譚海 卷之三 加茂附木を不用
○加茂神領の一村は附木を用る事なし、ほだを埋(うづ)み置(おき)て薄のかれくきに吹付(ふきつけ)、火を取(とり)て燈(ともし)にも點ずる事なり、神代の儀を傳ふといへり。又あたご山にしきみが原とてしきみの限り生ずる地有、京中の人每月十四日登山のたよりに、此しきみを萱把づつ取歸り、家にたくはへて每朝竃下(かまどした)の火に一葉づつ焚(たき)て、ひぶせのまじなひにする事也。
[やぶちゃん注:「加茂神領の一村」不詳。上賀茂と下賀茂神社の周辺か(グーグル・マップ・データ航空写真。以下同じ)。
「あたご山」愛宕山。
「しきみが原」「樒が原」。愛宕山の峰筋を北西に入ったところに京都市右京区嵯峨樒原宮ノ上町(さがしきみがはらみやのうえちょう)の他、「樒原」を含む地名が四ヶ所も見出せる。]