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2020/10/19

畔田翠山「水族志」 イダ (イラ)

 

(九)

イダ【紀州熊野總稱】 一名イソアマダヒ【紀州若山】

形狀方頭魚ニ似テ鱗大ニ乄滑也背紅色ニ乄黃ヲ帶頭上ニ紅㸃アリ橫翅ノ上ヨリ背ニ至リ黑斑太キ條ヲナシ條ノ下白斑アリ白斑ノ下ヨリ尾ニ至リ淡紅色ニ乄黃ヲ帶黑㸃アリ腹白色黃紅ヲ帶尾岐ナク黑色黃ヲ帶背鬣紅黃色ニ乄端黑色腰下鬣紅黃色ニ乄淡黑色及淡黑條アリ脇翅淡黃腹下翅淡黃ニ乄下淡黑色唇黃ニ乄上黑色一種頭淡紫色ナル者アリ紀州ニテ漁人「モブシ」ト云「モブシ」ハ海磯葉ニ住ト云義也一種同形ニ乄橫ニ綠色大斑斜ニ一ツアルアリ一種同形ニ乄短者アリ一種「メアカ」ト云者アリ形狀短ク圓ク鱗大ニ乄眼大ニ赤色此魚頭大ニ乄身小也鱗色綠褐色ニ乄滑也

 

○やぶちゃんの書き下し文

(九)

イダ【紀州。熊野。總稱。】 一名「イソアマダヒ」【紀州若山。】

形狀、方頭魚〔アマダヒ〕に似て、鱗、大にして、滑らかなり。背、紅色にして、黃を帶ぶ。頭の上に紅㸃あり。橫翅〔むなびれ〕の上より背に至り、黑斑、太き條をなし、條の下、白斑あり。白斑の下より、尾に至り、淡紅色にして黃を帶び、黑㸃あり。腹、白色、黃紅を帶ぶ。尾、岐なく、黑色、黃を帶ぶ。背鬣〔せびれ〕、紅黃色にして、端〔はし〕、黑色。腰の下の鬣〔ひれ〕、紅黃色にして淡黑色、及び、淡い黑條あり。脇翅〔むなびれ〕、淡黃。腹の下の翅〔ひれ〕、淡黃にして、下、淡黑色。唇〔くちびる〕、黃にして、上、黑色。一種、頭、淡紫色なる者あり。

紀州にて、漁人、「モブシ」と云ふ。「モブシ」は「海磯葉に住む」と云ふ義なり。

一種、同形にして、橫に綠色の大斑、斜に一つある、あり。

一種、同形にして、短き者あり。

一種、「メアカ」と云ふ者あり。形狀、短く、圓〔まる〕く、鱗、大にして、眼、大にして、赤色。此の魚、頭、大にして、身、小なり。鱗の色、綠褐色にして滑らかなり。

 

[やぶちゃん注:本文はここ。重複になるが、これも先の「イソアマダヒ」と同じく、

スズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ亜科イラ属イラ Choerodon azurio

ととってよいように思われる。寧ろ、こちらの方の記載が、よりよくイラの細かな様態と一致するようにも思われるぐらいである。頭に出してある「イダ」が「イラ」に音が近いのも同一種である可能性を示唆しているものとも言えるように思う。宇井縫藏著「紀州魚譜」(昭和七(一九三二)年淀屋書店出版部・近代文芸社刊)のこちらの「カンダイ」(これは紀州に於けるイラの地方名)にも「方言」の記載に、「イラ」の次に「イダ(堅田:現在の和歌山県西牟婁郡白浜町堅田。グーグル・マップ・データ)」と挙げているのである。記載の色彩におかしなものを感じる方もいるかも知れぬが(個人的には共通属性のように「頭の上に紅あり」とあるのはちょっと引っ掛かる)、イラは♀♂の体色や斑紋の差が大きいだけでなく、成長過程に於ける色や斑紋なども、全く別の魚であるかのように見えるので、何ら問題ないと私は思う。不審な方はグーグル画像検索「イラ」を見て戴きたい。

 なお、畔田は決して一項一項を別種として立てるのではなく、呼称が異なったり、呼称が同じでも実際には別種と思われるものだったりするという経験から、違った部分が少しでもあるように見受けられるところがあれば、新しい項立てをするという形で記載しているように思われる。分類体系化するという点では甚だ問題があるが、基礎資料としては漏れがないようにした、博物学的資料としては大切な観点に立って記載しているように私には見受けられ、頭が下がる思いさえするのである。

『「モブシ」は「海磯葉に住む」と云ふ義なり』私は「イソアマダヒ」で「モブシ」という異名について「藻伏」と解釈した。これはそれが正しい可能性を支持するものと言える。「海磯葉」は一応、「うみいそば」と読んでおくが、所謂、磯近くの海底に繁茂する海藻の謂いであろう。

一種、「メアカ」と云ふ者あり。形狀、短く、圓〔まる〕く、鱗、大にして、眼、大にして、赤色。此の魚、頭、大にして、身、小なり。鱗の色、綠褐色にして滑らかなり」「メアカ」という異名は沢山の魚の異名にあるが、思うに、これはイラの幼魚を指しているのではないかと私は思う。ウィキの「イラ」の幼魚の画像を見られたい。凡そ成魚とは全く違う姿・色・斑紋であり、目が赤い。]

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