名への由来への根拠はひどく気にはなる。由来を探し得なかったのが気に懸かる。識者の御教授を乞うものである。

「鯛」スズキ目タイ科 Sparidae のタイ類。全く別種でも類体型から「~ダイ」は本邦の常套的呼称で、大衆は「~ダイ」という名を何でも好む。その結果としてタイとは待った全く無縁のトンデモない魚をタイの仲間だと思って騙されて食わされる結果となっている。例えば、スズキ目ベラ亜目カワスズメ科ナイルティラピア Oreochromis niloticus は純淡水魚でタイとは全く無関係なのに「イズミダイ」「チカダイ」と称して切り身として売られ、多くの日本人が安い鯛と勘違いして食わされたケースがある。また、彼らは順応性が高く、強い繁殖力を持ち、大型漁として釣りの対象となる。安易に放流されれば、確実に日本の河川の生態系に深刻な打撃を加えることは確実である。生態系被害防止外来種に指定されているが、既に沖縄の河川ではティラピアが異様に増えてしまっている。

「めばる」条鰭綱新鰭亜綱棘鰭上目カサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科又はメバル科メバル属メバル(アカメバル)Sebastes inermis

或いは同属の近縁種

シロメバル Sebastes cheni

或いは

クロメバルSebastes ventricosus の孰れかである。特にここではアカメバル(赤眼張)が叙述対象である考えてよい。同種の釣魚としての俗称は「赤(あか)」「金(きん)」「沖メバル」であるからで、ここで最後に挙げる候補追加種として最も相応しい。

「色、紅ならざるあり。黃㸃多きものあり」近海で獲れるカサゴ類は黄・白斑の斑模様が普通に認められる。

 最後に。最初の注の考察は無化されたとは私は思っていない。淡水産カジカ類の形状は海産カサゴ類の形状と似ている箇所が種々見られ、有毒棘条もしっかり持っている種もいるからである。古典的博物学の面白みは、実に見た目の共通を以ってグループを作る――今はDNAやアイソザイム分析の分子生物学的分類学によって見捨てられてしまった視認形態相同類似型分類学――諧謔的に言わせて貰えば、「俳諧的な『見立て』を楽しむところの、古典的なスローで如何にも人間臭い見た目第一主義の綜合学的分類」でもあったのである。]

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