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2021/03/16

大和本草卷之十六 海豹 (アザラシ類)

 

【外品】

海豹 山東志曰出寧海其大如豹文身五色叢居

水涯常以一豹護守如雁之類其皮可飾鞍褥順

和名抄水豹和名阿左良之○又子ツフト云モノア

リ是海豹ノ類ナルヘシ時珍曰海中有水豹是又

海豹ト同歟

○やぶちゃんの書き下し文

【外品】

海豹〔(あざらし/かいへう)〕 「山東志」に曰はく、『寧海に出づ。其の大いさ、豹のごとく、文身〔ありて〕五色〔たり〕。水涯〔(すいがい)〕に叢〔(むらが)〕り居〔を〕る。常に、一豹を以つて護-守〔(まも)〕り、雁〔(がん)〕の類〔ひ〕のごとし。其の皮、鞍〔(くら)〕・褥〔(しとね)〕を飾るべし。順が「和名抄」に、『水豹〔(すいへう)〕、和名、「阿左良之(あざらし)」。』と。

○又、「ねつふ」と云ふもの、あり。是れ、海豹の類〔(るゐ)〕なるべし。時珍曰はく、『海中、水豹、有り。』と。是れ、又、海豹と同じか。

[やぶちゃん注:食肉目イヌ亜目鰭脚下目アザラシ科 Phocidae のアザラシ類。十属十九種から成る。冒頭は漢籍であるが、日本近海の五種を挙げれば問題あるまい。それらは孰れも北海道を中心に分布する、

アザラシ科ゴマフアザラシ属ゴマフアザラシ Phoca largha (胡麻斑海豹。背面が灰色の地に黒い斑(まだら)模様が散らばる)

アザラシ科ゴマフアザラシ属ワモンアザラシ Pusa hispida (輪紋海豹。背中側に灰色の地に灰褐色から黒色の斑紋があり、斑紋は明灰色が縁取りされており、この点で前掲のゴマフアザラシの模様とは異なる。別名フイリアザラシ(斑入海豹))

ゴマフアザラシ属ゼニガタアザラシ Phoca vitulina (銭形海豹。和名は黒地に白い穴空き銭のような斑紋を持つことに由来する)

ゴマフアザラシ属クラカケアザラシ Phoca fasciata (鞍掛海豹。和名は、成獣の♂には、暗褐色から黒色の地に首・前肢・腰を取り巻く白い有意に太い帯があり、これが、馬具の鞍を掛けたように見えることに由来する)

アザラシ科アゴヒゲアザラシ属アゴヒゲアザラシ Erignathus barbatus (顎鬚海豹。名の通り、他のアザラシに比べ、ヒゲがよく発達しているが、このヒゲは実は顎からではなく、上唇付近から生えている)

となる。

 まず示さねばならないのは、メインの引用を前条「海牛」と同じソースを用いている点である。重複を厭わず出すと、「山東志」清代に三種の「山東通志」があるが、その内の清の学者杜詔(一六六六年~一七三六年)の編纂に成る山東地方の地誌の巻二十四に、以下の文字列を発見した。「中國哲學書電子化計劃」の影印本より起こした。

   *

海豹【出寧海州其大若豹文身五色叢居水涯常以一豹䕶守如雁奴之類其皮可飾鞍褥】海牛【出文登縣郡國志云不夜城有海牛島牛角紫色足似龜長丈餘尾若鮎魚性急捷見人則飛入水皮可弓鞬可燃燈】海驢【出文登縣郡國志云不夜城有海驢島上多海驢常於八九月乳産其毛可長二分其皮水不能潤可以禦水】

   *

既に「海牛」「海驢」が出た。しかし、言っている内容は同じでも、やはりこれも同文には見えない。ところが、やはり、別の「維基文庫」の「欽定古今圖書集成」の「登州府部彙考七」の「登州府物產考」のここを見ると、「海牛」「海驢」と同様に「山東志云」を外した酷似した文字列を見出せた。

   *

海豹 出寧海。其大如豹、文身五色,叢居水涯、常以一豹護守、如鴈奴之類。其皮可飾鞍褥。

   *

やはり、益軒は、前の二種の場合と同様に、「登州府物產考」なる書を参考にしているものと思われる。

「寧海」この地名は複数認められるが、前の二種が山東半島であることを考えると、現在の山東省台市の北東岸の海域(黄海から渤海に入る海峡の要の海域が北に当たる)北にを特異的に指しているように思われる(旧地名は内陸)。この黄海南部をこう読んだと思われる例としては、中華民国海軍巡洋艦に「寧海」(「ニンハイ」。同軍寧海級巡洋艦の一番艦。日中戦争で日本帝国海軍航空隊の空襲を受け、揚子江で航行不能となり、日本帝国海軍に捕獲された。後、太平洋戦争突入後の昭和一九(一九四四)年六月に「五百島(いほしま)」と改名して編入され、海防艦特殊艦に類別された(呉鎮守府籍)。海上護衛任務に従事していたが、同年九月十九日、御前崎南方でアメリカの潜水艦シャード(USS Shad,SS-235)の雷撃により沈没した)が、同軍水上偵察機に「寧海」がある(正式名は「辛式一型水上偵察機寧海號」。艦載されたのが同前の「寧海」であったことから同名で名指された。木製骨組みに羽布張り双フロートの複葉機で、機体強度が不足していたため、カタパルト射出が出来ず、デリック(英語:derrick:兵器や貨物などを吊り上げて移動させるクレーンの一種)を用いて水面に機を降ろしてから離水する方式が取られた)ことからも伺われるように思われる。

「文身」斑紋。

「五色」種や個体によって地肌や斑紋の色は変化に富む。概ね灰色・灰白色・白色・褐色・黒色で、五色は単に多様な色の変異があることを指すもので、多色カラーの謂いではない。

「水涯」海岸。

「一豹を以つて護-守〔(まも)〕り、雁〔(がん)〕の類〔ひ〕のごとし」ゼニガタアザラシ・クラカケアザラシ・アゴヒゲアザラシは一夫多妻型と推定されているが、ハーレムを形成するという記載はなく、ゴマフアザラシ・ワモンアザラシは一夫一妻型であるから、ここは、群れが海岸や岩礁に上がって休息する際に、一頭が警戒役としてあることを言っているものと思われる。

『順が「和名抄」に、『水豹〔(すいへう)〕、和名、「阿左良之(あざらし)」。』と』源順(みなもとのしたごう)の「和名類聚抄」(平安中期の辞書。承平年間(九三一年~九三八年)に勤子内親王の求めに応じて源順が編纂した)の巻十八の「毛群部第二十九」に、

   *

水豹(アサラシ) 「文選」、「西京の賦」に云はく、『水豹を搤(くひ)る』と。【和名、「阿左良之」。】。

   *

とある。「搤(くひ)る」は「締め付ける」で「縊」と同義であろう。

「ねつふ」「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 獵虎(らつこ) (ラッコ)」(「巻第三十八 獣類」の本項目の掉尾)に、「獵虎」の附録として、

   *

祢豆布(ねつぷ)

△按ずるに、此れも亦、蝦夷の海中に之れ有り。大いさ、四、五尺、黒色にして、毛、短く、疎〔にして〕[やぶちゃん注:粗くて。]、其の皮〔も〕、薄く、褥〔(しとね)〕と爲るに堪へず。止(たゞ)毛の履〔(はきもの)〕、或いは鞍の飾りと爲す。熊(くま)の障泥(あをり)に亞(つ)ぐ。然れども、上品ならず。

   *

とある。そこで私は注して、『「祢」は「禰」の略字であるが、生物種は分らん! 良安の書き方からは何らかの文献記載があるだろうに、検索で掛かってこない!! クソ!!! これで「巻第三十八 獣類」は終わるってえのに!!!! 識者の御教授を切に乞う!!!!!』と記したが(二〇一九年四月二十七日記事)、誰からも情報が寄せられていない。益軒のここでの謂いからは、アザラシの一種と考えてもよいようにも思われなくはない。そうなると、成獣の♂に暗褐色から黒色の地に首・前肢。・腰を取り巻く白い帯紋があるクラカケアザラシは外せ、最小のワモンアザラシも除外出来るようだから、ゼニガタアザラシか、ゴマフアザラシが候補にはなりそうだが? 引き続き、よろしくお願い申し上げる!!!

「時珍曰はく、『海中、水豹、有り』と」これは「本草綱目」の巻五十一上の「獸之二」の真正の哺乳類であるヒョウの「豹」の項の「集解」の一節に、突然、挿入されてある。まあ、アザラシでいいんでない? 益軒先生。]

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