譚海 卷之三 壬生念佛
○壬生地藏の念佛會は、其寺の櫻咲初むれば勤行を始る事也。念佛中(ちゆう)當所の百姓狂言を催して本堂にて興行する也。花見の女房、出家の狂したるまねなど、皆定(さだまり)たる滑稽にて、往古よりせし作法のまゝに年々勤(つとむ)る事也。但(ただし)其狂言は身振(みぶり)のみにてものいふ事なし。
[やぶちゃん注:京都市中京区壬生にある律宗大本山壬生寺(みぶでら)で、旧暦三月十四日から二十四日まで(現在は四月二十一日から二十九日まで)行なわれる大念仏の法会。正安年間(一二九九年~一三〇二年)円覚が始め、その際に教理を会衆に知らせるために無言の狂言を演じたと伝え、今も「壬生大念仏狂言」として行われ、鉦や太鼓、笛の囃子に合わせ、面を被り、無言で演じる。演目は全部で三十あり、勧善懲悪などの教訓を伝える話や、「平家物語」や「御伽草子」などに取材した話がある。煎餅を観客席に投げる「愛宕詣」、紙で出来た糸を観客席に投げる「土蜘蛛」、綱渡りをする「鵺」・「蟹殿」、素焼きの焙烙(ほうらく)を割る「炮烙割」といった派手な見せ場を持つ演目もある。鉦と太鼓の音から「壬生寺のカンデンデン」の愛称で親しまれている(以上は辞書及びウィキの「壬生狂言」に拠った)。]