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2021/05/26

大和本草卷之八 草之四 水草類 くぐ (イヌクグ) / 大和本草卷之八 草之四 水草類~了

 

【和品】

クヾ 海濵斥地ニ生ス水陸共ニ宜シ葉ハ香附子

ニ似テ背ニカト一條アリ織テ短席トス農人コレヲ以馬

具トシ又繩トス武人是ヲ用テ陣中ニ飯ヲ包ム苞トス

槌ニテウツヘシ又牛クヽアリ相似テ大ナリ其用小ナルニヲ

トル順倭名抄ニ莎草ノ和名ヲクヾト訓ス莎草ハ香附子

ナリ是ト一類別物ナリ又菅モ一類ナリ

○やぶちゃんの書き下し文

くゞ 海濵・斥地に生ず。水陸共に、宜〔(よろ)〕し。葉は香附子〔(かうぶし)〕に似て、背(うら)に「かど」、一條、あり。織りて、短〔き〕席〔(むしろ)〕とす。農人、これを以つて馬具とし、又、繩とす。武人、是れを用いて、陣中に、飯を包む苞(つと)とす。槌にて、うつべし。又、「牛くゞ」あり。相ひ似て、大なり。其の用〔は〕、小なるに、をとる。順が「倭名抄」に莎草の和名を「くゞ」と訓ず。莎草は香附子なり。是れと一類〔なるも〕、別物なり。又、菅も一類なり。

[やぶちゃん注:単子葉植物綱イネ目カヤツリグサ科カヤツリグサ属イヌクグ Cyperus cyperoides 当該ウィキによれば、『乾燥したところに生える』多年草で、『傘のように広がる苞とブラシ状の穂が特徴。シュロガヤツリ』(カヤツリグサ属シュロガヤツリ Cyperus alternifolius )『を小さくしたようにも見える』。但し、『小穂の構造はやや特殊』である。『丈夫な草である。全体に緑から黄緑で強いつやがある』。『茎の地下部は卵形にふくらんで根茎となっており、明るい褐色の鞘に包まれる。根茎は地上部が枯れても数年にわたって残る。したがって、地下では小さな株ならば数個の根茎が数珠繋ぎになって葉のある根茎につながっており、大きい株ではそれがさらに枝分かれをして大きな塊になり、あちこちから葉を出している。根茎の先端からは少数の茎を束にして出す。根出葉は幅』三~六ミリメートル。『線形だが』、『あまり長くなく、外側にそる。縁は少しざらつく。花茎が成長した後も根出葉はしっかり残っている』。『花茎は』八~十『月に出る。ほぼ直立するか、やや斜めに出て、高さは』三十~八十センチメートル。『断面はいちおう三角形ではあるが、それぞれの面は丸みを帯び、角は特に角張ってはいなくて表面はなめらかになっている。その先端に単一の花序がつく。花序の下には葉状の苞葉があり、それらは花序より長く、長さはバラバラだが』、『いずれも斜め上に出て真っ直ぐ伸び、全体として花序を受ける受け皿のようになる。その様子はややまばらながらシュロガヤツリに少し似ている。なお、方の縁も少しざらつく』。『花序は小穂のつく枝が』五~十五『本集まった構造で、それぞれの枝には小穂が周囲に一面について、その様子は瓶洗いのブラシに似る。若いときは小穂は軸に斜めに出るが、成熟すると開出する傾向がある。それらの枝はやや伸びて小穂のつく部分の長さは』一・五~三センチメートルで、『それに数』センチメートル『の柄があることもあり、密集して頭状に近くなることもある』。『小穂は線形で長さ』四~五ミリメートルで、『全体に緑色か、多少黄色みを帯びる。断面はほぼ円形で、鱗片はそれに巻き付くようにつく。小花は』一、二『個のみを含む。果実は長楕円状線形で、長さ』二ミリメートルで、『柱頭は』三『個。小穂の基部には関節があり、熟すとここで折れて小穂全体が脱落する、その結果、花茎の先端には苞葉とその内側に棒だけになった軸が残る。なかなかにわびしい景色である』。『低地の乾燥した草地に生える。畑の周辺や、乾燥した道路脇などにもよく見られる。あまり都会では見られず、農村地帯から山際に多い』。『本州南部から四国、九州、琉球列島に産する。本州では関東地方南部、近畿地方南部と中国地方での見知られる。国外では朝鮮南部、台湾、中国からインドネシア、インド、アフリカに渡って分布する』。『小穂がその基部で折れる性質は一般のカヤツリグサ属にはない特徴である。そのため、これをイヌクグ属 Mariscus とすることもあった。同様の性質を持つものにヒメクグ(ヒメクグ属 Kyllinga とすることも)があるが、柱頭が』二『個であることで異なる。またキンガヤツリ(ムツオレガヤツリ属 Torulinium とも)は関節が小穂の基部だけでなく、小花の間にもあり、小穂はバラバラに折れる』。『近縁なものは日本本土にはほかにない。ただしオニクグ C. javanicus が一部で帰化して発見された記録がある。琉球列島などには近縁のビトウクグ C. compactus やタイワンクグ C. cyperinus が知られている』。本種が『利用される話は聞かない』。『雑草に類するものではあるが、あまり広がらず、繁茂することもない』が、『地下茎があり』、『草全体がしっかりしているので抜くのは大変である。この種が生えているところは乾燥していて往々にして土質も硬くて、なお困難に拍車をかける』とある。この筆者はなかなか文才を感じる。なお、「くぐ」の語源は不明。古くからカヤツリグサ科 Cyperaceae或いはそれに似た草類の名であったようではある。ここまで書いたが、正直、これは「水草」ではなく「水族」ではない。まあ、最後だから、いいか。

「斥地」荒れた土地を開拓した場所。

「香附子」単子葉植物綱イネ目カヤツリグサ属ハマスゲ Cyperus rotundus の根茎の生薬名。薬草としては古くからよく知られ、本邦でも正倉院の薬物の中からも見つかっている。「浜菅」であるが、本種はスゲ属ではないので注意が必要。本種は乾燥に強く、陽射しの強い乾いた地にもよく成育する。砂浜にも出現し、名前もこれによるが、実際には雑草として庭や道端で見かけることの方が遙かに多い。線香花火のようなあれである。

「牛くゞ」カヤツリグサ属ウシクグ Cyperus orthostachyus 。但し、草高は二十~七十センチメートルで、イヌクグと変わらないか、却ってやや小さい。但し、これは葉の幅を言っているのかも知れない。ウシクグはタイプ種であるカヤツリグサ属のタイプ種であるカヤツリグサ属カヤツリグサ Cyperus microiria よりも、やや幅が広いからである。

『順が「倭名抄」に莎草の和名を「くゞ」と訓ず』「和名類聚抄」の巻二十の「草木部第三十二」の「草類第二百四十二」に、

   *

莎草 「唐韻」に云はく、『「莎草」【「蘇」「禾」反。』。楊氏「漢語抄」に云はく、『具々』】。」草名なり。

   *

とある。「唐韻」唐代に孫愐(そんめん)によって編纂された「切韻」(隋の文帝の六〇一年の序を持つ、陸法言によって作られた韻書)の修訂本。成立は七五一年或いは七三三年とされる。早くに散佚して、現在に伝わらないが、宋代にこの「唐韻」を更に修訂した「大宋重修広韻」が編まれている。「漢語抄」は「楊氏漢語抄」で奈良時代(八世紀)の成立とされる辞書であるが、佚文のみで、原本は伝わらない。

「莎草は香附子なり。是れと一類〔なるも〕、別物なり」残念ですねえ、益軒先生、現在、本邦では「クグ」類には漢名「莎草」を広く当てています。]

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