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2020/10/21

畔田翠山「水族志」 コブダヒ (コブダイ)

 

(一〇)

コブダヒ 一名エビスダヒ【紀州田邊】ノブシ【大和本草】

大和本草曰「ノムシ」「タヒ」ノ類ナリ頭鵞ノ如シ大ナルアリ色紫紅ウロコハ鯉ノ如シ味淡シ按形狀「アヲ」ニ同乄齒出ルヿ「アヲ」ノ如ク鱗大ニ乄赤色也

 

○やぶちゃんの書き下し文

(一〇)

コブダヒ 一名「エビスダヒ」【紀州田邊。】・「ノブシ」【「大和本草」。】

「大和本草」に曰はく、『「ノムシ」、「タヒ」の類なり。頭、鵞〔がてう〕のごとし。大なるあり。色、紫紅。うろこは鯉のごとし。味、淡し』と。

按ずるに、形狀、「アヲ」に同じくして、齒、出ずること、「アヲ」のごとく、鱗、大にして、赤色なり。

 

[やぶちゃん注:本文はここ。これは、標題通り、

スズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ亜科コブダイ属コブダイ Semicossyphus reticulatusValenciennes, 1839

でよい。宇井縫藏著「紀州魚譜」(昭和七(一九三二)年淀屋書店出版部・近代文芸社刊)こちらから次ページにかけて、「コブダイ 瘤鯛 Semicossyphus reticulatus (Cuvier. & Valenciennes.)」(学名が斜体でないのはママ。命名者はシノニム)として(下線は底本では傍点「ヽ」、下線太字は傍点「●」)、

   *

方言モムシ又はモブシ(紀州各地)・・・・・・・・藻伏の義、コブ(白崎)、コベダイ(廣)、カンノンダイ(太地)、水族志にはエビスダヒ(田邊)とある。

體形カンダイ[やぶちゃん注:宇井の言うそれは既に複数回出たスズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ亜科イラ属イラ Choerodon azurio の地方名であるので、注意。]に似て、遙に大形である。成魚は前頭著しく隆起して瘤狀を呈する。眼は小さく、口に鋭齒を有する。鱗は稍小さい。全體暗褐色で腹部は稍淡く、鰭は暗色を帶びる、體長二三尺、目方數貫[やぶちゃん注:一貫は三・七五キログラム。]に達する。近海の岩礁間に棲み、海藻を食する。肉は不味く主に蒲鉾材料とする。東京市場でカンダイというのは本種の事であるといふ。

   *

とある。ウィキの「コブダイによれば、『コブ鯛と名前がつくが鯛の一種ではなく、ベラの一種で』、『日本南部の太平洋、日本海、東シナ海、南シナ海に分布』する。『雄は体長』八十センチメートル、『大きいもので』一メートルを『越え』、大型個体は十キログラムを超えるものもいる。『体色は茶色や黒、白色などが入った赤色』。『雌性先熟で、大きく育つまではメスで、卵を産む』。五十センチメートルを『超えるとコブが張り出してきて、オスに性転換する』。『見た目があまりに違うため、かつて雌は別種の魚だとさえ思われていた』。『雄は頭部に名前の由来である大きな瘤がある。特に大型のものは、顎にも同様な瘤ができる。瘤の中には脂肪が蓄えられている。口には巻き貝を砕くために大きな歯と強力な顎を持つ』。『幼魚は体色がオレンジ色で上下の鰭が黒く、白い線が体の横に入り、成魚とは大きく異なる』(成魚とこもごも出るが、グーグル画像検索「コブダイ 幼魚」をリンクさせておく。別種と間違えられたのが激しく腑に落ちる)。『本種はハーレムを創る魚として有名であり、雄は自分のテリトリーを主張し、そこに入ってきた他の雄を容赦なく攻撃して、縄張りを確保しながら、複数の雌を呼び寄せる性質を持つ。また、幼魚には手を出さず、幼魚はそうして成魚に守られながら成長し、学習していくともいわれる』。『非常に強力な顎と硬い歯でサザエやカキ、カニなどをかみ砕き、喉の奥の咽頭歯で更に砕いて中の肉を殻ごと食べてしまう。繁殖は雄と雌が海上付近で体をくねらせながら産卵、受精する』。『本種は暖海性だが、死滅回遊魚でもあり、黒潮に乗って、北海道付近にまで北上することもある』。『寿命は』二十年『前後とされている』。『磯釣りの際』、『その強力な顎で餌に食いつき、引きが強いので釣りごたえがある。流通量が少ないため』、『一般に食用としての知名度は高くないが』、『大型の物は味が良い。日本海側の市場の方が人気がある』。『旬は冬であり、市場では「寒鯛」(カンダイ)とも呼ばれる。刺身や焼き物、吸い物、酒蒸し、フライなどで食される』とある。「寒鯛」はイラの別名としても、とみに知られるので、要注意

『「大和本草」に曰はく、……』以下は、「大和本草卷之十三 魚之下 棘鬣魚(タヒ) (マダイを始めとする「~ダイ」と呼ぶ多様な種群)」の一節。私はそこでは、スズキ亜目フエダイ科フエダイ属フエダイ Lutjanus stellatus に同定したが、修正する。

「鵞〔がてう〕」鵞鳥(ガチョウ)で、カモ目カモ亜目カモ科ガン亜科 Anserinae の野生の雁(ガン)類を家畜化したもの。現在、飼養されているガチョウ類は、ハイイロガン(マガン属ハイイロガン Anser anser)を原種とするヨーロッパ系種の「ガチョウ」と、サカツラガン(サカツラガン Anser cygnoides)を原種とする中国系の「シナガチョウ」のグループの二つに大別されるが、「シナガチョウ」系は上の嘴の付け根に瘤状の隆起があることでヨーロッパ系の「ガチョウ」類と区別出来るので、ここは後者を指すと考えてよい。詳しくは私の「和漢三才圖會第四十一 水禽類 鵞(たうがん(とうがん))〔ガチョウ〕」を参照されたい。

「ノムシ」「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑のコブダイのページに、福岡県福岡市長浜鮮魚市場での採取名として「ノムス」がある。これは宇井の指摘する「藻伏」(もぶし)の音が訛ったものと理解出来る。なお、同ページの「歴史・ことわざ・雑学など」で、『古くは大型魚と小型魚は別種と考えられていた? 紀州魚譜に「カンダイ、体長」一、二『尺」、「コブダイ、体長』二、三『尺」とある。いずれもありえない大きさ』とあるが、実際に別種として誤認されていたことに加えて、「紀州魚譜」が、「イラ」を和名標準名のように「カンダイ」と表記してしまっていること(ここ)、それに続けて「コブダイ」を載せているところにも、そうした大きな誤認或いは混同が、恐らくは全国的に長くあったことが推定されると言える。]

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