大和本草諸品圖上 澤桔梗(さはぎきやう)・雌(め)がや (サワギキョウ・アブラガヤ)
澤(サハ)桔梗
澤中ニ生ス秋開二碧花ヲ一如二
桔梗色ノ一
○やぶちゃんの書き下し文
澤桔梗(さは〔ぎきやう〕)
澤中に生ず。秋、碧花を開く。桔梗色のごとし。
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雌(メ)ガヤ
一名油ガヤ
九月有ㇾ花花ニ有二油ノ臭(カ)一
○やぶちゃんの書き下し文
雌(め)がや
一名「油がや」。
九月、花、有り。花に油の臭(か)、有り。
[やぶちゃん注:底本では20コマ目で、左の二図が「水族」ではないので、国立国会図書館デジタルコレクションのそれをトリミングした。前者は、
双子葉植物綱キク亜綱キキョウ目キキョウ科ミゾカクシ属サワギキョウ Lobelia sessilifolia
「大和本草卷之八 草之四 水草類 澤桔梗 (サワギキョウ)」を参照されたいが、問題は下方の後者で、これは調べてみると、湿地に生えるカヤ類の、
単子葉植物綱イネ目カヤツリグサ科アブラガヤ属アブラガヤ Scirpus wichurae
であり、私の補塡した広義の「水族」と言えると判断した。しかし、では、本巻で立項しているかというと、調べた限りでは、ない、のである。一応、カヤ類の総論的な「大和本艸卷之六 草之二」の「民用草類」の「芒(スヽキ/カヤ)」(右と左のルビ)を確認したが、本種らしい記載はない。しかし、私の眼に触れ、湿生植物である以上、これは採用することとした。当該ウィキによれば、『アブラガヤ属でもっとも普通な植物』。『大きな株を作る多年生草本』。『茎は株立ちになり、多数の根出葉を出し、その葉は長さ』五十センチメートル『ほどになり、幅は』一センチメートル『前後、その基部は長い鞘にな』り、『葉は茎の節からも出る』。『花期は』八~十月で、花茎は高さ一~一・五メートルに『達し、硬く』、『その断面は角の鈍い三角形をしている。花茎はほぼ直立する』。『基部から先端までの間に』六~九『の節がある』。『花序は』二個~五個で、『先端と、より下の節から出て、それぞれ』二『回から』五『回ほど分枝して、多数の小穂を着ける。個々の枝先には小穂が単独に着く例もあるが』、五『個程度までまとまって生じる。特に』二、三『個集まって着く例が多い』。『花序の基部には苞があり、その基部は鞘になっており、先端には葉状部が長く生じる。 小穂は多数の鱗片がらせん状に並んだもので、長楕円形で長さ』四~八ミリメートルで、『赤褐色をしている。個々の鱗片は広倒卵形で長さ』二ミリメートル。『鱗片の下には雄しべ、雌しべ、および糸状の花被片が含まれる。果実は長さ約』一ミリメートルで、『楕円形』を成し、『断面はやや平らな』三『稜形になっている。柱頭は』三『つに分かれる。花被片は』六『本あり、糸状で長くてくねるように折れ曲がり、また先端近くにはその縁に上向きの小突起が並んでいる』。『和名は油ガヤの意味で、穂の色が油っぽく、また多少』、『油臭い臭いがあることに依る。また別名としてナキリ、カニガヤがある』。『ただし、和名の意味については茎に油がついているような光沢があるため、とする説もある』。『北海道、本州、四国、九州に分布し、日本固有種である』。『低地から山地にかけて湿地に見られ』。『ごく普通に見られるものである』。『本種は変異も多く、また近縁種との区別にも議論が多かった』。二〇一一年のデータで、『日本産のこの属には本種を含め』、九『種が記されている』とある(以下、それら種のやや詳しい記述が続くが、省略する)。要は、益軒はカヤ(カヤツリグサ科 Cyperaceae)やススキ(単子葉植物綱イネ目イネ科ススキ属ススキ Miscanthus sinensis )をほぼ一緒くたに捉えて細分分類はしなかったと考えられる。見た目では結構、違うのだが、ね。]
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