北原白秋 邪宗門 正規表現版 酒と煙草に
酒 と 煙 草 に
酒(さけ)と煙草(たばこ)にうつとりと、
倦(う)めるこころを見まもれば、
それとしもなき靈(たま)のいろ
曇(くも)りながらに泣きいづる。
なにか嘆(なげ)かむ、うきうきと、
三味(しやみ)に燥(はし)やぐわがこころ。
なにか嘆(なげ)かむ、さいへ、また
靈(たま)はしくしく泣きいづる。
四十一年五月
[やぶちゃん注:「さいへ」既出既注であるが、再掲しておくと、第二連三行目の「さいへ」は連語「然言(さい)へど」の接続助詞「ど」をカットしたもので、「そうは言っても」の意。本詩集の基本律の一つである五・七調定型詩に合わせるための仕儀である。]
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