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2021/06/01

大和本草諸品圖上 舟綱(フナツナ) (不詳/推定候補チゴザサ・ケネザサ・ウエダザサ)

 

Hunatuna0
 

Hunatuna

 

舟綱(フナツナ)和名

 味淡甘地ニ著テ生ス

    水邊多蔓延

○やぶちゃんの書き下し文

舟綱(ふなつな)和名。

味、淡甘。地に著〔(つ)き〕て生ず。水邊に多〔く〕蔓延す。

[やぶちゃん注:同定不能なので、図は底本の31コマ目と(スクリー・ショットでトリミングした)、国立国会図書館デジタルコレクションのこちらの左下図の二つを添えた。なお、後者では標題ルビは「フナズト」のように見えるが、底本では、御覧の通り、左に貫いていて「綱」の通りに読めるので、そちらを採用した。

 本種は少なくとも本巻に立項しない。底本の目次ページでは『○舟綱(フナツナ)』となっているだけで、現在の和名の手掛かりも示されていない(ここの目次は時に現在の標準和名が載せられてあるものもある)。

 しかし、名前が如何にもで、しかもしっかり「水邊に多〔く〕蔓延す」とある以上、広義の「水族」として考える必要があると感じて採用した。

 「本巻」のそれらしい項(竹及び笹類など)をざっと覗いたが、出てこない。

 さらに困ったことに、「舟(船)綱」「フナツナ」「フナヅナ」という和名が現在は全く消滅しているらしく、ネット検索でいろいろ掛けてみても、一件も上がってこず、最後には検索候補がなくなってしまう始末であった。最後の頼みの「綱」である「古事類苑全文データベース」でも調べたが、「舟(船)綱」はだめだった。

 しかし、この小さな笹のようなものは、水辺ではないが、和風庭園やガーデニング・サイトで見たことがある。されば、画像で笹などを調べてみた。

 因みに、最初に示したくっきりした底本の画像を画像検索に掛けたが、大量の海外サイトの正当な博物図やボタニカル・アートが掛かってきたものの、同一種と見られるものが一つもなかった。私はこの時、『或いは、この種は本邦で特に見られる、或いは本邦で江戸時代に品種として改良されたものなのではないか?』という印象を持ったことを言い添えておく。

 さて、画像を手掛かりに記載を見たところ、幾つかが眼に留まった。まず、サイト「庭木図鑑植木ペディア」の「タケ・ササの種類」の「チゴザサ/ちござさ/稚児笹」である。冒頭の「葉にストライプ模様が入るササの一種」というキャプションの写真が私のイメージしたものにかなり近い。解説には、別名を「シマダケ」(縞竹)とし、高さは十五~五十センチメートル、直径は一~五ミリメートルと細い。『ケネザサの園芸品種』で、『葉に入る白やクリーム色の模様が美しく、明るい印象を持つため庭園の根締め(高木の下草)や正月飾りの寄せ植え、盆栽として人気が高い。天然の分布はなく、園芸用として全国で栽培、販売されている』。『チゴザサの葉は長さ』十~十五センチメートルで、幅は一・五センチメートル『ほどで表面には細い毛が、裏面には柔らかな毛が多数生じる。本種特有のストライプ模様は中央の葉脈付近に現れるが、早い時季に出た葉ほど美しく、秋以降になると』、『模様がはっきりしない』。『棹』(かん:竹・笹類の幹の部分の呼称)『は最高でも』五十センチメートル『ほどにしかならない矮性品種で、枝は各節から』一『本ずつ出るのが基本だが、稀に分岐する。上部にあるタケの皮は節間よりも長くなり、長期間、棹に残っている。ササの仲間であり』、『竹材としての利用は少ないが、作物の支柱や壁の下地に使うことはできる』。『葉の模様は乾燥すると黄色くなるが、乾燥が激しい環境では消失することもある。また、タケノコを放置して繁茂させた場合、葉の模様は綺麗になりにくい』。なお、『イネ科チゴザサ属の多年草に同名のチゴザサがあ』り、『湿地に群生する多年草で』、『ササのような葉になるが、本種とは関係がない』とある。因みに、この正式標準和名チゴザサという種は単子葉植物綱イネ目イネ科チゴザサ属チゴザサ Isachne globosa であるが、学名で画像検索してみても、この「大和本草」の挿絵のような草体とは全く別物である。

 さて、では、品種「チゴササ」の原種とするケネザサを調べる。これは、「岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科」公式サイト内のこちらで、

単子葉植物綱タケ亜科メダケ属ケネザサ Pleioblastus fortunei forma pubescens

とあった。この学名からは原種のケネザサも品種ということになる。その解説には、『ケネザサは本州福島県以西から九州に分布するササである。明るい二次林の林床や林縁、路傍などに普通に生育する。高さは』二メートル『を越える事もあるが、刈り取られると』、『高さ』五センチメートル『ほどで、芝生状にもなる』(私はこの芝生状のそれをやはりイメージした)。『葉の両面には毛が生えており、特に裏面にはビロード状の毛が生えていることは、よく似ているネザサ』(Pleioblastus chino var. viridis同サイトのこちらを参照)『との区別点である。岡山県ではケネザサはネザサに比べて広い地域に生育しており、ごく普通である。両種は時として混生しているが、より乾燥に強い傾向があり、沿岸部ではケネザサの方が優勢である。古生層などの堆積岩地域で多く、乾燥しやすい花崗岩地域では少ない』とある。他に、Shu Suehiro氏のサイト「ボタニックガーデン」の「うえだざさ(上田笹)」の画像も本「舟綱」の図と親和性がある感じがする。解説には、『わが国の本州、中部地方から四国・九州に分布している「けねざさ(毛根笹)」の園芸品種で』、『高さは』一・五『メートルほどになり、葉の主脈の近くに白色または黄白色の条斑がはい』るとあり、学名を

ウエダザサ Pleioblastus fortunei cv. Tsuboii

とする。「cv.」は「forma」と同じく「cultivar」(栽培品種)の略。園芸分野ではこの表記と、最近では、単に品種名を括った、Pleioblastus fortunei Tsuboii’ がよく使われる)。なお、最初に示したチゴササは幾ら調べても、品種名を添えた学名はなく、ケネザサの二名法の部分がそのまま示されてある。

 但し、それでもこれに同定比定は出来ない。図の棹の部分が妙に太いのが気になることと、冒頭の「淡甘」で、これは食用になる、救荒食物となることを意味するからである。以上の種は食用にならぬことはないだろうし、沢山生えている芽を食えば、食えぬことはあるまい。しかし、食用とする記載に行き当たらないからである。

 以上の私の掲げたものとは、全く別な種である可能性も大きい気がする。

 識者の御教授を切に乞うものである。

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