フォト

カテゴリー

The Picture of Dorian Gray

  • Sans Souci
    畢竟惨めなる自身の肖像

Alice's Adventures in Wonderland

  • ふぅむ♡
    僕の三女アリスのアルバム

忘れ得ぬ人々:写真版

  • 縄文の母子像 後影
    ブログ・カテゴリの「忘れ得ぬ人々」の写真版

Exlibris Puer Eternus

  • 20250201_082049
    僕が立ち止まって振り向いた君のArt

SCULPTING IN TIME

  • 熊野波速玉大社牛王符
    写真帖とコレクションから

Pierre Bonnard Histoires Naturelles

  • 樹々の一家   Une famille d'arbres
    Jules Renard “Histoires Naturelles”の Pierre Bonnard に拠る全挿絵 岸田国士訳本文は以下 http://yab.o.oo7.jp/haku.html

僕の視線の中のCaspar David Friedrich

  • 海辺の月の出(部分)
    1996年ドイツにて撮影

シリエトク日記写真版

  • 地の涯の岬
    2010年8月1日~5日の知床旅情(2010年8月8日~16日のブログ「シリエトク日記」他全18篇を参照されたい)

氷國絶佳瀧篇

  • Gullfoss
    2008年8月9日~18日のアイスランド瀧紀行(2008年8月19日~21日のブログ「氷國絶佳」全11篇を参照されたい)

Air de Tasmania

  • タスマニアの幸せなコバヤシチヨジ
    2007年12月23~30日 タスマニアにて (2008年1月1日及び2日のブログ「タスマニア紀行」全8篇を参照されたい)

僕の見た三丁目の夕日

  • blog-2007-7-29
    遠き日の僕の絵日記から

サイト増設コンテンツ及びブログ掲載の特異点テクスト等一覧(2008年1月以降)

無料ブログはココログ

« 大和本草卷之十三 魚之下 鮑魚(ほしうを) (魚の干物)  | トップページ | 大和本草卷之十三 魚之下 糟魚麹魚 (粕漬け・麹漬け) »

2020/09/13

大和本草卷之十三 魚之下 肉糕(かまぼこ)

 

【和品】

肉糕 鯛鱸ハモキスコイカナマヅエソカマス皆カマホ

コトスヘシ或二三種マシユルモヨシスリタタキテ蒸炙ユヘニ

性和ナリ病人食フヘシ最益人補虚新鮮ナル魚肉ヲコソ

ケ取テ筋骨ヲ去石臼ニテ初ヨリ塩ヲ加ヘ能スリタタキ

テ後米泔ト酒トヲ加フ鹽ヲ早ク加レハスリカタケレ𪜈早ク加

ヘテヨクスルヘシ泔と酒トニ和スレハ柔ナリ板ニツケテウ

ラヨリヤクヲモテヨリ直ニヤケハ皮コハシ不燒シテセイロウ

ニテムシテ後少ヤク尤好ヤハラカナリ夏ハ塩少過セハ堪

久又スリタル肉ヲ短板ニツケ鍋ニ熱湯ヲ沸シテ入ヨク

煮テ取アケ炭火ニテ少しコケ色ニナルホト炙ル炙タルヨリ

蒸タルモ煮タルモヤハラカニテ老人虚人ニ益アリ肉糕ハ中

華ノ書ニ不見本邦ニモ古ハ無之近世始製ス又ウケ

ト云ハ肉糕ヲヤカスシテ團ニ乄羹ニ入レテ煮食スルヲ云魚

肉ヲスリタタキ酒ト塩泔ヲ加フ油多キ魚ハ水ニテ煮テ

取アケ羹ニ加フヘシ

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

肉糕(かまぼこ) 鯛・鱸・はも・きすご・蚫〔(あはび)〕・いか・なまづ・えそ・かます、皆、「かまぼこ」とすべし。或いは、二、三種、まじゆるも、よし。すりたたきて、蒸〔し〕炙〔る〕ゆへ[やぶちゃん注:ママ。]に、性〔(しやう)〕、和なり。病人、食ふべし。最、も人を益し、虚を補す。新鮮なる魚肉をこそげ取りて、筋骨を去り、石臼にて、初めより塩を加へ、能く、すりたたきて後、米泔〔(ゆする)〕と酒とを加ふ。鹽を早く加へれば、するがたけれども、早く加へて、よくするべし。泔〔(ゆする)〕と酒とに和ずれば、柔〔か〕なり。板につけて、うらより、やく。をもてより直〔(じき)〕にやけば、皮、こはし。燒かずして、「せいろう」にて、むして、後、少し、やく〔は〕尤も好し。やはらかなり。夏は、塩、少し過ぐせば、久しく堪〔(た)〕ふ。又、すりたる肉を短〔き〕板につけ、鍋に熱湯を沸〔(わか)〕して入〔れ〕、よく煮て取あげ、炭火にて、少し、こげ色になるほど、炙〔(あぶ)〕る。炙りたるより、蒸したるも、煮たるも、やはらかにて、老人・虚人に益あり。肉糕〔(かまぼこ)〕は中華の書に見えず。本邦にも古くは、之れ、無く、近世、始めて製す。又、「うけ」と云ふは、肉糕をやかずして、團〔子(だんご)〕にして羹〔(あつもの)〕に入れて、煮〔て〕食するを云ふ。魚肉を、すりたたき、酒と塩・泔〔(ゆする)〕を加ふ。油多き魚は水にて煮て、取りあげ、羹〔(あつもの)〕に加ふべし。

[やぶちゃん注:「肉糕」は「肉餻」とも書くが、今は「蒲鉾」が一般的である。これも古い歴史のある加工食材で、岡田稔氏の論文「かまぼこのピンからキリまで」(『調理科学』第十六巻第三号一九八三年発行・ここからPDFでダウン出来る)によれば、平安時代の「類聚雑要抄」(るいじゅうぞうようしょう:寝殿造の室礼と調度を記した古文献。摂関家家司であった藤原親隆が久安二(一一四六)年頃に作成したと推定されている)には、関白藤原忠実が永久三(一一一五)年に転居祝いに宴会を開いた際に、串を刺した蒲鉾の図が載っているとある。現在のような板に載った形になるのは室町中期(一五〇〇年頃)であるらしい。なお、歴史については、恐らく「手づくり アイスの店 マルコポーロ 料理の歴史雑学 かまぼこ・天ぷら歴史」のページが異様に詳しい。忠実の宴会に出た竹輪型の蒲鉾の再現画像も見られる。

「なまづ」新鰭亜綱骨鰾上目ナマズ目ナマズ科ナマズ属ナマズ Silurus asotus である。以外かも知れぬが、所持する小学館「食材図典Ⅱ 加工食材編」の「練り物①」によれば、室町後期の享禄元(一五二八)年に伊勢宗五(吾)なる武士が記した武家故実書「宗五大双紙」に『「かもぼこはなまづ本也」として、本来のかまぼこ原料はナマズであったと記し、続いてハモ、イカ、タイ、スズキ、キス、アワビ、カマスなどを載せている』とし、元禄六(一六九三)年に書かれた人見必大の「本朝食鑑」には『アマダイ、ヒラメ、ハゼ、ボラ、サケ、エビ、フカなどが載る。いずれも地元沿岸の鮮魚が原料であった』とあることから(同書は本書刊行(宝永七(一七〇九)年)に先立つこと十二年前で、しかも蒲鉾が市井にある程度の販路が拡大されない限りは、こうした記載をしなかったであろうと私は思う)、江戸中期には蒲鉾は広く販売されていたものと考えてよいであろう。

「米泔〔(ゆする)〕」二字でかく読んでおいた。米の研ぎ汁のこと。かつては洗髪に用いられ、この語も元は専ら「頭髪を洗い、梳(くしけず)ること」或いは「それに用いる暖めた米の研ぎ汁」などを指した。

「せいろう」「蒸籠」。せいろ。

「少し、やく」「少し、燒く」。

「少し過ぐせば」少しばかり大目に入れれば。

「久しく堪〔(た)〕ふ」長く保存に耐える。

「虚人」漢方で明白に「虚証」を示している人或いは病人。慢性的に虚弱で体力がない体質の人や、疾患によって機能が低下したり、生理的物質が有意に不足した、ある種、病的状態にある人を指す。

「肉糕〔(かまぼこ)〕は中華の書に見えず」似たような加工食材を知らない。恐らくは本邦でオリジナルに発展してきた加工食品である。ウィキの「蒲鉾」にも中文のそれはない。

「うけ」小学館「日本国語大辞典」にも載らないが、漁師の網につける丸い木製の「うき」を意味する「浮子(うけ)」、或いは河川底に定置して魚を漁る筒状の仕掛けである「筌(うけ)」(但し、この語自体が「うき」由来の可能性もある)か。前者か。

「羹〔(あつもの)〕」「熱物(あつもの)」で、魚鳥の肉や野菜を入れた熱い吸い物。本来のこの漢字は「丸煮にした子羊」と「美味い」の意である。]

« 大和本草卷之十三 魚之下 鮑魚(ほしうを) (魚の干物)  | トップページ | 大和本草卷之十三 魚之下 糟魚麹魚 (粕漬け・麹漬け) »