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2020/08/05

大和本草卷之十三 魚之下 鱵魚(さより)

 

鱵魚 形小クシテ圓ク長シ上ノクチハシ短ク下ノ喙長

シ性平ニシテ毒ナシ病人可食又スヽト云魚アリサヨリ

ニ似タリクチハシ上下共ニ其長サヒトシ又サヨリニホ

ネノアヲキコト緑青ノコトクナルアリ味モ性モ不好

不可食西州ニテヱイラクト云又ナガサレト云

○やぶちゃんの書き下し文

鱵魚(さより) 形、小さくして、圓〔(まろ)〕く、長し。上のくちばし、短く、下の喙〔(くちばし)〕、長し。性〔(しやう)〕、平にして、毒、なし。病人、食ふべし。又、「すゝ」と云ふ魚あり、「さより」に似たり。くちばし、上下共に其の長さ、ひとし。又、「さより」に、ほねの、あをきこと、緑青〔(ろくしやう)〕のごとくなる〔もの〕あり。味も性も好からず、食ふべからず。西州にて「ゑいらく」と云ひ、又、「ながされ」と云ふ。

[やぶちゃん注:条鰭綱ダツ目ダツ亜目トビウオ上科サヨリ科サヨリ属サヨリ Hyporhamphus sajoriウィキの「サヨリ」より引く。『沿岸の海面近くに生息する細長い魚で、食用魚でもある。季語、三春』。『全長は最大40センチメートルほどで、同じダツ目』Beloniformes『のサンマ』(ダツ上科サンマ科サンマ属サンマ Cololabis saira)『とよく似た細長い体型をしている。サヨリ科一般の特徴として下顎が長く突き出し、上顎は小さな三角形の弁状にしか過ぎないが、この一見アンバランスな形の口器の適応的意義はよくわかっていない。ただ、同じトビウオ上科』Exocoetoidea『のトビウオ類』(トビウオ科 Exocoetidae)『も、稚魚のときに同じような下顎の伸張が起こることが知られている。この下顎の先端は生きているときには赤い。背中は青緑色だが』、『腹側は銀色に輝き』(表層近くを遊泳する魚種に広く見られる空中からの鳥類、及び、遊泳層下層からの肉食性魚類に見え難くする保護色の一種。多くの種群で共通して見られるのは収斂進化の産物である)『筋肉は半透明である』。『腹膜は真っ黒で俗に「見かけによらず腹黒い人」の代名詞とされることもあるが、これは筋肉が半透明で光を透過しやすい魚によく見られる現象で、恐らく腹腔内に光が透過するのを防ぐ適応とみられる。同様に腹膜が黒いコイ科の淡水魚ハクレン』(条鰭綱コイ目コイ科クセノキプリス亜科 Oxygastrinaeハクレン属ハクレン Hypophthalmichthys molitrix)『では、成長に伴って食物が動物プランクトンから植物プランクトンに移行する時期に急速に腹膜が黒変することが知られているが、この移行時期に強い日光を浴びると、消化管に取り込まれた植物プランクトンが光合成を行って酸素の気泡が発生し、消化管が膨れ上がって水面に腹を上にして浮かぶなどの障害が発生することが報告されている。サヨリも後述のように成長に従って海藻も食べるようになるため、あるいは摂食した海藻の光合成を抑制する意味があるのかもしれない』。『沿岸性で、樺太の西側から台湾にかけての北西太平洋、日本海、黄海、渤海湾の陸地近海に分布する。海面すれすれを群れをなして泳ぎ、動物プランクトンを捕食したり、浮遊する海藻の断片を摂食する。危険を感じるとよく空中にジャンプする。サヨリ科』Hemiramphidae『には淡水域にまで侵入する種が多く知られるが、サヨリは汽水域までは進入するものの』、『純淡水域にまでは進入しない』。『4月中旬から8月中旬が産卵期であり、群れで藻場に入り込み、メダカの卵に似た直径2.2ミリメートル程度の大粒の卵を、粘着糸で海藻や海草に絡み付ける。孵化直後の仔魚は全長7ミリメートル程度で、これが2.5センチメートル程度まで成長すると下顎の伸張が始まる。下顎はいったん成魚よりも全長比で長く伸張するが、次第に体の他の部分の成長が著しくなり、全長27センチメートル程度になると、ほぼ成魚と同じプロポーションになる。寿命は2年余りと考えられている』。『春から秋にかけて漁獲されるが、旬は3月から5月にかけてとされる』とある。

『「すゝ」と云ふ魚あり、「さより」に似たり。くちばし、上下共に其の長さ、ひとし』すす」は現在の和歌山・兵庫・大阪府堺でサヨリの異名である(由来は不詳だが、個人的には体腔内の黒さから「煤」なのではなかろうかと考えた。釣ったことがあるが、捌いた母に見せて貰ったその黒さには吃驚した記憶があるからである)。しかし、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のサンマのページ一箇所「スス」をサンマの異名としても出る。当該サイトで単に『参考文献より』と出る場合は、三省堂刊の日本魚類学会編「日本産魚名大辞典」が引用元である。されば、敢えて「くちばし、上下共に其の長さ、ひとし」とあるのに拘るなら、サンマの稚魚・幼魚を指すか(但しサヨリにはあまり似ていない)。画像を幾つか見た中では、棘鰭上目トゲウオ目ヨウジウオ亜目サギフエ科サギフエ属サギフエ Macroramphosus scolopax の稚魚は、それよりはサヨリに似ている。体は側扁し、尖った口吻は上下ではなく管状であるが、一見、そう思えなくもない。しかもサギフエは成魚のように赤くなく、銀色をしている点でもサヨリに近いのである。

「ほねの、あをきこと、緑青〔(ろくしやう)〕のごとくなる〔もの〕あり。味も性も好からず、食ふべからず」これは普通に新鮮なサヨリの骨は青緑色をしているし、ダツ亜目ダツ上科ダツ科ダツ属ダツ Strongylura anastomella や、その仲間のダツ類も骨は青色や緑色をしている。刺身しか知らない御仁は一見、気持ち悪く思うかも知れぬが、肉は孰れも半透明で美味い。益軒の知ったかぶりがバレた感じがする。

「ゑいらく」この異名は現在は見出せない。しかし、何となく私にはしっくりくる気がした。釣った直後の生きているサヨリの下顎の先端は鮮やかに赤い(弱って死ぬと同時にこれは消え去る)。陽光に背中が青緑色に、腹が銀色に輝き、その肉は半透明で、骨は黄緑色である。まさにそれは玉珠をつらぬいた頸飾り「瓔珞」(えいらく/やうらく(ようらく):後者の読みが一般的。珠玉や貴金属に糸を通して作った装身具で、元は古代インドで上流階級の者が使用したものの漢訳語。後に仏教で仏像の身を飾ったり、寺院の内陣の装飾として用いた)のようなのである(私は自身で初めて釣り上げたサヨリに見惚れた中学時代の自分を忘れない)。

「ながされ」北九州でかく呼ぶことが、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のサンマのページにある。なお、ダツ亜目ダツ上科ダツ科ダツ属ダツ Strongylura anastomella や、その仲間のダツ類も同じく「ナガサレ」の異名を持つ。サヨリもダツも流線形の魚体をしており、産卵と稚魚の成育場所は流れ藻の下であるから、この異名は腑に落ちる。]

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