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2021/05/25

大和本草卷之八 草之四 水草類 澤瀉(をもだか) (オモダカ)

 

【和品】

ヲモダカ 葉ハヨク慈姑ニ似テ異リ葉莖慈姑ヨリ小ナリ

葉セハク長ク葉ノキレコミ長シ五六月單白花ヲ開ク三

片アリ根小ナリ慈姑ノ如ナラス不可食舊根ヨリ生ス

子ハ母ニ付テ生ス慈姑ノ根ノ蔓ノ末ヨリ子生スルニ異ナリ

一種干葉ヲモタカ葉小ニ花干葉ニ乄白シホウツキノ大ノ如

シ可賞一處ニモ上下ニモ多ク花開ク澤瀉ノ和名モヲモ

タカト云別ナリ○本草綱目二十八卷水草門ニ睡

菜是ナルヘシ

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

をもだか 葉は、よく慈姑〔(くはい)〕に似て、異れり。葉・莖、慈姑より、小なり。葉、せばく、長く、葉のきれこみ、長し。五、六月、單〔(ひとへ)〕の白き花を開く。三片あり。根、小なり。慈姑のごとくならず、食ふべからず。舊き根より生ず。子は母に付きて生ず。慈姑の根の蔓の末より、子、生ずるに、異なり。一種、「干葉〔(ひば)〕をもだか」、葉、小に、花、干葉にして、白し。「ほうづき」の大〔(だい)〕のごとし。賞すべし。一處にも、上下にも、多く、花、開く。「澤瀉」の和名も「をもだか」と云ふ。別なり。

○「本草綱目」二十八卷「水草門」に「睡菜」〔あり〕、是れ、なるべし。

[やぶちゃん注:単子葉植物綱オモダカ目オモダカ科オモダカ属オモダカ Sagittaria trifolia

である。最初に言っておくと、「よく慈姑〔(くはい)〕に似て」いるのは当たり前。慈姑はオモダカの古くに作られた品種(大陸からの渡来品種で、平安初期に中国から伝来したとする説がある)、

オモダカ属オモダカ品種クワイ Sagittaria trifolia 'Caerulea'

だからである。「オモダカ」の漢字表記は「澤瀉」「沢瀉」「面高」である。現在の中国名は「野慈姑」。異名が多く、「ハナグワイ」「サンカクグサ」「イモグサ」「オトゲナシ」などがある。当該ウィキによれば、『オモダカの語源ははっきりとはしておらず、人の顔に似た葉を高く伸ばしている様子を指して「面高」とされたとも、中国語で湿地を意味する涵澤(オムダク)からとられたとも言われる』。『アジアと東ヨーロッパの温帯域から熱帯域に広く分布し、日本でも各地で見られ』、『水田や湿地、ため池などに自生する』。『春に、種子と塊茎から発芽する。発生初期は線形の葉をつけるが、生長が進むと』、『矢尻形をした葉をつける。葉の長さは最大で』六十センチメートル『ほどになるが、葉の形態は種内変異に富む』。『花は単性花で、雌雄同株、白い花弁を』三『枚つける。楕円形の種子には翼をもつ。また種子のほかに、地中に伸ばした地下茎の先に塊茎をつけ、それによって繁殖する』。『同じオモダカ属のアギナシ』Sagittaria aginashi『とよく似ているが、アギナシは根元に粒状の球芽(むかご)を多数形成する一方で地下には走出枝を出さないが、オモダカは走出枝を出し、球芽をつけることはないため、草体を引き抜けば』、『区別できる。そのほか、アギナシの花は葉より高い位置につくという傾向や、オモダカでは矢尻型の葉の先が尖るのに対してアギナシでは先が丸みを帯びるという点も異なるが、花の位置や葉の形態には変異が大きく決め手とはなりがたい。また、アギナシは「顎無し」の名の通り、矢尻型でないヘラ状の葉をつけることも多いが、同様の葉はオモダカでも見られるため、ヘラ状の葉の有無では区別できない』とある。

「干葉をもだか」実は底本PDF38コマ目・右頁五行目)原画像は「千葉」にしか見えないのだが、それでは意味が通らない。本書では、しばしば「于」・「干」・「千」の字が紛らわしく彫られていることから、かく採った。それでも以下の「葉、小に、花、干葉にして、白し」も意味がよく通らない。ここは或いは、「葉、干葉にして、小に、花、白し」の錯文ではあるまいか? 而して、これがもし、アギナシを指しているとすれば、オモダカのような鏃型の葉に比して、ずっとコンパクトで、箆(へら)のように細く干からびて見えるというのは、表現としては納得出来る。しかし、この希望的比定は、実は、裏切られる。四つ後に「あぎなし」が立項されてしまっているからである。

『「ほうづき」の大〔(だい)〕のごとし。賞すべし』花を比較して、愛でるべきであると言っている。比較するため、グーグル画像検索「アギナシ 花」と、「ホオズキ 花」をリンクさせておく。

『澤瀉の和名も、「をもだか」と云ふ。別なり』これは恐らく中国の本草書の「澤瀉」が、どうも本邦の「をもだか」(澤瀉)と違うことに、敏感に益軒は感じたのだ。そうして、それは正しかった。中国語で「澤瀉」はオモダカ科 Alismataceaeの総称でもあるとともに(この時点で既に本邦のオモダカとは別種である可能性が浮上する)、別に属レベルで異なる、

オモダカ科サジオモダカ属ウォーター・プランテーン変種サジオモダカ Alisma plantago-aquatica var. orientale

という別種を指す可能性があると思われるからである。当該ウィキによれば、『和名は、葉の形が』匙(さじ/スプーン)『に似ていることによる。サジオモダカの塊茎は沢瀉(たくしゃ)と呼ばれ、利尿効果などのある漢方薬として利用される』。『北日本や東アジア、中央アジアの湖沼やため池などに生息する。西日本にも見られるが、栽培個体が逸出したものであるとされる』。『多年草で、湿生植物、または抽水植物として生育する』。『短い茎から楕円形の葉を根生し、葉の長さは』五~二十センチメートル、花期は七~九月で、『花茎は最大』『一メートル二十センチメートル『程度になる』。『花茎は盛んに分枝し、花柄の先に丸い』三『弁の花をつける。花の色は白かうすい桃色、雄しべは』六『本、雌しべは多数形成する』。『地中に形成した塊茎で越冬する』。『塊茎を乾燥させたものには抗腎炎作用があり、沢瀉の名で漢方薬として用いられる』。『また』、『塊茎には、アレルギー反応を抑制する機能を持つ可能性も示唆されている』。『他方で、水田などで繁殖すると、水田雑草として扱われることがある』とある。而して、オモダカは先に見た通り、現在の中文名は「野慈姑」(リンク先は当該「維基文庫」。次も同じ)であるのに対し、この「サジオモダカ」の中文名は「東方澤瀉」なのである。]

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