譚海 卷之三 日光御門主入室
○日光御門主御入室の例は、たとひ遠孫の親王たりとも入室に走らるゝ時は、童形(だうぎやう)にて參内引見の上、したしく今上の親王に准ぜらるゝ事にて、御猶子(ごいうし)の禮有て二品位を授られ、其後(そののち)前門主の御弟子に成、受戒剃髮候事也。親王前門主の房に向(むかは)るゝ時は、夜陰に素足(すあし)にて禁中を退出有事(あること)也。所司代同敷(おなじく)跣足(はだし)にて自身燈(ひ)を取て前驅(まへがけ)する事とぞ。世尊王宮を逃れ出て出家有し故事を學(まなば)るゝ事といへり、智恩院入室も大抵かくのごとしとぞ。
[やぶちゃん注:「世尊」釈迦。]