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2020/08/11

大和本草卷之十三 魚之下 きすご (シロギス・アオギス・クラカケトラギス・トラギス)

 

【和品】

キスコ 大サ七八寸ニ至ル猶大小アリ其肉潔白性カロ

ク好シ佳品ナリ病人食シテ無妨ナマビ亦佳シ又肉

餻トスヘシ首ノ内ニ小石アリ石首魚ノ如シ此魚冬春

ハ少ク夏秋多シ本草不載凡中華ノ書ニテ未見之

故ニ漢名未知國俗鱠殘魚ヲキスゴト稱ス甚誤レリ

本草鱠殘魚ノ集解ヨク見ルヘシ無鱗魚ナリキスコニハ

鱗多シ鱠殘魚ハ俗ニシロウヲト云モノ也○虎キスコ關

東ニアリキスコニ似テ虎ノ文アリ味モ亦キスコニ似タリ

長五六寸七八寸アリ○穴キスコ常ノキスコヨリ長ク

尾ノ方小ナリ身ニ處〻赤處アリヒレ赤シ味不美

性ヲトル

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

きすご 大いさ、七、八寸に至る。猶ほ、大、小あり。其の肉、潔白〔にして〕、性、かろく、好し。佳品なり。病人、食して、妨げ無く、「なまび」〔も〕亦、佳し。又、肉餻〔(かまぼこ)〕とすべし。首の内に小石あり。石首魚〔(ぐち)〕のごとし。此の魚、冬・春は少なく、夏・秋、多し。「本草」に載せず。凡そ中華の書にて未だ之れを見ず。故に漢名未だ知らず。國俗、「鱠殘魚〔(くわいざんぎよ)〕」を「きすご」と稱す。甚だ誤れり。「本草」〔の〕「鱠殘魚」の「集解」〔を〕よく見るべし。無鱗魚なり。「きすご」には、鱗、多し、「鱠殘魚」は、俗に「しろうを」と云ふものなり。

○「虎きすご」。關東にあり。「きすご」に似て、虎の文〔(もん)〕あり、味も亦、「きすご」に似たり。長さ五、六寸、七、八寸あり。

○「穴きすご」。常の「きすご」より長く、尾の方、小なり。身に處々、赤〔き〕處あり。ひれ、赤し。味、美〔(よ)から〕ず。性、をとる[やぶちゃん注:ママ。]。

[やぶちゃん注:スズキ目キス科キス属シロギス Sillago japonica 或いは アオギス Sillago parvisquamis も挙げてよいかも知れぬ。「きす」は「生直」であり、これはスマートな飾り気のないすっきりした魚体で、味も淡白な美味であることからの命名とする説を以前に読んだが、確かにそれは腑に落ちる(「ご」は魚の名であることを示す一般的語尾としてよく用いられる)。また、淡路での方言として特に大きい個体を「ウデタタキ」と呼び、釣り上げると、尾で腕を叩く程の大型の力の強いものを言うともあった。これを読んで思い出した地方名がある。私が若い頃に住んだ富山県高岡では、15㎝を越える大きなシロギスを「テッポウギス」(鉄砲鱚)と呼んでいた。釣り上げて、右手で頭部を摑むと、魚体がその下半身で腕首をパンパンと叩く(撃つ)程に跳ねるからであると聞いた。事実35年以上も前のこと、七尾市の百海(どうみ)の磯で、生涯一度きりの大釣果、父と二人でキス75匹入れ食いの折り、一際(ひときわ)大きな20㎝大のシロギスを釣り上げた時、その右腕を打たれた映像と軽い痛みを、眩しい陽射しとともに私は忘れられない。

「石首魚〔(ぐち)〕」既に出た、スズキ目スズキ亜目ニベ科シログチ属シログチ Pennahia argentata 及び ニベ科ニベ属ニベ Nibea mitsukurii

「首の内に小石あり」既に出た耳石(じせき)。そこで示した「福井県水産試験場」公式サイト内の「耳石」のこちらでシロギスのそれが見られる。キスの耳石は米粒型で、大きい個体では1㎝程になる。 

「鱠殘魚」既に出た、「大和本草卷之十三 魚之上 鱠殘魚(しろうを) (シラウオ)」で、御覧の通り、私は条鰭綱新鰭亜綱原棘鰭上目キュウリウオ目シラウオ科シラウオ属シラウオ Salangichthys microdon(本邦には他に三種の固有種が棲息する)に同定した。現代中国語でも本種に比定している。

『「本草」の「鱠殘魚」の「集解」をよく見るべし。無鱗魚なり』「本草綱目」の「鱠殘魚」の「集解」には、

   *

時珍曰、『鱠殘出蘇、淞・浙江。大者長四五寸、身圓如筯、潔白如銀、無鱗、若巳鱠之魚、但目有兩黑㸃爾。彼人尤重小者、曝乾以貨四方。淸明前有子、食之甚美。淸明後子出而瘦、但可作鮓腊耳。

   *

『俗に「しろうを」と云ふものなり』現行では、シラウオとは全くの別種であるスズキ目ハゼ亜目ハゼ科ゴビオネルス亜科 Gobionellinae シロウオ Leucopsarion petersii の標準和名となっているので、注意が必要(シロウオは正しくは漢字表記で「素魚」と表記し、シラウオの「白魚」とは区別されるが、素人は文字通り、素も白もいっしょくたにしてしまう)。

「虎きすご」名前からは、スズキ目ワニギス亜目トラギス科トラギス属トラギス Parapercis pulchellaであるが(魚体は「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページを見られたい)、どうも次の「穴きすご」との絡みで不審がある。トラギスは褐色紋が入るのにそれを言っていないからで、寧ろ、虎の紋だけなら、トラギス科トラギス属クラカケトラギス Parapercis sexfasciata の方がそれらしく堂々としているのである(「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のクラカケトラギスのページと前者を比較されたい)。私は後者でこれを同定し、その代わりに、以下の「穴きすご」をトラギスに比定したく思う。赤い色と言うと、トラギス属アカトラギス Parapercis aurantica がいるが、御覧の通り(「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」)色以外、益軒の叙述がマッチしないから、違う。]

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