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2020/10/17

畔田翠山「水族志」 イソアマダヒ (イラ)

 

(八)

イソアマダヒ 一名テス【勢州松坂】シホヤキ【仝上】モブシ【熊野和深】

形狀方頭魚ニ似テ滑ニ乄背黑褐色腹淡紅褐色細鱗上唇二牙口外ニ出尾ニ岐ナク紅褐色背鬣腰下鬣同色翅亦同腹下翅本紅褐色ニ乄端黑色味劣レリ

 

○やぶちゃんの書き下し文

(八)

イソアマダヒ 一名「テス」【勢州松坂。】・「シホヤキ」【同上。】・「モブシ」【熊野和深〔わぶか〕。】

形狀、方頭魚〔アマダヒ〕に似て、滑かにして、背、黑褐色。腹、淡紅褐色。細鱗。上唇、二牙、口外に出づ。尾に岐なく、紅褐色。背鬣〔せびれ〕・腰下の鬣、同色。翅〔むなびれ〕も亦、同じ。腹の下翅〔したびれ〕の本〔もと〕、紅褐色にして、端〔はし〕、黑色。味、劣れり。

 

[やぶちゃん注:本文はここ宇井縫藏著「紀州魚譜」(昭和七(一九三二)年淀屋書店出版部・近代文芸社刊)のこちらの「カンダイ」(これは紀州の地方名)の学名によって、

スズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ亜科イラ属イラ Choerodon azurio

と判明した。同書では、方言として、イラ(田辺・串本)を最初の挙げ、以下、イダ(堅田:現在の和歌山県西牟婁郡白浜町堅田。グーグル・マップ・データ。以下同じ)、イザ(周参見(すさみ:西牟婁郡すさみ町)・和深東牟婁郡串本町和深)、オキノアマダイ(田辺)、イソアマダイ(和歌山)、アマ(太地)、アマダイ(塩屋(和歌山市塩屋)・切目(きりめ:日高郡印南町西ノ地切目漁港周辺)、テス(和歌浦・白崎(日高郡由良町大引のこの一帯)・塩屋・二木島(三重県熊野市二木島町))を並べ、

   *

體は略楕圓形で側扁し、前頭は大に隆起する。背部は淡紅色に黃を帶び、下方は淡い。幅廣き暗褐色の一帶は胸鰭の腋部より背鰭の第七及び第八棘に至るまで斜に走り、この色帶の後方は大なる白斑をなし、白斑の下方より尾にかけて淡紅色に黃を帶びる。背鰭と臀鰭は淡黃色である。體長一二尺。近海の岩礁間に棲息し、六月頃產卵する。多く釣獲せられ、或は刺網を以て漁獲せらる。煮付・刺身とし、又蒲鉾材料とする。從來下等魚とされてゐるが、冬季稍美味である。

   *

とある。この「カンダイ」という異名は美味しくなる時期で「寒鯛」なのであろう。ウィキの「イラ」によれば、南日本(本州中部地方以南)・台湾・朝鮮半島・東及び西シナ海を棲息域とする。幼魚・成魚では模様が大きく異なるのでリンク先の写真を見られたい。全長は約四十~四十五センチメートル、『体は楕円形でやや長く、側扁』する。なお、このイラ属 Choerodon はベラ科 Labridae の『魚類の中では体高が高い』という特徴を持つ。『額から上顎までの傾斜が急で、アマダイを寸詰まりにしたようである』(これで畔田の似ているという表現が正しいことが判る。但し、私はアマダイに似ているとは思わないのだが)。『老成魚の雄は前額部が隆起・肥大し』、『吻部の外郭は垂直に近くなる』。『アマダイより鱗が大きい』。『両顎歯は門歯状には癒合せず』に『癒合し』て、『鋸歯縁のある隆起線をつくる』。『しかし』、『ブダイ科』(ベラ亜目ブダイ科 Scaridae)『魚類のように歯板を形成することはな』く、『前部に最低』一『対の大きな犬歯状の』後犬歯と呼ぶ歯があって、この歯は非常に大きく、上下の顎から隙間から見えるほどである(ネット上の画像を縦覧するに上・下額一方の場合や両方に生えている個体もある。英名の一つである「Tsukfish」(タスクフィッシュ)は「牙の魚」の意)。『側線は一続きで、緩やかにカーブする』。『前鰓蓋骨の後縁は細かい鋸歯状となる』。『尾鰭後縁はやや丸い』。『体色は紅褐色』『から暗紅色で腹側は色が薄く』、『尾鰭は濃い』、『口唇は青色』『で、鰭の端は青い。背鰭と腹鰭、臀鰭は黄色。背鰭棘部の中央から胸鰭基部にかけ、不明瞭で幅広い黒褐色の斜走帯が走る』(この斜帯が本種の特徴で、英名の一つの「Scarbreast」(スカールブレスト)は「傷跡のある胸」の意でこの帯状紋に由来する)。『その帯の後ろ』に『沿うように』、『白色斜走帯』(淡色域)があるが、『幼魚にはこの斜走帯はない』。『雌雄の体色や斑紋の差』も『大きい』。『沿岸のやや深い岩礁』性の強い海域や、『その周りの砂礫底に見られ』、『単独でいることが多い』。『日本近海での産卵期は夏』。『夜は岩陰や岩穴などに隠れて眠る』。♀から♂への『性転換を行う』ことが知られている。『付着生物』『や底生動物などを食べる肉食性』で、『これはイラ属の魚類に共通する』。『食用だが、肉は柔らかく』、『うまく捌けば上品な白身だが、評価は普通』、『または』不味いとに『分かれる。また』、『水っぽいという意見もある』。『他種と混獲される程度で漁獲量も少なく、あまり利用されない』。『刺身、煮つけ』『などにされる』とある。畔田の記載が孰れもしっくりくることが判る。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のイラのページによれば、「イラ」は「苛」で「苛魚」「伊良」と漢字表記し、もとは『和歌山県田辺、串本での呼び名』とし、『つかまえようとすると』、『逆にかみつきにくる。そのために「苛々する魚(いらいらするさかな)」の意味』とあり、他のネット記載を見ても、可愛い顔の割に、かなり攻撃的で、フィッシング系のイラのページでは釣り人への注意喚起が必ずのようにされている。『旬は晩秋から初夏』で、『鱗は柔らかく大きい。皮はしっかりしているが、柔らかい』。『白身でまったくクセがない。柔らかくつぶれやすい身だが、熱を通すと締まる。ほどよく繊維質で口に入れると適度にほぐれる』。『いいだしが出る』とある。ぼうずコンニャク氏のページの最大の魅力は、それぞれ殆ど全ての海産種について、調理されたものの写真と味が載ることである。なお、「地方名・市場名」の一つに「ブダイ」が挙っており、『最近、市場でもスーパーでもブダイと書かれて入荷するのをみている。また』、『沼津魚の達人で仲買をしている菊地利雄さんによると』、『近年』、『沼津でもブダイと呼ぶことがあるという。これなどは形態からブダイと混同しているのかもしれない』とあった。ベラ亜目ブダイ科ブダイ属ブダイ Calotomus japonicus ということは、時にはブダイと言われて、イラを食わされるケースもあるということだ。ご用心。

「テス」これは多く額部の張り出した「シロアマダイ」・「コブダイ」・「テンス」(これには「天須」の漢字名が当たっている)などの魚の異名に認められる(「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」に拠る)から、思いつきに過ぎぬが、「出頭」(でず)が訛って「てす」となったものか?

「シホヤキ」語源不詳。「鹽燒」で「塩焼きにして美味い」か? 或いは、「潮燒」で「潮」に焼けて赤くなっている魚か?

「モブシ」「藻伏」と思われる。これも「オオモンハタ」・「ホウセキハタ」・「ムラソイ」・「コブダイ」・「ヨロイメバル」・「タケノコメバル」・「クロソイ」と多様な魚の異名としてある(「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」に拠る)。]

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