大和本草卷之八 草之四 水草類 澤桔梗 (サワギキョウ)
【和品】
澤桔梗 葉似桔梗花碧色ナリ根白シ澤中ニ生ス浮
薔花ヲモ澤桔梗ト俗ニ名ツク與此別ナリ
○やぶちゃんの書き下し文
澤桔梗〔(さはぎきやう)〕 葉は桔梗に似て、花、碧色なり。根、白し。澤中に生ず。「浮薔花(なぎ)」をも「澤桔梗」と俗に名づく。此れと〔は〕別なり。
[やぶちゃん注:双子葉植物綱キク亜綱キキョウ目キキョウ科ミゾカクシ属サワギキョウ Lobelia sessilifolia 。当該ウィキによれば、『美しい山野草であるが、全体に毒性の強いアルカロイドを持つ』『有毒植物としても知られる』。『茎の高さは』五十センチメートル~一メートルにも『なり、枝分かれしない。葉は無柄で茎に互生し、形は披針形で、縁は細かい鋸歯状になる』。『花期は』八『月から』九『月頃で、濃紫色の深く』五『裂した唇形の花を茎の上部に総状に咲かせる。花びらは上下』二『唇に分かれ、上唇は鳥の翼のように』二『裂し、下唇は』三『裂する。萼は鐘状で先は』五『裂する。キキョウ』(キキョウ科キキョウ属キキョウ Platycodon grandifloras )『と同じく雄性先熟で、雄しべから花粉を出している雄花期と、その後に雌しべの柱頭が出てくる雌花期がある』。『北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の湿った草地や湿原などに自生する。普通、群生する』。『他のキキョウ類とは花形が全く異なる』。『同属は世界に』約二百『種あり、大柄な植物も多いが、日本には』四『種しかない。小笠原諸島には低木状になるオオハマギキョウ(L. boninensis Koidz.)があるが、日本本土には以下の種が普通』。
ミゾカクシ(溝隠)Lobelia chinensis (水田雑草として普通で、背が低い。近縁種が琉球列島にある)
ロベリア Lobelia erinus
『サワギキョウは毒草としても知られ』、『麻酔などの効能を薬草として利用された例もあるが、危険が大きいようである』。『横溝正史の』「悪魔の手毬唄」(『宝石』昭和三二(一九五七)年八月号から二年後の昭和三十四年一月号に連載。作品内時制は昭和三〇(一九五五)年夏)『では「お庄屋殺し」の名で殺人に使用されている』とある。
「浮薔花(なぎ)」単子葉植物綱ツユクサ目ミズアオイ科ミズアオイ属コナギ Monochoria vaginalis var. plantaginea か、或いはその近縁種であろう。]
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