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2021/04/13

大和本草附錄巻之二 魚類 エイノ類 (エイ類)

 

エイノ類 スブタヱイ。カイメニ似タリカイメヨリヒラタ大

ナリ目口ヒレ尾カイメニ同○ウシヱイノ色黑シ○

トビヱイ子ヅミ色龜ノ頭ノ如シ○鳥エイ味赤エイ

ニマサル味カロクヨシ○カラスヱイ是モ色黑シ○コンヒ

ラエイ形ヨコヒロシ○サエイ色赤黑右何レモ味同シ

○やぶちゃんの書き下し文

「えい」の類

すぶたゑい 「かいめ」に似たり。「かいめ」より、ひらた〔し〕。大なり。目・口・ひれ・尾、「かいめ」に同じ。

○「うしゑい」の色、黑し。

○「とびゑい」 ねづみ色。龜の頭のごとし。

○「鳥えい」 味、「赤えい」にまさる。味。かろく、よし。

○「からすゑい」 是れも、色、黑し。

○「こんぴらえい」 形、よこ、ひろし。

○「さえい」 色、赤黑。

右、何れも、味、同じ。

[やぶちゃん注:「エ」と「ヱ」の混用はママである。但し、「鱝・鱏」(エイ類)の「えい」は歴史的仮名遣では「えひ」が正しく、これらは総て誤表記であるので注意されたい。「大和本草卷之十三 魚之下 海鷂魚(ヱイ) (アカエイ・マダラトビエイ)」があるが、そこで私が注した通り、その記載は概ね、軟骨魚綱板鰓亜綱エイ上目エイ亜区トビエイ目アカエイ科アカエイ属アカエイ Dasyatis akajei 及び、「鳥ゑい」とするトビエイ目トビエイ科マダラトビエイ Aetobatus narinari の記載と読んだ。さすれば、この二種以外のものにここでは同定を試みることとするが、なかなか手強い。

「すぶたゑい」「簀蓋鱝」でこの異名を、魚類異名表(PDF)に見出せるのだが、種同定されていない。意味は「簀の子板で出来た鍋の蓋のようなエイ」のように思われる。しかし、それは概ね一般的なエイを呼んでも通じる。さて、そこでいろいろ探ってみたところが、「重修本草綱目啓蒙」の巻四十の「無鱗魚」の「海鷂魚」(エイ)の一節に(国立国会図書館デジタルコレクションの当該部画像。左ページの一行目)、

   *

一種「スブタエイ」は犂頭鯊(カイヅブカ)に似て扁大なり。目・口・鰭・尾、皆、犂頭鯊におなじ。

   *

と出るのを見つけた。この犂頭鯊(カイヅブカ)は、

サカタザメ(エイ区エイ上目サカタザメ目サカタザメ科サカタザメ属サカタザメ Rhinobatos schlegelii :「坂田鮫」と書くが、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のサカタザメのページを見ると、この『「さかた」は「逆田」なのではないか? すなわち』、『田を耕す「鋤」に似たサメという意味』とあって、目から鱗であった)

の異名である。所謂、尖頭状を呈し、ちょっと左右に開いた後頭部分がエイっぽいが、胴体が細長く超スマートなエイとサメの合いの子みたような種である。小野蘭山の謂いなら、そいつか、その近縁種としか読めないのだが、「スブタエイ」に似たものとしては「サカタザメ」の中には「テンガイエブタ」(和歌山県湯浅)ぐらいしか見当たらない。そもそもが形態からして、彼はエイの名を附さない異名が圧倒的に多いのである(脱線だが、この仲間は、古くから、乾して加工し、腹部側(奇体な顔にシミュラクラ(simulacra)する)を見せて「怪物」「宇宙人の死体」などとして好事家に取引されていたのを思い出す。「devilfish」或いは「ジェニー・ハニヴァー」(英語:Jenny Haniver)と呼ぶ。「栗本丹洲 魚譜 カツベ (メガネカスベの腹部か?)」の私の注を参照されたい)。ところが、「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のアカエイのページを見るに、「マエノエブタ」(三重県・和歌山県など紀州)・「ブタ・チャンガラブタ」(岡山県)・「エブタ」(和歌山県紀の川市・和歌山市雑賀崎・湯浅・和深)や「カセブタ」などスブタに親和性のある異名が見出せるのである。ところがどっこいで、益軒は続けて『「かいめ」に似たり。「かいめ」より。ひらた』く、「大」きく、ところが、『目・口・ひれ・尾、「かいめ」に同じ』とのたもうているのだ。この「かいめ」というのは

九州・福岡志賀島・長崎でサカタザメの異名

としてあるのである。若い頃を除いて福岡藩から殆んど出なかった益軒のフィールド内である。さればこそ、これはもう、サカタザメに比定するしかないのではなかろうか? 当該ウィキによれば、『大韓民国、中華人民共和国、台湾、朝鮮民主主義人民共和国、日本』、『太平洋北西部(茨城県および新潟県以南から東シナ海・南シナ海にかけて)』に分布する温帯の南方系種である。『三角形に突出した吻を有する。前方に延びた胸びれと吻が融合し』、『体板を形成する。胸びれの後縁と腹びれの前縁は密接する』。『第一背びれの基部が腹びれよりもかなり後方にあることで、他属と識別できる』。『他のエイ同様に体は扁平であり、長い尾部を有する』。『上面から見ると、菱形の体に尾がついたような姿をしており、サカタザメ科の仲間はこの外見上の特徴からギターフィッシュ(guitarfish)の英名を持つ』。『分類上の問題があり、おそらくは太平洋北西部のみに分布し』、『他の地域からの報告は誤同定であること・日本近海でも吻の形状から二型に分かれること・仮にこの二型が独立種となった場合に東アジアの他地域での分布状況がわからないなどの問題点がある』。『近海の砂底に生息し、冬場はやや深い場所に移動する』。『卵胎生で』、六月頃に六~十尾ほどの『胎児を産む』。『サカタエイ(和歌山県)、サカタ(関西・長崎県)、スキ(関西・鳥羽市)、スキサキ(高知県・宇和島市・小野田市・島根県)、コオト(松山市)、カイメ(福岡県)、トオバ(東京都)など』。『上記のように分類上に問題があることと、生息数の推移に関するデータが不足していることから』、『本種の生息状況に関しては不明とされている』。『底引網で漁獲される。魚肉練り製品の原料のほか、ふかひれとしても利用される』。『鮮魚は関西では刺身にもされ』、『湯引きや洗いにして酢味噌でも食される』とある。因みに、「カイメ」の語源は不明である。

「うしゑい」トビエイ目アカエイ科アカエイ属ウシエイ Dasyatis ushiei 。本邦産のエイの中では巨大種で、二メートル以上になる。アカエイよりも体色が黒い。種小名がアカエイと同じくズバリ、「ウシエイ」というのも珍しいが、実際、日本近海でしか見られないようである。

「とびゑい」「ねづみ色」で「龜の頭のごとし」で、軟骨魚綱板鰓亜綱トビエイ目トビエイ科マダラトビエイ Aetobatus narinari でよかろうか(斑であることを言っていないのは気にはなる)。私の『毛利梅園「梅園魚譜」 海鷂魚(マダラトビエイ?)』を参照されたい。

「鳥えい」益軒は別種としたいらしいが、これも私はマダトビエイとするしかない。個体観察を述べずに、味のことしか言っていないから、生体や解体前の個体を見ていない可能性があり、この同定でいいと思う。本文の「大和本草卷之十三 魚之下 海鷂魚(ヱイ) (アカエイ・マダラトビエイ)」でもそう同定したからである。

「からすゑい」名と色から、トビエイ目アカエイ科カラスエイ属カラスエイ Pteroplatytrygon violacea でよかろう。当該ウィキによれば、『カラスエイ属は単型』(たんけい:monotypic:一属一種)『体盤は横長でくさび型。鋭い歯と鞭のような尾、長い毒針を持つ。体色は紫から青緑。体盤幅59cm程度まで成長する。水温19°C以上の外洋域に生息し、季節回遊する。外洋に生息する唯一のアカエイ類で、通常は100m以浅で見られる。底生のアカエイ類と異なり、羽ばたくように泳ぐ』。『餌は遊泳性の無脊椎動物や小魚。活発な捕食者で、胸鰭で獲物を包み込む。産卵期のイカのような季節性の餌も利用する。無胎盤性胎生で妊娠期間は短く、年間2回・4-13匹の仔魚を生む。出産は赤道付近で、時期は場所によって異なる。漁業者を除いて遭遇することは少ないが、尾の棘は危険である。経済価値はあまりなく、混獲されても捨てられる。捕食者の減少により』、『個体数は増えている』。『ほぼ世界中の熱帯から暖帯、緯度52°N-50°Sの外洋域に生息している。西部大西洋ではグランドバンクからノースカロライナ・メキシコ湾・小アンティル諸島・ブラジル・ウルグアイ、東部大西洋では北海からマデイラ諸島・地中海・カーボベルデ周辺・ギニア湾・南アフリカ沖、西部太平洋では日本からオーストラリア・ニュージーランド、東部太平洋ではブリティッシュコロンビアからチリ、また、ハワイ・ガラパゴス・イースター島からも報告されている。インド洋からはあまり報告がないが、インドネシア南西部では一般的である』。『外洋で見られるほぼ唯一のアカエイ類で』、『海底より』も『外洋に生息するのが特徴で、通常100m以浅で見られる』。『海底に近づくこともあり、九州パラオ海嶺の330-381mの深度でも捕獲されている』。『水温19°C以上を好み、15°Cを下回ると死滅する』。『暖水塊を追って季節回遊を行』ない、『北西大西洋では、12-4月はメキシコ湾流の近くで、6-9月は北方の大陸棚で見られる。地中海でも同じような回遊を行うと考えられているが詳細は分かっていない。太平洋では冬季を赤道の近くで過ごし、春になるとより高緯度の沿岸部に移動する』。『太平洋には2つの個体群が存在し、1つは中米からカリフォルニア、もう1つは中央太平洋から日本・ブリティッシュコロンビアまで回遊する』。『南東ブラジルのカボ・フリオ沖では晩春から夏に冷たい湧昇流が見られるため、深度45mより上の暖水塊が存在する領域に閉じ込められる』。『横長でくさび型の体盤、突出しない眼、紫の体色が特徴』(これは水揚げされた場合、明らかに黒っぽく見える。後の「★☜部★」も参照)。『体盤は厚くくさび型で、長さは幅の約3/4。前縁は弧を描き、後縁はほぼ真っ直ぐに尾に続いている。吻は短く先端は丸い。眼は小さく、他のアカエイ類と違い突き出さず、すぐ後方に噴水孔がある。鼻孔間に短くて広い鼻褶があり、口は小さく少し曲がる。口角に深い溝があり、下顎の凹みに合わせて上顎の中央が少し突出する』。『口底を横切って、0-15に分岐した乳頭突起の列がある。上顎には25-34、下顎には25-31の歯列がある。雌雄共に鋭く尖った歯を持つが、雄の方が長く鋭い』。『腹鰭の縁はほぼ真っ直ぐで両端は少し丸くなっている』。『鞭のような尾は体盤の2倍の長さになる。根元は太いが、急激に細くなり非常に長い。前方から約1/3の場所に、鋸歯状の棘が尾に沿って生えている。先の棘が抜ける前に次の棘が生えることがあり、この場合は2本存在する。低い皮褶が棘の基部から尾の先端の手前まで伸びる。若魚の皮膚は完全に滑らかだが、年と共に背面中央に小さな棘が現れ、眼の間から棘の基部にかけてを覆う』。『背面は暗紫色から青緑色、腹側はそれより少し明るい色である。捕まえたり触ったりすると、濃い黒の粘液』(★☜★)『が滲み出し体を覆う』。『体長1.3m・体幅59cm程度』で、『1995-2000年にかけて行われた飼育実験での最大個体は、雄は体幅68cm・体重12kg、雌は体幅94cm・体重49kgであった』。『羽ばたいて泳ぐ』。『遊泳性であるため、底生の近縁種とは様々な点で異なっている。ほとんどのアカエイ類は体盤をうねらせることで推進するが、この種はトビエイと同じように胸鰭を羽ばたかせることで泳ぐ。この泳ぎ方は小回りが効かないが、揚力が発生し』、『推進効率が高い』。『後ろ向きに泳ぐこともでき、小回りの効かなさを補っている』。『獲物を視覚に頼って見つけると考えられている。他のアカエイ類と比べ』、『ロレンチーニ器官』(Ampullae of Lorenzini:微弱な電流を感知する電気受容感覚(英語版)の一種で、サメ類の頭部に広く分布し、摂餌対象を探す方法の一つとして利用している)『の密度が1/3以下であり、覆っている面積も少ない。だが、背面・腹面共に同数程度存在し、トビエイ類よりは多い。30cmまでの距離で1nV/cm以下の電場を感知でき、海水の動きによって発生する電場を捉えられる可能性もある。機械受容器である側線は、他のアカエイ類に似て背面・腹面の広範囲を覆っている』。しかし、『機械刺激より』、『視覚刺激の方に敏感である』。『雄は雌よりも深い場所に生息し、おそらく水平方向にも棲み分けていると考えられる』。『捕獲個体は空腹時にマンボウを攻撃することが観察されている』。『ヨゴレ』(汚。「ヨゴレザメ」とも呼ぶ。軟骨魚綱メジロザメ目メジロザメ科メジロザメ属ヨゴレ Carcharhinus longimanus )『・ホホジロザメ・ハクジラなどの大型捕食者の獲物となる』。『体色は特徴のない背景の中で保護色となる』。『尾の毒針は潜在的に他魚を遠ざけている』。『活発な捕食者であり、獲物を胸鰭で包み込んでから口に運ぶ。滑らかな獲物を捉えて切断するため、アカエイ類には珍しく鋭く尖った歯を持つ』。『餌の種類は多様であり、端脚類・オキアミ・カニの幼生などの甲殻類、イカ・タコ・翼足類などの軟体動物、ニシン・サバ・タツノオトシゴ・カワハギなどの魚類、クシクラゲ、クラゲ、多毛類などを食べる』。『11-4月のカリフォルニア沖では、繁殖のために集まった大量のイカを捕食する』。『1-2月のブラジル沖では、小魚に引き寄せられて沿岸に集まったタチウオの群れを捕食する』。『幼体は1日に体重の6-7%の餌を消費するが、成体では1%程度になる』。『他のアカエイ類のように、無胎盤性の胎生である。胚は卵黄栄養で育ち、その後組織栄養(タンパク質・脂質・粘液で構成された"子宮乳")に移行する。子宮乳は妊娠子宮絨毛糸(trophonemata)と呼ばれる、多数の糸状に伸長した子宮上皮から分泌され、胎児の広がった噴水孔から給餌される。卵巣・子宮は左側のみが機能し、年2回繁殖可能である』。『繁殖行動は、北西大西洋では3-6月、南西大西洋では晩春に見られる』。『雌は1年以上精子を蓄えることができ、適切な環境を選んで妊娠することができる』。『受精卵の塊は両端が先細りになった被膜に包まれているが、皮膜はすぐに破れ卵を子宮内に放出する』。『妊娠期間はエイの中で最も短い2-4か月であり、その間に胚の重量は100倍にもなる』。『人が遭遇することは少なく、攻撃的ではないが、扱う際には尾の棘に注意しなければならない。死亡例が2例あり、マグロ延縄漁従事者が捕獲個体に刺された例、別の漁業者が刺されて数日後に破傷風で死亡した例がある』。『水族館では長い間』、『飼育されてきた』。『インドネシアなどでは肉や軟骨を利用することもあるが、ほとんどの場合はその場で投棄される。延縄・刺し網・巻き網・底引き網などで大量に混獲されていると考えられている。延縄で混獲された場合、漁業者は棘を警戒し、舷側に叩きつけることで釣り針を外す。このことで口や顎に深刻なダメージを受け死ぬ個体が多い。この混獲量に関しては未だデータがない』。『だが、太平洋での調査では1950年代から個体数は増え続けている。これは商業漁業によってサメやマグロのような高次捕食者が減少したためだと考えられている』とある。

「こんぴらえい」不詳。エイ類の大型個体か。金毘羅なら、金毘羅権現で海神・水神の信仰対象であるから、魚の異名についていて不思議じゃないのだけれど、意外なことに、探してみたが、見当たらない。逆に恐れ多いのか?

「さえい」不詳。]

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