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2021/03/22

譚海 卷之四 同所新島椎の實幷牛角の事

 

○江戸市中にてあきなふ椎の實は、大半伊豆のにい島より來(きた)る也。市中に散在してはさのみに見へざれども、にゐ島[やぶちゃん注:ママ。以下同じ。]より浦賀へ積(つみ)くる船にてみるときは、五斗入百俵百五拾俵ほどづつ一度につみくるなり。にゐ島すべてしゐの大木多し。年寄又は幼少のものの所作にひろひとる事なり。その木は海舶(うみぶね)の櫓(ろ)梶(かぢ)などに伐出(きりいだ)す。遠所にある椎は伐たふしたるまゝにて谷へ積置(つみおき)、それが自然(おのづと)朽(くち)てとしへたるにはしひたけを生ずるを、又取(とり)てあきなふなり。また新島より牛の角をいだす。島(しま)牛おびただしく畜(かひ)てしかも田地なきゆへ[やぶちゃん注:ママ。]、耕作のやうにたたず、只(ただ)角をとりて漁獵(ぎよらう)の用に沽却(こきやく)するなり。依(より)て新島にて牛狩(うしかり)といふ事をする也。流人(るにん)の壯者(さうしや)を集(あつめ)て牛を驅(かけり)て追つめて、角を打(うち)おとす、牛の痛哭(つうこく)する聲聞(きく)にたえず。しかれども牛の用に立(たた)されば[やぶちゃん注:ママ。]、是非なき事なり。落(おち)たる口に小(ちさ)きしんあり、それも年をふれば長ず。

 

[やぶちゃん注:「同所」というのは、前の「豆州南海無人島の事」の「豆州」(伊豆國)を指す。

「新島」(にいじま)は伊豆諸島を構成する島の一つで、東京から南に約百六十キロメートル、静岡県下田市から南東に三十六キロメートルの位置にある。行政上の所属は東京都新島村。ここ(グーグル・マップ・データ)。

「椎」本邦産種はブナ目ブナ科シイ属ツブラジイ Castanopsis cuspidata (関東以西に分布。実は球形に近く、以下のスダジイに比べて小さい)・スダジイ Castanopsis sieboldii (シイ属の中では最も北に進出してきた種。成木の大きなものでは樹皮に縦の割れ目を生じる。福島県及び新潟県の佐渡島にまで植生する。果実は細長い。琉球諸島のスダジイを区別して亜種オキナワジイ Castanopsis sieboldii ssp. lutchuensis  とする場合がある。沖縄では伝統的にそれを「イタジイ」の名で用いられてきた。両者が共存する地域では、ツブラジイが内陸に、スダジイが海岸近くに出現することが多い)である。私は特異的に椎の実が好きな人間で、都会でも山中でも即座に見つけることが出来る。個人的にはスダジイのそれを好む。

「五斗」二リットルのペットボトルで四十五本分。

「所作」ここは「仕事・作業」の意。

「しひたけ」椎茸。菌界担子菌門菌蕈(きんじん)綱ハラタケ目キシメジ科(或いはヒラタケ科又はホウライタケ科又はツキヨタケ科ともする)シイタケ属シイタケ Lentinula edodes

「漁獵の用」釣り針や銛の鏃(やじり)或いは錘(おもり)用。

「沽却」売ること。

「しん」「芯」。牛の角は洞角(どうかく)・ホーン(英語:Horn)と呼ばれる。ウシ科(哺乳綱鯨偶蹄目ウシ亜目真反芻下目ウシ科 Bovidae)とプロングホーン(英語:pronghorn)科(真反芻下目キリン上科プロングホーン科 Antilocapridae)の角である。生きた骨の核をタンパク質とケラチン(角鞘)が覆っている。角鞘のみに着眼すると、「空洞」に見えるので、かく呼ばれる(ここでは生きた骨の核(かく)の部分を含めて切り落としているので、それを「芯」と呼んでいるのである)。角鞘は皮膚の表皮が強く角質化したもので、発生学的には、洞角は皮下の結合組織(頭皮の下)から発生して、後に前頭骨に融合する。核の骨部はシカ科(鯨偶蹄目反芻亜目シカ科 Cervidae)の角(枝角)のように生え替わることはないが、プロングホーンでは角質部(角鞘)が生え替わる。ウシ科では角質部も生え替わることはない。洞角は通常、湾曲状或いは渦巻状の形をしているが、しばしばリッジ(ridge:稜(りょう))があったり、扁平であったりする。多くの種では、♂♀ともに洞角を持つが、♀のものは小さい。洞角は、生後、すぐに成長し、一生を通じて成長を続ける(角質部が生え替わるプロングホーンを除く)。洞角は殆どの種で一対であるが、二対以上生じる種もあり(例えば四角羚羊(ウシ科ウシ亜科ヨツヅノレイヨウ属ヨツヅノレイヨウ Tetracerus quadricornis )、また、家畜化されたヒツジでは二対以上を持つものがいる(以上はウィキの「洞角」に拠った)。]

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