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« 大和本草卷之十六 海獺(あしか/うみをそ) (絶滅種ニホンアシカ) | トップページ | ブログ・アクセス1,510,000アクセス突破記念梅崎春生 冬の虹 »

2021/03/20

ブログ・カテゴリ「和漢才図会抄」始動 /「和漢三才圖會」巻第六十「玉石類」「珊瑚」

 

[やぶちゃん注:私は既に江戸前・中期の医師寺島良安(承応三(一六五四)年~?:生まれは出羽能代(一説に大坂高津とも)生まれの商人の子とされる。後に大坂に移って、伊藤良立・和気仲安の門人となり、医学・本草学を学んだ。後にこの業績が評価され、大坂城入りの医師となり、法橋に叙せられた。この間、明代の医学の影響を受けた著書を多く刊行した。その最晩年の事蹟は不明であるが、享保(一七一六年~一七三六年)の頃に没したとされる)の主著である正徳二(一七一二)年に刊行した類書(百科事典)「和漢三才圖會」(「和」は「倭」とも表記する。全三百巻から成り、明の類書「三才圖會」(明の一六〇九年に刊行された王圻(おうき)とその次男王思義によって編纂された。全百六巻)の分類・構成を参考にして執筆された本邦初の絵入り百科事典である。但し、本草部は、概ね、明の李時珍の「本草綱目」を基礎記載を用いている。本文は漢文体であるが、丁寧に訓点が打たれてある。私は本書を偏愛しており、サイトで「和漢三才圖會」の水族(海藻・海草・淡水藻の他に菌類・菌蕈類・蘚苔類・地衣類・シダ類等を含む)の部全七巻、

卷第四十五 龍蛇部 龍類 蛇類

卷第四十六 介甲部 龜類 鼈類 蟹類

卷第四十七 介貝部

卷第四十八 魚類 河湖有鱗魚

卷第四十九 魚類 江海有鱗魚

卷第五十  魚類 河湖無鱗魚

卷第五十一 魚類 江海無鱗魚

及び、

卷第九十七 水草部 藻類 苔類

を、以下、一部を除いてブログで動物部の、

卷第三十七 畜類

卷第三十八 獸類

巻第三十九 鼠類

卷第四十  寓類 恠類(これはサイト版)

卷第四十一から巻第四十四 禽部

卷第五十二から巻第五十四 蟲部

を、実に十二年半かけてオリジナル電子化訓読注をし終えている。しかし、いろいろな電子化注をする中で、これは必要と思われるものを注の中で電子化することも多く、また、注が長くなるために、それを見送るケースもたまにあった。そこで、そうした部分電子化(巻ごと全部ではなく)を、独立して、気軽に電子化するために、このブログ・カテゴリ「和漢三才図会抄」を始動することにした。

 本文テキストの底本は一九九八年刊の大空社版CD-ROM「和漢三才図会」を用いた。但し、本文中に用いた各項目の画像データは、当該底本に発行者による著作権主張表記があるので、平凡社一九八七年刊の東洋文庫訳注版「和漢三才図会」が所載している美麗な画像を取り込んだものを用いている(一部の汚損等に私の画像補正を行っている)。なお、これについては文化庁の著作権のQ&A等により、保護期間の過ぎた絵画作品の複製と見做され(特に新たに描画したという記載は当該本にはない)、著作権は認められないと判断するものである(これに従えば、大空社版CD-ROM「和漢三才図会」もそれに相当するから、実際には使用して問題はないが、汚損のない「東洋文庫」版を用いることとする。言っておくと、私は大空社版の画像を使ったことは、一度も、ない)。

 最初に訓点を除去した本文を示し(改行も一致させる。判読出来ない場合は、国立国会図書館デジタルコレクションの明三五(一九〇二)年中外出版社刊で校合した。正字か略字か判断に迷った場合は正字とした。二行目以降の一字字下げは無視した)、次にそれを書き下したものを後に載せ、最後に語注を附す。訓読文では、読みは、良安の振ったものは( )で示し、一部の難読と思われる箇所を〔( )〕で添え、本文の不全と判断した箇所には〔 〕で私が添えた字を示した。但し、送り仮名等は以上の電子化で良安の癖を十全に理解しているため、かなり自由に添えてある。ネット上には幾らでも原本画像があるので、そちらと対照されたい。

 まずは、水族の補填のための「和漢三才圖會」巻第六十「玉石類」の「珊瑚」から始める。]

 

Sango

 

さごじゆ   鉢擺娑福羅【梵書】

珊瑚【山乎】

サンフウ

Saogotenn

[やぶちゃん注:古い字体で表現出来ないので、「東洋文庫」から画像でトリミングした。]

本綱珊瑚生南海又從波斯國及師子國來生海底五七

株成林作枝柯狀居水中直而軟也見風日則曲而硬變

紅色者爲上中多有孔亦有無孔者枝柯多者更難得亦

有黑色者取之人乘大舶堕鐵綱於水底先人没水以鐡

發其根繫綱于舶上絞而出之失時不取則腐蠹但生於

海者爲珊瑚生於山者爲琅玕

珊瑚【甘平】去目翳消宿血爲末吹鼻止鼻衂今人用爲㸃眼

筯【俗云眼棒】治目翳

△按珊瑚淺紅色鮮明者稱阿媽港之產上也深赤者號

血玉下品也共大者希大抵作佩幐緖鎭玉其重一二

錢目至三四錢目者最奇也凡中齒試之眞者音鏗鏘

僞者音如柔今以鯨牙齒作玉形用紅花汁煮之熟時

入梅醋少許則色染入鮮明又以鹿角作玉用紅花汁

染成者僞之僞也

青珊瑚 枝柯不異珊瑚而正青色是疑琅玕矣

猩猩石 南京玉也紅色似珊瑚而肌理濃

 

○やぶちゃんの書き下し文

さごじゆ   鉢擺娑福羅(ハヒシヤフラ)【梵書。】

珊瑚【〔音〕「山乎〔(さんご)〕」。】

サンフウ

「本綱」に、『珊瑚、南海に生ず。又、波斯(ハルシヤ)國及び師子〔(シシ)〕國より來たる。海底に生じて、五、七株、林を成し、枝柯〔(しか)〕の狀〔(かたち)〕を作〔(な)〕す。水中に居るときは、直(すぐ)にして軟(やはら)かなり。風・日を見るときは、則ち、曲(まが)りて、硬(かた)し。紅色に變ずる者を、上と爲す。中に、多く、孔〔(あな)〕有り。亦、孔、無き者〔も〕有り。枝柯多き者、更に得難し。亦、黑色なる者、有り。之れを取るに、人、大舶〔(おほぶね)〕に乘り、鐵の綱を水底に堕(をろ)し、先づ、人、水に没して、鐡を以つて、其の根を發(をこ)し、綱を舶の上に繫(つな)ぎ、絞(しぼ)りて之れを出だす。時を失して、取らざるときは、則ち、腐(くち)て蠹(むしく)う[やぶちゃん注:ママ。]。但し、海に生ずる者を珊瑚と爲し、山に生ずる者を琅玕〔(らうかん)〕と爲す。』と。

珊瑚【甘、平。】 目の翳(かゝりもの)を去り、宿血を消す。末と爲して、鼻に吹けば、鼻衂〔(はなぢ)〕を止む。今人、用ひて、眼に㸃ずる筯(はし)と爲す【俗に云ふ、「眼棒」。】。目の翳を治す。

△按ずるに、珊瑚は、淺紅色の鮮明(あざや)かなる者を「阿媽港(アマカワ)の產」と稱し、上なり。深赤なる者、「血玉」と號〔(なづ)け〕、下品なり。共に、大なる者、希れにして、大抵、佩幐(きんちやく)〔の〕緖鎭玉(をじめ〔だま〕)に作る。其の重さ、一、二錢目より、三、四錢目に至る者、最も奇なり。凡そ、齒に中〔(あ)〕てて、之れを試むるに、眞なる者は、音、鏗-鏘(さやか)なり。僞れる者は、音、柔(やはら)かなるがごとし。今、鯨の牙齒を以つて、玉の形に作り、紅(べに)の花〔の〕汁を用ひて、之れを煮、熟する時、梅醋を少し許り入るるときは、則ち、色、染-入(しみこ)みて、鮮明なり。又、鹿角を以つて玉に作り、紅花汁を用ひて染め成す者は、僞(にせ)の僞(いつはり)なり。

青(せい)珊瑚 枝柯、珊瑚に異ならずして、正青色。是れ、疑ふらくは「琅玕〔(らうかん)〕」ならん。

猩猩石(しやうじやうせき) 南京玉なり。紅色。珊瑚に似て、肌理〔(きめ)〕、濃(こまや)かなり。

 

[やぶちゃん注:サンゴ類。刺胞動物門 Cnidaria 花虫綱 Anthozoa の内で、有意な石灰質の骨格を形成する種類の総称。現生種は、

花虫綱八方サンゴ亜綱ヤギ目サンゴ科 Coralliidae

及び、

花虫綱六放サンゴ亜綱 Hexacoralli

に含まれるものが殆んどである。詳しくは昨日公開した『「大和本草卷之三」の「金玉土石」類より「珊瑚」 (刺胞動物門花虫綱 Anthozoa の内の固い骨格を発達させるサンゴ類)』の私の注を参照されたい。以下、色違いの珊瑚が出るが、特に種同定はしない。悪しからず。

「さごじゆ」ママ。

「鉢擺娑福羅(ハヒシヤフラ)【梵書。】」「本草綱目」の巻八の「金石之一」の「珊瑚」の「釋名」に「鉢擺娑福羅【梵書。】」と出る。古代サンスクリットの漢音写。

「サンフウ」「珊瑚」は現代中国音で「shān hú」(シァン・フゥー)。

「波斯(ハルシヤ)國」ペルシャ。

「師子〔(シシ)〕國」旧セイロン、現在のスリランカ。

「枝柯」本来は「木の枝」の意。「柯」は「枝」に同じか、或いは「枝」よりも太いものを言うように思われる。

「風・日を見るときは」風波や太陽光の影響を受ける浅い海中に生ずる時は。

「綱」一貫して「綱」と記すが、太い鉄製の索繩に、細かな鉄の網を附けたものの謂いととっておく。

「琅玕」これは引用された「本草綱目」の「珊瑚」の前に示されてある。『「大和本草卷之三」の「金玉土石」類より「珊瑚」 (刺胞動物門花虫綱 Anthozoa の内の固い骨格を発達させるサンゴ類)』の注で書いたが、「大和本草」では、この「珊瑚」の後に「靑琅玕」として条立てしており、その「大和本草」の「靑琅玕」では、漢籍でも、その起原を海産と主張する者、陸産(陸地或いは山中から出土)する者の意見の錯綜が記されてあり、珊瑚由来とする説もあって、益軒も困って、陸・海ともに産するのが妥当であろうと終わっている。しかし、現在、少なくとも、本邦では「翡翠石」(ヒスイ)の最上質のもの、或いは「トルコ石」又は「鍾乳状孔雀石」或いは青色の樹枝状を呈した「玉滴石」と比定するのが妥当と考えられている(個人サイト「鉱物たちの庭」の「ひすいの話6-20世紀以降の商名と商流情報メモ」に拠った)から、私はそこでは珊瑚との関係性を認めないこととした。但し、「靑琅玕」の中には、日中ともに珊瑚が一部で含まれていた可能性は極めて高いとは思われ、実は「和漢三才図会」でも、まさにこの「珊瑚」の次に「琅玕」が載り、その挿絵は殆んど珊瑚なのだが、やはり良安もこちらは山中に産するものであるとしている。

「目の翳(かゝりもの)」白内障・緑内障・視野狭窄などを指すが、これは多分に鮮やかな色彩からの類感呪術的な処方と考えられる。

「宿血」体内に残留して種々の悪さを働く古い血の謂いであろう。

「末」粉末。

「筯(はし)」『俗に云ふ、「眼棒」』。ごく細い棒状に削って、それに珊瑚の粉末を附け、眼球に点眼するということであろうか。

「阿媽港(アマカワ)」マカオ。

「佩幐(きんちやく)〔の〕緖鎭玉(をじめ〔だま〕)」「佩幐」(おびぶくろ)は古代の旅行具で、保存食の乾飯(糒(ほしいい))などを入れて、腰に附けるように作った携帯用の袋を指す。ここはその口の止め具に珊瑚を飾ったものででもあろう。ファッションというよりも、一種の緊急糧物への邪気除けとしてであると私には思われる。

「一」「錢」は重量単位。一千匁が一銭。明治になって 一貫と同じで正確に三・七五キログラムに定義されたが、良安の謂いも、それと同じとは私には思われない。「東洋文庫」は同グラム数で示してある。

「青(せい)珊瑚 枝柯、珊瑚に異ならずして、正青色。是れ、疑ふらくは「琅玕〔(らうかん)〕」ならん」先の非海産物の出土宝石とするなら、それを珊瑚に似せて加工したものであろう。

「猩猩石(しやうじやうせき)」「南京玉」人工的に赤色に染色した陶製及びガラス製(こちらは「蜻蛉(とんぼ)玉」(トンボの複眼に喩えた)とも呼ぶ)の小さいビーズ(beads)のことであろう。]

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