北原白秋 邪宗門 正規表現版 羅曼底の瞳 / パート「靑い花」~了
羅曼底の瞳
この少女はわが稚きロマンチツクの幻象也、假にソフィヤと呼びまゐらす。
美(うつ)くしきソフィヤの君(きみ)。
悲(かな)しくも戀(こひ)しくも見え給ふわがわかきソフィヤの君(きみ)。
なになれば日もすがら今日(けふ)はかく瞑目(めつぶ)り給ふ。
美(うつ)くしきソフィヤの君(きみ)、
われ泣けば、朝な夕(ゆふ)なに、
悲(かな)しくも靜(しづ)かにも見ひらき給ふ靑き華(はな)――少女(をとめ)の瞳(ひとみ)。
ソフィヤの君(きみ)。
[やぶちゃん注:「羅曼底」添え辞から「ロマンチツク」と読んでいると読むべきであろう。
「ソフィヤ」女性名ソフィア(Sophia・Sofia・Sofij)は古代ギリシア語で「智慧」「叡智」を意味する「ソピアー」由来。
本篇を以ってパート「靑い花」は終わっている。]
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