大和本草附錄巻之二 魚類 ふなしとぎ (コバンザメ)
フナシトギ ハ海魚也長二尺許其形頭ヨリ下ハ不扁
シテ而圓シ頭ハ少シ扁シ背ノ近首處多橫文シテ而
促レリ橫文二十三アリ橫ニ連レリ其間三寸許背
ノ橫文ヲ以船板ニ付テ不離生ナルヲ爼上ニヲケバ
取付テ難分
○やぶちゃんの書き下し文
「ふなしとぎ」は、海魚なり。長さ、二尺許り。其の形、頭より下は扁〔(ひらた)〕からずして、圓〔(まろ)〕し。頭は、少し、扁〔(ひらた)〕し。背の首に近き處、橫文〔(わうもん)〕多くして、而して促(しま)れり。橫文、二十三あり。橫に連なれり。其の間、三寸許り。背の橫文を以つて、船板に付(つ)きて離れず。生〔(なま)〕なるを爼上〔(そじやう)〕にをけば、取り付きて、分れ難し。
[やぶちゃん注:「サメ」とつくが「鮫」とは全く無縁な、軟骨魚類でない、
条鰭綱スズキ目コバンザメ科コバンザメ属コバンザメ Echeneis naucrates
である。この一篇のために、先に『栗本丹洲「栗氏魚譜」より「小判鮫」 (コバンザメ)』を図附きで電子化注しておいた。また、ちょっと奇体な絵だが、私の「栗本丹洲 魚譜 白のコバンザメ」も見られたい。
「ふなしとぎ」この異名も『栗本丹洲「栗氏魚譜」より「小判鮫」 (コバンザメ)』の注で考証しておいた。
「促(しま)れり」これは「促音」という語で判る通り、「迫る・隙間がなくなる)」の謂いで、細かな横紋が相互にキュッと締まっているというのである。最初のリンク先の引用で示されている通りの吸盤部の構造と非常にマッチした簡便にして正しい表現と言える。
「橫文、二十三あり」前記引用に『十八から二十八枚の明瞭な隔壁がある』とあるから、この数字もいい。
「橫に連なれり」ここは「橫」ではなく、「前後」とすべきところかも知れぬが、前記引用でも『横(背骨と垂直方向)』とあるから問題ない。]
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