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2020/08/06

大和本草卷之十三 魚之下 梭魚(かます) (カマス/イカナゴ誤認)

 

【外】

梭魚 閩書南產志ニノセタリ其形布ヲル梭ニ似タリ

大ナル者尺餘觜長ク身マルクアフラ多シ肉餻トシ水ニ

煮テ油ヲ去テ蒸炙テ食スヘシ其苗俗名イカナゴ尼

崎兵庫等ノ海ニテ網ニテ多クトル大ナル假屋ヲ海邊

ニ作リ釜ヲ多クナラベカマス子ヲ煎シテ油ヲトリテウ

ル燈油トス其煎シカスモウル賤者ノ食トス或田圃ノ

糞トス此魚本草ニ不載脂多シ食之發病病人服藥

人不可食其苗亦不佳于病人倭俗用魳字

○やぶちゃんの書き下し文

【外】

梭魚(かます) 「閩書〔(びんしよ)〕南產志」にのせたり。其の形、布をる[やぶちゃん注:ママ。]梭〔(ひ)〕に似たり。大なる者、尺餘。觜〔(くちばし)〕長く、身、まるく、あぶら、多し。肉餻〔(かまぼこ)〕とし、水に煮て、油を去りて、蒸し炙〔(あぶ)〕つて食すべし。其の苗〔(なへ)〕、俗名「いかなご」。尼崎〔(あまがさき)〕・兵庫等の海にて、網にて多くとる。大なる假屋〔(かりや)〕を海邊に作り、釜を多くならべ、「カマス子(ご)」を煎〔(せん)〕じて油をとりて、うる。燈油とす。其の煎じかすも、うる。賤者の食とす。田圃の糞〔(こやし)〕とす。此の魚、「本草」に載らず。脂、多し。之れを食へば、病ひを發す。病人、藥を服する人、食ふべからず。其の苗も亦、病人に佳〔(よ)〕からず。倭俗、「魳」の字を用ゆ。

[やぶちゃん注:スズキ目サバ亜目カマス科カマス属 Sphyraena に含まれる多種及び或いは類似した形態を持つも全く異なる別亜目別科の種群で概ね口が大きい魚に附される。カマス科Sphyraenidaeのカマス類(一属二十一種が認められている)は細長い円筒形の体型を持ち、全長は二十~三十センチメートルほどの種から、二メートルに達することもある大型種まで多様であるものの、口が大きく、下顎がやや突き出ており、鋭く強靭な歯(人間に対して攻撃性を持ち、大型個体では咬まれると危険である)を備えている。「カマス」は「叺」(国字)で、「蒲簀(かます)」の意。古くはガマ藁で作った。藁莚を二つ折りにし、縁を縫いとじた長方形の袋のこと。穀類・塩・石炭・肥料などの貯蔵・運搬に用いる。梱包する前の口部分が有意に大きい。一般に魚体がスマートだが、口が大きな魚にこの名が附される傾向があるように思われる。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の『「カマス」と呼ばれるもの一覧』を見られたいが、当時の本邦産に限った場合は、

アカカマス Sphyraena pinguis(異名「本カマス」。全長五〇センチメートルほど)

オオメカマス Sphyraena forsteri(全長七〇センチメートルほど)

ヤマトカマス Sphyraena japonica (異名「青カマス」「水カマス」(身に水分が多いためで、この異称は広汎に用いられる)。全長三五センチメートルほど)

オオカマス Sphyraena putnamae(全長一メートルほど)

オニカマス Sphyraena barracuda(全長が二メートル近くなり、カマス類では特に大きな口と鋭い歯を持ち、国外では負傷例も多い。嘗ては食用に供されたが、非常に強い神経毒シガトキシン(ciguatoxin:摂取したある種の有毒渦鞭毛藻類由来)を持つ個体がいるため、現在は食品衛生法で販売禁止とされている)

を挙げておけばよいか。

「閩書南產志」明の何喬遠撰になる福建省の地誌。その記載は『似蚝魚稍大、如織梭、豐肉脆骨』。

「梭」機織りに於いて緯(よこ)糸を巻いた管を入れて、経(たて)糸の中を潜らせる、小さい舟形の器具。シャトル(shuttle)。個人的には「叺」より「梭」だろうとは思う。

「肉餻〔(かまぼこ)〕」「餻」(音(カウ(コウ))で、本来は米粉・小麦粉などを練って蒸した食品を指すが、既にこの訓を益軒はこの漢字に当てているので、かくした。蒲鉾である。

「苗〔(なへ)〕」稚魚。

「いかなご」カマスの稚魚ではなく、れっきとした種であるスズキ目イカナゴ亜目イカナゴ科イカナゴ属イカナゴ Ammodytes personatus を指し(関東では稚魚を「コウナゴ」(小女子)と呼ぶ)、益軒の誤認である。この誤認は「カマスゴ」の異名があるためであるが、これは、古くからの産地である阪神地区・播磨地区に於いて、春先に漁獲した後、直ちに釜揚げにされ、さらにそれを乾燥させたもの(「カナギちりめん(小女子縮緬)」)を棕櫚や藁で編んだ叺に封入して各地に運んだことによる。

「魳」漢語では「老魚」・「ブリ」・「毒魚の名」とする。国字としてのみカマスを指す。]

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