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2021/05/04

大和本草附錄巻之二 介類 淡菜 (イガイ)

 

淡菜 ハ海水㴱處ニアリ蜑婦カヅキテ取煮テ食シ

或煮テ脯トス又糟ニツケ麹ニ藏ムルハ生肉ヲ用ユ

是井ガイナリ既ニ本編ニ記ス

○やぶちゃんの書き下し文

淡菜〔(たんさい)〕は海水〔の〕㴱〔(ふか)〕き處にあり。蜑婦(かづきのあま)、かづきて、取る。煮て食し、或いは、煮て、脯(ほしもの)とす。又、糟〔(さけかす)〕につけ、麹(かうじ)に藏〔(をさ)〕むるは、生肉〔(なまにく)〕を用ゆ。是れ、「ゐがい」なり。既に本編に記す。

[やぶちゃん注:斧足綱翼形亜綱イガイ(貽貝)目イガイ科イガイ属イガイ Mytilus coruscus「大和本草卷之十四 水蟲 介類  淡菜(イガイ)」をまず参照されたい。「淡菜」はイガイの異名で辞書にも載る。東アジアの浅海岩礁に広く棲息する。外見はお馴染みの「ムール貝」、同属の外来種ですっかり定着してしまった(当初はバラスト由来で東京湾などで爆発的に繁殖したが、近年のイタリアン料理の一般化で漁業者が人為的移入して養殖を始め、全国に播種されてしまった)ムラサキイガイ Mytilus galloprovincialis に似ているが、イガイは東アジア沿岸に広く分布する在来種で、殻長十二~十五センチメートル、殻幅六センチメートルに達し、ムラサキイガイ(大型個体では殻長十センチメートルを超えるが、通常の個体は五センチメートル前後が殆んどである)よりも大型になる。外洋に面した潮間帯から水深二十メートルほどまでの岩礁域に棲息する。異名が多く、しかも中国での古名である「東海婦人」を筆頭に、腹側の殻頂附近から岩に附着するための黒い足糸(そくし)が出て陰毛に類似し、軟体部が、これまた、女性生殖器にそっくりであるため、本邦でも古くから「ニタリガイ」(似たり貝)「ヒメガイ」「ヨシワラガイ」「シュウリガイ」(これも恐らくはそうしたエロチックな意味が語源であると考えているが、未だ語源に行き当たらないでいる。識者の御教授を乞う)「セトガイ」(瀬戸貝。これも私は「ほと」を「せと」に喩えたものと考えている)の他、ズバリ、禁断の四文字や「ボボガイ」などと呼ぶ地方もある。私の『毛利梅園「梅園介譜」 東海夫人(イガイ)』、及び、『武蔵石寿「目八譜」の「東開婦人ホヤ粘着ノモノ」 ――真正の学術画像が頗るポルノグラフィとなる語(こと)――』などの図や私の注も参照されたい。というよりも――後者の絵は――もう間違いなく――確信犯――である。見られたい。本邦では実は古くから食用とされ、縄文の貝塚遺跡からもイガイ科 Mytilidae の貝殻が見つかっており、「養老律令」(天宝宝字元(七五七)年施行)の注釈書「令義解」(りょうぎのげ 天長一〇(八三三)年奉献)にも「貽貝後折(いかひのしりをり)」(イガイの殻の尻を割り穿って、貝のまま乾したものか)という食品が載り、「延喜式」(康保四(九六七)年施行)にも三河国と若狭国から「貽貝鮓」(いがひずし:イガイを発酵させた馴れ鮨)を献じたという記載がある。「奈良文化財研究所」公式サイト内の「木簡庫」のこちらで、当該の文字の記された木簡を見ることが出来る。しかし、近代以降は食用需要が減り、イガイそのものも存在を知らない一般人も増えた。そこにムラサキイガイの派手なデビューが起こり、逆にもともとの真正のイガイに少しばかり、スポット・ライトが当たったという、やや不幸な東海婦人ではあったのである。

「㴱」「深」の異体字。

「蜑婦(かづきのあま)」「かづく」は「潛(かづ)く」で「水中に潜る」の意。

「脯(ほしもの)」干物。]

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