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2020/08/04

大和本草卷之十三 魚之下 鞋底魚(くつぞこがれい) (シタビラメ・ムシガレイ・ヒラメ)

 

鞋底魚 中夏ノ名也クツノソコノ形ニ似タリ本邦ニテモクツゾコト云倭漢同名也又水カレイトモ云カレイト同類ニテ別ナリ肉ウスクホソ長シ味比目魚ニヲトル無毒病人無妨綱目ニ比目魚ト一物トス然レトモ相似テ別ナリ閩書ニ鰈魦魚形扁而薄名鞋底魚左目明右目晦昧今閩廣以此魚名比目不知比目又一魚也トイヘリ綱目ヨリ閩書ニ書ス處詳ナリ可從

○やぶちゃんの書き下し文

鞋底魚(くつぞこがれい[やぶちゃん注:ママ。]) 中夏の名なり。くつのそこの形に似たり。本邦にても「くつぞこ」と云ふ。倭・漢、同名なり。又、「水かれい」とも云ひ、「かれい」と同類にて別なり。肉、うすく、ほそ長し。味、比目魚(かれい)にをとる[やぶちゃん注:ママ。]。毒、無し。病人に妨げ無し。「綱目」に、比目魚と一物とす。然れども、相似〔(あひに)〕て、別なり。「閩書」に『鰈魦魚〔(てふさぎよ)〕、形、扁(ひら)く薄し。「鞋底魚〔(あいていぎよ)〕」と名づく。左の目は明〔(めい)〕に、右の目は晦昧〔(くわいまい)たり〕。今、閩・廣、此の魚を以つて「比目〔(ひもく)〕」と名づく。「比目」、又、一魚〔なるやを〕知らず』といへり。「綱目」より「閩書」に書す處、詳〔(つまびらか)〕なり。從ふべし。

[やぶちゃん注:「鞋底魚(くつぞこがれい)」前の「大和本草卷之十三 魚之下 比目魚(カレイ) (カレイ・ヒラメ・シタビラメ)」で既注であるが、独立項なので、再掲する。現行でもこの「クスゾコ」という異名は生きており、カレイ目カレイ亜目ウシノシタ上科ササウシノシタ科 Soleidae同科は右体側に目がある。ササウシノシタ科の殆んどの種は小さいため、殆んど漁獲対象とならず、獲れても捨てられる。従って流通にも出現しない。但し、食べられないわけではない。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」にはササウシノシタ属ササウシノシタ Heteromycteris japonica が載り、『じっくり揚げると丸ごと食べられる』とあるが、調べると、体長は十五センチメートル内外で如何にも小さい)及びウシノシタ科 Cynoglossidae同科は左体側に目がある)の種群に総称。特に後者のウシノシタ科に属する魚の総称としては「シタビラメ」(舌平目)が水産庁が「別表1 国産の生鮮魚介類の名称例」で公的にウシノシタ科の総称として認定し、以下の二種が例として載る。

ウシノシタ科イヌノシタ亜科タイワンシタビラメ属クロウシノシタ Paraplagusia japonica

(体長は最大で三十五センチメートルほど。単に「ウシノシタ」と呼ばれることもあるほか、「クツゾコ」「ゲンチョウ」「ゲタ」「セッタガレイ」「ゾウリ」「ゾウリウオ」「チヨオギンカレイ」「ベロ」など多彩な地方名をもつ)

イヌノシタ亜科イヌノシタ属アカシタビラメ Cynoglossus joyneri(体長は二十五センチメートル程度)

両種は共に「シタビラメ」の代表格として流通でお馴染みである。ウィキの「アカシタビラメ」によれば、『有明海地方では靴の底に似ていることから、「くつぞこ」が次第に訛り、「クチゾコ」、「クッゾコ」と呼ばれて』おり、『岡山県などの瀬戸内地方東部では「ゲタ」と呼ばれ、煮付けの定番魚の一つとなってい』て、『山口県ではアカシタビラメを「レンチョウ」と呼び煮付けなどにする』とある。また、近縁種が複数おり、『それぞれ色や産卵時期も異なるが、混称としてアカシタビラメやクチゾコなどと呼ばれる』として、以下の三種が挙っている。

イヌノシタ属イヌノシタ Cynoglossus robustus

イヌノシタ属カラアカシタビラメ Cynoglossus semilaevis

イヌノシタ属コウライアカシタビラメ Cynoglossus abbreviatus

追加しておくと、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」ではさらに、

イヌノシタ属コウライアカシタビラメ Cynoglossus abbreviates

イヌノシタ属デンベエシタビラメ Cynoglossus lighti(本邦国内では有明海固有種)

イヌノシタ属ゲンコ Cynoglossus interruptus

イヌノシタ属オキゲンコ Cynoglossus ochiaii

イヌノシタ属オタフクゲンコ Cynoglossus sp.

ウシノシタ科オオシタビラメ属オオシタビラメ Arelia bilineata

が挙っており、例外的に

ササウシノシタ科セトウシノシタ属セトウシノシタ Pseudaesopia japonica

も挙がっており、『白身でやや旨味に欠けるもの。バターや脂を使った料理に向いている』とある。

「中夏」夏の半ば。限定的には陰暦五月の呼称。仲夏。

「くつ」「鞋」は草履・草鞋(わらじ)の底でとって問題なく、庶民はそのイコールで認識していたし、シタビラメ類の形状からもしっくりくる。「鞋底魚」は中国由来であるので、一応、言っておくと、「鞋」(音「アイ」)は足首より下の部分のみを覆ったり、そこに固定する履き物をかく言い(代表はやはり草履や草鞋状のもの)、「靴」は足首より上から足全体を覆うものを称する。

「倭・漢、同名なり」前項「比目魚(カレイ)」で示した「本草綱目」の「比目魚」でも集解の筆頭に別名として「鞋底魚」を挙げている。

「水かれい」これも前項「比目魚(カレイ)」で挙げた、

カレイ科ムシガレイ属ムシガレイ Eopsetta grigorjewi

の方言名である。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のムシガレイのページによれば、「ミズガレイ」「ミズカレイ」として、北海道・宮城県仙台・石巻市石巻魚市場・愛知県・京都府久美浜・舞鶴市舞鶴魚市場・兵庫県但馬地方・島根県・広島県呉市と非常に広域で使用されていることが判る。「味わい」の項に『透明感のある白身でやや水分が多く、うま味は少なめ』とあるのでそれが由来であろう。

『「綱目」に、比目魚と一物とす』「本草綱目」のそれ(「比目魚」)は、前項「比目魚(カレイ)」の最後に挙げてある。

「閩書」明の何喬遠(かきょうえん)撰になる福建省地方の地方誌。以下は、

   *

鰈魦魚 形匾而薄、邵武名「鞋底魚」。又名漯沙。漯音「撻」、魚在江行漯漯也、又名「貼沙」。「吳越春秋」、「東海王餘」或是乎。左目明、右目晦昧。今閩・廣以此魚名比目、不知比目又是一魚也。

   *

「閩・廣」元来の「閩」は中国古代に長江の河口部の南に居住した民族を指した。ここは福建地方を中心とした広域地名。「廣」は広州で現在の広州市を中心とした広東地方。

『「比目」、又、一魚なるやを知らず』底本の訓点は実は「不ㇾ知」以外にはない。しかし、それに従わずに、かく読んだ。そのまま読んではどうも気持ちが悪く、不自然だからである。]

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