譚海 卷之三 宇治の茶師
宇治の茶師
○宇治の茶師、江戶より諸大名の登せらるゝ茶壺を二通(とほり)づつ預りて、一通りは愛宕山にのぼせ、來春詰かへの壺來るまでは、山上の坊に預置(あづけおく)事也。茶壺は什器(じふき)成(なる)ゆゑ、火災を恐れてかくする事に成(なり)たるとぞ。
[やぶちゃん注:「什器」ここは元義。仏教の什物(じゅうもつ)に由来し、寺で宗徒が使う器具・日用品・生活用品を指す。これらは「什」(数字の「十」と同義)「聚」(「集まったもの」の意)などと呼び、一つや二つなどではなく「十」を一単位として数えなければならないほど沢山あり雑多であることから、中国で宋代に禅宗寺院内で使われ始めた語であった。後に「什器」とも呼び、これが一般化し、日常生活で使用される食器や家具を指す語に転じた。]