大和本草卷之十三 魚之下 はたはた
【和品】[やぶちゃん注:底本は前に合わせて「同」。]
ハタハタ 奧州ニ多シ白シテ長七八寸頭廣ク尾小ナリ
色銀箔ノ如シ味淡クシテ美ナリ爲鮓爲塩淹十月ニ
多ク捕ル
○やぶちゃんの書き下し文
【和品】
はたはた 奧州に多し。白〔く〕して長さ、七、八寸。頭、廣く、尾、小なり。色、銀箔のごとし。味、淡くして美なり。鮓〔(すし)〕と爲(な)し、塩淹〔(しほづけ)〕と爲す。十月に多く捕る。
[やぶちゃん注:スズキ目ハタハタ科ハタハタ属ハタハタ Arctoscopus japonicus。昔、二十年ほど前、藤沢にあった秋田料理店で食った緑色のブリコ(ハタハタの卵。摂餌する餌によって色が激しく異なる。太平洋側の藩主が日本海側に移封された時、ハタハタを食べたところ、ブリのように美味いので魚を「ブリコ」と呼んだという話を小学校二年生の時に読んだ教育漫画の読んだのを懐かしく思い出す)の詰まった二十センチメートル余の一匹を炉端で焼いて食ったのが最高に旨かった。恐らく、もうあれに匹敵するものを食べることは望めないであろう。
「十月に多く捕る」これは陰暦。「ハタハタ」は「はたたがみ」(雷神)と同語源である。「はたた」「はたはた」は雷の古いオノマトペイアで、秋田県では寒雷の鳴る十一月頃に獲れる(深海魚であるが、この頃、生殖のために浅瀬に押し寄せる)ことから「カミナリウオ」の異名を持ち、漢字でも「鱩」と書く。]
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