大和本草諸品圖上 山芹 (セリ・ヤマゼリ)
山芹
可ㇾ爲ㇾ蔬ト味佳シ水ニモ陸ニモ
宜シ國俗山芹ヲ人參ト云
實ハ零餘子ノ如シ根甘シ
テ如二胡蘿蔔ノ一
○やぶちゃんの書き下し文
山芹〔(やまぜり)〕
蔬〔(そ)〕と爲すべし。味、佳し。水にも、陸にも、宜〔(よろ)〕し。國俗、「山芹」を「人參」と云ふ。實〔(み)〕は零餘子〔(むかご)〕のごとし。根、甘くして、胡蘿蔔〔(コラフ/にんじん)〕のごとし。
[やぶちゃん注:国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。ここでは一緒くたにしているが、まずは「水」辺の日本原産である、
双子葉植物綱セリ目セリ科セリ属セリ Oenanthe javanica
そして、「陸」と「水」辺の、
セリ科ヤマゼリ属ヤマゼリ Ostericum sieboldii
である。後者も「大和本草卷之五 草之一 蔬菜類 芹(せり) (セリ)」の後半で出ている。有毒植物に似ているものが多いので、必ず、リンク先の私の注を参照のこと。
「蔬」食用の野菜。
「零餘子」植物の栄養繁殖器官の一つで、脇芽が養分を貯えて肥大化したものを指す。主として地上部に生じるものを指し、葉腋や花序に形成され、離脱後、新たな植物体となる。葉が肉質となることによって形成される鱗芽と、茎が肥大化して形成された肉芽とに分けられ、前者はオニユリ(単子葉植物綱ユリ目ユリ科ユリ属オニユリ Lilium lancifolium )など、後者はヤマノイモ科(単子葉植物綱ヤマノイモ目ヤマノイモ科 Dioscoreaceae)などで見られる。両者の働きは似ているが、形態的には大きく異なり、前者は小さな球根のような形で、後者は小粒の芋の形になる。孰れにしても、根茎の形になるとは言える。ヤマノイモ(ヤマノイモ科ヤマノイモ属ヤマノイモ Dioscorea japonica )などの栽培に利用され、食材として単に「むかご」と呼ぶ場合は、一般にはヤマノイモ・ナガイモ(ヤマノイモ属ナガイモ Dioscorea polystachya )などの山芋類の「むかご」を指す。灰色で球形から楕円形、表面に少数の突起があり、葉腋につく。塩茹でする、煎る、米と一緒に炊き込むなどの調理法がある以上は当該ウィキに拠った)。私の大好物である。但し、無論、セリの実は「むかご」ではないし、私自身、食べたことはない。今度、食べてみよう。
「胡蘿蔔」セリ科ニンジン属ニンジン(ノラニンジン)亜種ニンジン Daucus carota subsp. sativus )のこと。中国での呼び方で、胡国(西域)から渡来した蘿蔔(双子葉植物綱アブラナ目アブラナ科ダイコン属ダイコン Raphanus sativus var. hortensis の漢名)の意。「こらふく」とも読む。]
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