大和本草諸品圖上 海帆(うみまつ) (ウミカラマツ・ムチカラマツ・ウミウチワ・イソバナ等)
海帆(ウミマツ)
紅色如ㇾ彩トルカ海中ノ岩ニ生ス
又靑色ナルアリ奇品也
○やぶちゃんの書き下し文
海帆(うみまつ)
紅色。彩〔(いろ)〕どるがごとし。海中の岩に生ず。又、靑色なるあり。奇品なり。
[やぶちゃん注:底本の12コマ目左下。これ以外三品は水族ではないので、特異的に国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミングして示した。「大和本草」の本巻内には「海帆」は立項されないし、少なくとも私の電子化した同書の水族と判断した本文中にも「海帆」「海帆」はない。しかし、そもそもが、「海帆」は一般名詞そのままの馬鹿な命名であっておかしい。そして、その「帆」と、ルビの「ウミマツ」と、解説と、図から、これは枝状の珊瑚と誰でも判る。されば、これは、「大和本草卷之八 草之四 海藻類 石帆 (×海藻ではない刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱ツノサンゴ(黒珊瑚)目Antipathariaの仲間)」の附図と採ってよい。そこで私は、まず、
刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱ツノサンゴ(黒珊瑚)目 Antipatharia の仲間である、
ウミカラマツ Antipathes japonica
ムチカラマツ Cirripathes anguina
を第一候補とし、次に、現代中国語で「石帆」は“sea fan”に英訳され、これは別名を「海団扇」とすることから、
刺胞動物門花虫綱八放サンゴ亜綱ヤギ目角軸(全軸/フトヤギ)亜目トゲヤギ科ウミウチワ属ウミウチワ Anthogorgia bocki 及びその仲間
を加え、さらに同形態を示す同じヤギ目の、
イソバナ科イソバナ属イソバナ Melithaea flabellifera
も同定候補とした。リンク先注の内容に特に変更を加える必要は感じない(一部で属名を落していたのを見つけたので追記しておいた)。なお、「青いのは青珊瑚じゃないの?」と突っ込まれる方のために一言言っておくと、八放サンゴ亜綱共莢(アオサンゴ)目アオサンゴ科アオサンゴ Heliopora coerulea の群体は枝状になることもあるにはあるが、多くは角状・指状・板状であり、このような繊細に綺麗な枝状を呈することはまずなく、あっても太い無骨なものである。嘘だと思うなら、学名でグーグル検索したのをリンクさせておく。ほうら、一つも、ないでしょう?]