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2020/10/11

北原白秋 邪宗門 正規表現版 窓

 

   

 

かかる窓ありとも知らず、昨日(きのふ)まで過(す)ぎし河岸(かはきし)。

今日(けふ)は見よ、

色赤き花に日の照り、かなしくも依依兒(ええてる)匂ふ。

あはれまた病(や)める Piano(ピアノ) も‥‥

四十一年九月

 

[やぶちゃん注:四点リーダはママ。

「依依兒(ええてる)」この場合は、「赤き花の魔睡」に出た空間を満たす仮想物質としての「エーテル」ではなかろう。そちらでは、北原白秋はエーテルの「光素(エエテル)」の漢字を与えているからで、しかも本篇は「かなしくも」そのエーテルが実際の臭気として「匂」ってくるのである。さすれば、彼が見上げた川岸の窓とは病院なのではなかろうか。そこから麻酔剤としての「依依兒(ええてる)」= ether ethyl ether(エチル・エーテル)の薬物の臭いが漂ってくるのである。その推定の確信は続く終行の「あはれまた病(や)める Piano(ピアノ)も‥‥」によって補完されていると私は思う。]

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