大和本草卷之八 草之四 水草類 小蓮花 (ヒツジグサ)
【和品】
小蓮花 小草也葉ハ水葵ノ如ク花ノ大ハ小梅花ノ如
ク秋ノ末白花ヲ開ク可愛
○やぶちゃんの書き下し文
【和品】
小蓮花(これんげ) 小〔さき〕草なり。葉は水葵のごとく、花の大〔きさ〕は、小〔さき〕梅花のごとく、秋の末、白〔き〕花を開く。愛すべし。
[やぶちゃん注:これはちょっと困った。まず、この「小蓮花」は現行では所謂、我々が「睡蓮」と呼んでいる、
双子葉植物綱スイレン目スイレン科スイレン属 Nymphaea 亜属 Chamaenymphaea 節ヒツジグサ Nymphaea tetragona
の異名である。しかも本邦にはこのヒツジグサ一種しかスイレン属は自生しないのである。辞書に高山植物などとあったので、別種で「コレンゲ」なるものがいるかと思って調べたが、んなものは、ない。『大和本草卷之八 草之四 水草類 睡蓮 (ヒツジグサ〈スイレンという標準和名の花は存在しない。我々が「スイレン」と呼んでいるのは「ヒツジグサ」である〉)』を見られたいが、どうも気に入らないのは、益軒先生お得意の相似表現なんである。水面に円形の切れ込みの入った葉を浮かべるヒツジグサと、抽水植物で茎は横に這う根茎となって斜上し、そこに葉が水上空中に束生する心臓型の「水葵」単子葉植物綱ツユクサ目ミズアオイ科ミズアオイ属ミズアオイ Monochoria korsakowii (「大和本草卷之八 草之四 水草類 浮薔(なぎ) (ミズアオイ)」参照)の葉は、全然、似てないからなんである! しかし、ヒツジグサ以外には私には考えられない。他種があるとなら、御教授を乞うものである。]
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