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2020/08/17

大和本草卷之十三 魚之下 太刀魚(たちうを)

 

【和品】

太刀魚 形刀ニ似テ長クウスク背靑ク腹白シ長キ

者二三尺橫セハシ其觜鱵ノ如ク長ク乄上下齊ク觜

ノ内鋸ノ如シ味不レ好骨多クアフラアリ腥シ性不好

食フヘカラス本草綱目ニノセル鱭魚ニ相似テ不同

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

太刀魚(たち〔うを〕) 形、刀に似て、長く、うすく、背、靑く、腹、白し。長き者、二、三尺。橫、せばし。其の觜〔(くちばし)〕、鱵(さより)のごとく長くして、上下齊(ひとしく)、觜の内、鋸〔(のこぎり)〕のごとし。味、好からず。骨、多く、あぶらあり。腥〔(なまぐさ)〕し。性、好からず。食ふべからず。「本草綱目」にのせる「鱭魚」に相ひ似て、同じからず。

[やぶちゃん注:スズキ目サバ亜目タチウオ科タチウオ属タチウオ Trichiurus lepturusウィキの「タチウオ」より引く。『最大で全長』二・三四『メートル、体重』五『キログラム』に達する。『頭はとがっており、一見獰猛そうな鋭く発達した歯が目立つ。体は全体に左右に平たく、幅は指』四『本などと表現される。背びれは背中全体に伸びて』百三十『軟条以上あり、尾びれ、腹びれは持たず、尾部は単純に先細りになっている。体表には鱗がなく、その代わりに全身が銀色に輝くグアニン』(guanine:プリン塩基)『質の層で覆われている。生きている間はやや青味がかった金属光沢を持つが、死後』、『ほどなく』、『灰色がかった銀色となる。表面のグアニン層は人が指で触れただけで』、『すぐ落ちるほど落ちやすいが、生時は常に新しい層が生成されることで体を保護している。このグアニン層から採った銀粉は、かつてはセルロイドに練りこまれて筆箱や下敷きといった文房具、また模造真珠』(これにより「ハクウオ」(箔魚)の名で呼ぶ地方もある)『やマニキュアに入れるラメの原料として使われていた』。『世界中の熱帯から温帯にかけて分布する。沿岸域の表層から水深』四百『メートル程度の範囲の泥底近くで群れて生活しているが、時には河口などの汽水域まで入り込むこともある』。『産卵期は』六月から十月で、『稚魚や幼魚のうちは、甲殻類の浮遊幼生や小さな魚などを食べている。成魚はカミソリのような歯で小魚を食べるが、時にはイカや甲殻類を食べることもある。ただし』、『貝やエビなど硬い殻を持つものは一切口にしないことから、漁師たちは「タチウオは歯を大事にする」と言い習わしてきた。この鋭い歯は、人の皮膚も容易に切り裂くため、生きているタチウオを扱うときには手袋などをして身を守る事が推奨される。泳ぐ力は弱く、エサの魚に追い付かないため』、『エサが近付いてくるのを待っている』。『成魚と幼魚とは逆の行動パターンを持ち、成魚は夜間は深所にいて日中は上方に移動し、特に朝夕は水面近くまで群れて採餌をするが、幼魚は日中は泥底の上の』百『メートルほどの場所で群れていて、夜になると上方へ移動する』。『潮流が穏やかな場所では頭を海面に向けて立ち泳ぎすることがある。場所によってはこの立ち泳ぎが群れになる事がある。これは、潮流によってタチウオが一箇所に流されて来たという説と、敵から逃げる際に体に当たる光を目晦ましにするためという説がある。潮流が早い場所では立ち泳ぎが出来ないため、この光景は見られない』。『その外観が銀色で太刀に似ていることより、「太刀魚」(タチウオ)と名づけられた』『(「刀」の字を取って「魛」と表記することもある)。別名にタチノウオ、タチ、ハクナギ、ハクウオ、サワベル』(福島県での呼び名で洋刀の「サーベル」(オランダ語:sabel)由来)、『シラガ』(幼魚に使用されることが多い)、『カトラス』(外国語由来。以下参照)『などがある。英名』cutlassfish『の由来は、和名の由来と同じようにその外観が「カットラス(舶刀)」と呼ばれる湾曲した刃を持つ剣に似ていることから』で、『「サーベルフィッシュ」と呼ばれることもある』。

「鱵(さより)」条鰭綱ダツ目ダツ亜目トビウオ上科サヨリ科サヨリ属サヨリ Hyporhamphus sajori独立項として既出

「觜の内、鋸のごとし」「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のタチウオのページに写真があるが、そこには、本来のタチウオの『口床(口の下の部分、舌のようなところ)が黒っぽい』のに対して、宮崎県や南西諸島で獲れる個体に、この口床が『淡い色合い』を呈するものがおり、こちらは『背ビレ、目の色合いは黄緑がかっている。輸入ものもあるが、宮崎、鹿児島などから入荷してくる。量的には少ないが紛らわしい』個体群がおり、これは現在、タチウオ属テンジクタチ Trichiurus sp.2 として、不明の別種扱いとされているようである。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のテンジクタチのページによれば、『体長』は一メートルを『遙かに超える。尾鰭がない。口が大きく歯は犬歯状で鋭い。腹鰭はなく、尻鰭は棘状だが』、『埋没していて見えない。タチウオよりも体高がある。鮮度のよいとき』は、『背鰭は青みがかった黄色で、目も黄色い。口床は淡いいろで少し黄色みがかる』とあって、細部にかなりの違いがあることが判る。

『「本草綱目」にのせる「鱭魚」に相ひ似て、同じからず』「鱗之三」の以下。

   *

鱭魚【音「劑」。「食療」。】

釋名鮆魚。【音「劑」。】。鮤魚【音「列」。】。※刀【音「篾」。】。魛魚【音「刀」。】鰽魚【「廣韻」音「道」、亦作「鮂」。】。望魚。[やぶちゃん注:「※」=「魚」+「篾」。]

時珍曰、『魚形如劑物裂篾之刀、故有諸名。「魏武食制」謂之望魚。』。

集解時珍曰、『鱭生江湖中、常以三月始出。狀狹而長薄、如削木片、亦如長薄尖刀形。細鱗白色。吻上有二硬鬚、腮下有長鬛如麥芒。腹下有硬角刺、快利若刀。腹後近尾有短鬛、肉中多細刺。煎、炙或作鮓、鱐、食皆美、烹煮不如。』。「淮南子」云、『鮆魚飮而不食、鱣鮪食而不飮。』。又「異物志」云、『鰽魚初夏從海中泝流而上。長尺餘、腹下如刀、肉中細骨如毛。云是鰽鳥所化、故腹内尚有鳥腎二枚。其鳥白色、如鷖、羣飛。至夏、鳥藏魚出、變化無疑。然今鱭魚亦自生子、未必盡鳥化也。』。

氣味甘、溫、無毒。詵曰、『發疥不可多食。』。源曰、『助火、動痰、發疾。』。

主治貼痔瘻【時珍。】。

附方【「新一」。。瘻有數孔【用耕垈土燒赤、以苦酒浸之、合壁土令熱、以大鮆鮓展轉染土、貼之每日一次。「千金方」。】

   *

この益軒の謂いは正しい。まず、現在の「鱭」は中国では、条鰭綱ニシン上目ニシン目ニシン亜目カタクチイワシ科エツ亜科エツ属エツ Coilia nasus に代表されるエツ属の漢名であること、時珍は「江湖中に生ず」としており、エツは汽水魚であるから、「異物志」の記載も首肯出来るからである。但し、「異物志」は後半がけったいな化生説となっており、話にならない。なお、私は、「和漢三才圖會 卷第五十一 魚類 江海無鱗魚」の「鱭 たちいを」では、時珍の記載の「腮の下に長き鬛(たてがみ)有りて麥の芒(のぎ)のごとし。腹の下にも硬角の刺(とげ)有り、快利にして、刀のごとし。腹の後、尾に近くして短き鬛有り、肉中も細き刺多し」という部分に着目し、別にスズキ目トゲウナギ亜目トゲウナギ科Mastacembelidae のトゲウナギ類も有力な同定候補している(但し、彼等に対しては現在、スズキ目Perciformesではなく、日本にもいるタウナギMonopterus albus(但し、これは過去に大陸から移入されたものと考えられている)に代表されるタウナギ目Synbranchiformesとする説が浮上しており、その説が有力になりつつあるようである)。彼等はSpiny eel(トゲだらけのウナギ)の英名を持ち、最近はスパイニー・イールあるいはスピニ・イールと呼ばれる売れっ子の熱帯性淡水魚類である。「ウナギ」とあるが、体型が似るだけで全く関係がない。以下にウィキのスパイニーイル」の記述(トゲウナギ科 Mastacembelidae の記載である)の一部を引く。以上の「本草綱目」の時珍の記載とお比べ頂きたい。『体は細長く、各ひれはウナギのように融合せず分離している。また、背びれの前方に名前の由来となった短いトゲが一列に並んでいる。 頭部は尖った三角形のような形状で、口の先端には鼻孔がヒゲのように発達した器官があり、これを動かして餌を探す行動が見られる』十五センチメートル『程度の小型の種類から』一メートル『に達する大型種までおり、色彩や模様も多様。 分布はアジアとアフリカに渡っており、東南アジア(インドからインドシナ半島にかけて)にはMastacembelus属とMacrognathus属が』『分布する。いずれも観賞魚として流通しており、砂に潜る性質や人間によく馴れることからアクアリストに人気がある』。当時の大陸の中国人には海水魚のタチウオなんぞより、遙かに馴染みの淡水魚であることは間違いない。]

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