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2021/03/03

怪談老の杖卷之二 貉童に化る

 

   ○貉童に化る

 是も上總への田舍にて、秋の頃、「すぐりわら」をするとて、そのくずわら、百姓の門口(かどぐち)にしきて、和(やは)らかなれば、童(わらは)どもの、あつまりて、「かへりごくら」をする事あり。

 あるとき、長太郞といへる童、弐、三人の友だちと、れいの「とんぼがへり」をして、餘念なく遊び居(をり)けるに、ひとりの童、きるものを、あたまよりかぶりて、貌(かほ)をかくし、ひたもの、

「くるり くるり」

中返りを、しけり。

 かの童ども、始(はじめ)は、

『友のうちなるべし。』

と何心なく居けるに、ものもいはず、貌もみえねば、

「誰(たれ)じや、誰じや。」

ととがめても、ものも、いはず。

『じやれてかゝる。』

と、おもひて、かぷりたるあはせを取らんとすれば、

「きゝ」

と、いひて、はなさず、皆、よりて、手をさしいれ、うでをとらへんとしければ、毛の、

「むくむく」

生ひたるに驚きて、

「ばけ物よ。」

と、さわぎければ、おとなしきもの共(ども)、立出(たちいで)て、棒など、持出(もちいだし)けるを見て、かの、あはせをかぶりしまゝにて、林の中へはい[やぶちゃん注:ママ。]入りけるを、

「それよ、それよ。」

と追かけければ、のちは、あはせをうちすてゝ、大(おほい)なるむじなの姿を、あらはして、ましぐらに、かけ行(ゆき)ける。

 かの長太郞、のちに、をとこになりて、堀留(ほりどめ)邊に奉公して居(をり)たるが、直(ぢき)にかたりぬ。

 かの男は、僞(いつはり)などいふものにあらねば、實事なるべし。

[やぶちゃん注:「貉」(むじな)は「狸」の意でとる。

「すぐりわら」農具に使う藁を選別すること。

「かへりごくら」不詳。しかし「こぐら」には「腓(こむら)」「ふくらはぎ」の意があり、直後に『れいの「とんぼがへり」』という表現が出るから、「蜻蛉返り」、宙返り前屈反転の遊びを言っているものと思われる。

「ひたもの」副詞。ひたすら。矢鱈と。

「じやれてかゝる」「戲(じゃ)れてかかりよって!」「悪(わる)ふざけして、戯(たわむ)れやがってからに! 堪忍なんらん!」といった苛立ちの表現。

「きゝ」既にして人ではない「もの」、獸(けもの)の声として発声している感じである。

「おとなしきもの共」大人の連中。

「堀留」現在の中央区日本橋堀留町一丁目付近か(グーグル・マップ・データ)。]

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