大和本草附錄巻之二 蟲類 蝦苗(あみ) (アミ) / 蟲類~了
蝦苗 和名 アミ泥海ニ生ズ生ナルヲナシ物トス乾
タルヲモ食フ有小毒孕婦不可食堕胎產婦及金
瘡アル人不可食又發瘡疥性不良食スベカラズ猫
クラヘバ不產子
○やぶちゃんの書き下し文
蝦苗〔(かべう)〕 和名「あみ」。泥海に生ず。生なるを「なし物」とす。乾したるをも食ふ。小毒、有り。孕婦〔(はらめ)〕、食ふべからず。胎〔(こ)〕を堕〔(おろ)〕す。產婦及び金瘡〔(きんさう)〕ある人、食ふべからず。又、瘡疥〔(さうかい)〕を發す〔る〕性〔(しやう)あるもの〕、良〔から〕ず。食すべからず。猫、くらへば、子を產まず。
[やぶちゃん注:甲殻亜門軟甲綱真軟甲亜綱フクロエビ上目アミ目 Mysida 及びフクロエビ上目ロフォガスター目 Lophogastrida に属する膨大な種(アミ類は全世界で約一千種が知られ、本邦近海でも約二百種は棲息する)を含む小型甲殻類の総称。ウィキの「アミ(甲殻類)」によれば、によれば、『体は頭胸部・腹部・尾部に分かれる。頭部には発達した』二『対の触角と、可動』する『柄の先についた眼を持つ。また、尾部の先端は扇状に発達し、全体としてエビ類に酷似した外見であるが、アキアミ』(軟甲綱十脚目根鰓亜目サクラエビ科アキアミ属アキアミ Acetes japonicus )『のような小型のエビ類やオキアミ』(軟甲綱真軟甲亜綱ホンエビ上目オキアミ目 Euphausiacea のオキアミ類)『とは分類学上』、全く『異なるグループに属する。一般には「イサザ」「イサダ」とも呼ばれる』が、『この呼び名も、例えばツノナシオキアミ』(オキアミ目オキアミ科オキアミ属ツノナシオキアミ Euphausia pacifica )『のようなオキアミ類などに使われる場合があるので注意を要する。体長は最小種で』二ミリメートル『程度、最大種であるロフォガスター目』オオベニアミ科オオベニアミ属『オオベニアミ Gnathophausia ingens では』三十五センチメートルを超える。一般には五ミリメートル程度から三センチメートル前後までの小型種が殆んどである。
「蝦苗」形状からエビの子どもと中国で言ったもの。
「なし物」塩辛或いは魚醤(うおびしお)。現在でもよく見かける。
「小毒、有り」摂餌対象の植物プランクトン由来の毒性は否定出来ない。一個体の濃縮含有量は微々たるものであろうが、同一箇所で毒化した個体を多量に採取して食えば、中毒する可能性はある。それ以外に、益軒の言うように、「瘡疥〔(さうかい)〕」(ここは広義のでき物や発疹・湿疹の類)「を發す〔る〕性〔(しやう)あるもの〕、良〔から〕ず。食すべからず」で、甲殻類アレルギのある者はちょっと食しただけでくるだろう。
「孕婦〔(はらめ)〕、食ふべからず。胎〔(こ)〕を堕〔(おろ)〕す」思うにこれは実際の作用ではなく、「猫、くらへば、子を產まず」と同じで、「蝦苗」という名の類感呪術的ニュアンスを私は感ずる。
「金瘡〔(きんさう)〕」刃物などで生じた傷。]
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