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2021/05/23

大和本草卷之八 草之四 水草類 菅 (スゲ)

 

【外】

菅 本邦昔ヨリ菅ノ字ヲスケトヨメリスケハ水草葉ニカト

アリテ香附子ノ葉ノ如ニ乄長シ笠ニヌフ近江伊勢多ク水

田ニウヘテ利トス他州ニモ多クウフ詩ノ陳風ニ曰東門

之池可以漚菅朱子傳曰菅葉似茅而能滑澤莖有

白粉柔韌宜爲索也今按スケノ類多シ水澤ニ生ス

○やぶちゃんの書き下し文

【外】

菅 本邦、昔より、「菅」の字を「すげ」とよめり。「すげ」は水草。葉に、「かど」ありて、「香附子〔(かうぶし)〕」の葉のごとくにして、長し。笠に、ぬふ。近江・伊勢、多く、水田にうへて、利とす。他州にも、多く、うふ。「詩」の「陳風」に曰はく、『東門の池 以つて菅を漚〔(ひた)〕すべし』〔と〕。「朱子傳」に曰はく、『菅は、葉、茅〔(ちがや)〕に似て、能く滑澤〔たり〕。莖に白〔き〕粉、有り。柔〔かく〕韌〔(しなや)かにして〕、宜しく索〔(なは)〕と爲すべし。』〔と〕。今、按ずるに、「すげ」の類、多し。水澤に生ず。

[やぶちゃん注:単子葉植物綱イネ目カヤツリグサ科スゲ属 Carex の多様なスゲ類。ウィキの「スゲ属」によれば(下線太字は私が附した)、『身近なものも多いが、非常に種類が多く、同定が困難なことでも有名である』。『スゲ属の植物は、どれもほぼ共通の形態的特徴を備えている』。『大部分が多年生の草本で、多くは花時を』除いて、『茎は短くて立ち上がらず、たいていは細長い根出葉を多数つける。地下茎を横に這わせるものは、広がったまばらな集団になり、そうでないものは、まとまった株立ちになるものが多い。葉の基部は鞘になって茎を抱く。鞘が古くなると細かく裂けて糸状の網目になる場合があり、これを糸網(しもう)という』。『多くのものでは花茎は葉の間から長く伸び、その先に小穂をつける。小穂には柄がある場合とない場合があり、いずれにしてもその基部に包があり、包の基部は鞘になるものが多い。小穂は穂状に配列するものが多い。茎の先端に小穂を』一『つだけ持つものもある。アブラシバ』(アブラシバ(油芝)節アブラシバ Carex satsumensis )『などは、多数の分枝を持つ円錐花序を形成する。この仲間は、スゲ属の中では原始的なものと見なされている。また、少数ながら、花茎が伸びず、葉の根元で開花する種も知られている』。『スゲ属の花は雄花と雌花が別になっている。雄花は鱗片一枚に雄しべが包まれているだけのもの。雌花は、雌しべが果包(かほう)という袋に包まれているのが特徴で、その外側に一枚の鱗片がある』。『小穂は、軸の回りに花と鱗片が螺旋状に配列したものである。短ければ球形に、長ければ棒状、あるいはひも状になる。花茎には普通は複数の小穂がつくので、その先端のものを頂小穂(ちょうしょうすい)、それより下から横に出るものを側小穂(そくしょうすい)という』。『雄花と雌花はそれぞれまとまって着く。それぞれが独立した小穂となるものが多い。一番多いのは雄花からなる雄小穂と雌花からなる雌小穂が別々にあるもので、花茎の先端に一個の雄小穂が、その下方に数個の雌小穂がつく型が普通である。雄小穂を複数持つものもあるが、種類は少ない』。『一つの小穂に両方の花が着くものもある。先端に雄花が並び、基部側に雌花が並ぶ場合を雄雌性(ゆうしせい)、逆に基部に雄花が着くものを雌雄性(しゆうせい)という』。『その他、例は少ないが雌雄別株のものもある』。『このような小穂の配置は重要な分類上の特徴となる。ほかに、小穂の形や、雌花の鱗片、果包や果実の特徴が重視されるので、同定は果実が熟したものでなければできない場合がある』。『果胞は壺状の構造で、先端に口が開いている。雌しべはその底に着いていて、果胞の口から柱頭だけを伸ばす。受粉すれば果実は果胞の中で生長し、成熟したときには果胞はその基部で切り離され、果実を中に含んで散布される。果胞の口の部分が突き出した形になっている場合、それを嘴(くちばし)という。果胞は、その位置からは花被に由来するもののようにも見えるが、一部に果胞の内側から枝が伸びて花序を形成するものがあるので、花序の基部に生じる苞に由来するものと考えられている』。『果胞は普通、膜状で果実にほぼ接する形になるが、湿地性のゴウソ(和名由来不詳:アゼスゲ節ゴウソ Carex maximowiczii var. maximowiczii やミヤマシラスゲ(ミヤマシラスゲ節ミヤマシラスゲ Carex conifetiflora 『では大きく膨らみ、海岸性のシオクグ(シオクグ節シオクグ Carex scabrifolia 『やコウボウシバ(シオクグ節コウボウシバ Carex pumila 『ではコルク質の分厚いものとなっている。これらは流水や海水による分散への適応かも知れない』。『草原、森林、海岸その他、さまざまな環境に生息する種がある。湿ったところに生育するものが多く、湿地や渓流沿いに集中する傾向がある』。『湿原では、スゲ類が優占する草原になることがある。北海道など寒冷地の湿原では、スゲ類の大株が湿地のあちこちにかたまりを作り、盛り上がって見えるのを谷地坊主(やちぼうず)と呼ぶ。水中に根を張って葉を水面に突き出す抽水性の種もあるが、真に水草的なものはほとんどない(☜)。『海岸では、砂浜にはコウボウムギ(コウボウムギ節コウボウムギ Carex kobomugi )が、塩性湿地にはシオクグなどが密生した群落を形成する』。『海外では、中央アジアなど、乾燥した草原でスゲ類の優占する草原がある』。『カサスゲ(笠菅:ミヤマシラスゲ節カサスゲ Carex dispalata )やカンスゲ(寒菅:ヌカスゲ節カンスゲ Carex morrowii などの大型種の葉は、古くは笠(菅笠)や蓑などに用いられた。特にカサスゲはそのために栽培された。現在でも、注連縄など特殊用途のために栽培されている地域もある(☜)。『また、庭園の緑化や山野草として栽培される例もある。カンスゲやタガネソウ』(タガネソウ(鏨草)節タガネソウ Carex siderosticta )『の斑入りなどは鑑賞価値も高い。果胞が黄色く色づく小型の外国産種が販売されている例もある』。『草原を形成する種もあるが、緑化や牧草として積極的に利用される例はない。そのため、同様な姿の草であるイネ科』Poaceae 『植物に比べると、帰化植物の種が格段に少ない。ただし、近年、そのような目的で持ち込まれた種子に混じる形での帰化種が若干報告されている』。『なお、スゲという名の語源については、牧野がカンスゲの項でやや詳しく記している』。『それによると』、『清浄を意味する語である『すが』からの轉音という説と、住居の敷物を「すがたたみ」と言い、その材料に用いたことから由来したという説が従来はあるとのことで、しかし彼はいずれも根拠薄弱と思えるとして、葉が束になって生じ、まるで巣のように見え、またその葉が細いことからこれを毛に見立てたもの、つまり巣毛』(すげ)『ではないか、としている』とある。引用先を見られたい。その種の多さに度肝を抜かれる。

「香附子〔(かうぶし)〕」単子葉植物綱イネ目カヤツリグサ属ハマスゲ Cyperus rotundus の根茎の生薬名。薬草としては古くからよく知られ、本邦でも正倉院の薬物の中からも見つかっている。「浜菅」であるが、本種はスゲ属ではないので注意が必要。本種は乾燥に強く、陽射しの強い乾いた地にもよく成育する。砂浜にも出現し、名前もこれによるが、実際には雑草として庭や道端で見かけることの方が遙かに多い。線香花火のようなあれである。

「笠に、ぬふ。近江・伊勢、多く、水田にうへて、利とす。他州にも、多く、うふ」前に挙げたカサスゲ(当該ウィキによれば、『菅笠などの材料として利用されてきた』。『北海道から九州までの平地に分布し、湿地や池の浅いところに生育し』、『高さは』一メートル『程にもなる。根は水中の泥に伸び、太い地下茎を横にはわせて大群落を作る。葉は細長く、やや立ち気味に伸びる。根元の鞘は分解して糸網になる』。『晩春から初夏にかけて、花茎を伸して花をつける。花茎は真っすぐに立ち、その先端には雄小穂がつく。雄小穂は灰褐色で細長い棒状。時々その基部に第二の雄小穂をつけることがある。雄小穂の下の方には数個の雌小穂がある。雌小穂は細長く、柄はほとんどなく、立ち上がるか、やや先が垂れる。果胞は緑色で先がとがった嘴となり、その先端は外側に反りかえる。鱗片は果胞よりずっと小さく、濃い褐色なので、果胞の根元に小さく斑点があるようにも見える。果胞は枯れると』、『褐色になる』。『かつては水田やその間に走る水路、あるいはため池の周辺などにごく普通に生え、様々な民具などに利用された』。『菅笠や蓑、特に笠はこの種で作られた場合が多い。カサスゲ(笠菅)の名もそこに由来する。また、地域によってはこの植物で注連縄を作る』。『これらの用途のために』、『とくにカサスゲを専用に育てるための水田が確保された場合もある。近年はこのような民具が使われる機会が少なく、需要が少なくなり、また、水路や水田の改修によって生息環境も減少し、少なくなっている』)や、カンスゲ(当該ウィキによれば、『蓑を作るのに用いられたこともあ』り、『山間部では身近に生育する大型のスゲの代表的なものとして、さまざまに利用されてきた』。『幅広くやや厚みのある固い葉をしており、常緑性で冬も葉をつけている。寒菅の名もこれに由来するものである。多数の根出葉をそれぞれやや斜め上に伸ばす。葉の縁はざらつく。株は大きくなり』、『高さ』三十センチメートル『以上にもなる。葉の根元は黒紫色になる。根元から匍匐茎を出す』。『花穂は四月頃から出る』。一『つの株から』、『多数が出る。穂は葉より高くは伸びず、葉の間から姿を見せる。先端には褐色で細長い紡錘形の雄小穂がつく。それより下の花茎からは数個の雌小穂が出る。雌小穂は細長い棒状で、下の方のものにははっきりした柄があり、いずれも上を向いてやや立つ。雌小穂の基部には苞があるが、鞘の先の葉状部は針状になっている』。『雌小穂は、鱗片、果胞共に淡い色なので、黄色っぽく、あるいは白っぽく見える。果胞はとがった嘴があって、そりかえる。穂全体としては、嘴が外に向いてとがるので、刺々した感じになる』。『山間の谷間に多く、特に水辺で多くみられ、多い場所では一面に群生する。本州の中部太平洋側から中国地方、四国、九州に分布する。変種のホソバカンスゲ』(Carex morrowii var. temnolepis )は『日本海側に分布し、葉が細い』。『かつては刈り取って蓑や傘を作るのに用いた。また、斑入り品を栽培することもある』)を用いた。

『「詩」の「陳風」に曰はく、『東門の池 以つて菅を漚〔(ひた)〕すべし』〔と〕』「詩経」の「陳風」の「東門之池」。

   *

 東門之池

東門之池

可以漚麻

彼美淑姬

可與晤歌

東門之池

可以漚紵

彼美淑姬

可與晤語

東門之池

可以漚菅

彼美淑姬

可與晤言

   *

 東門の池

東門の池は

以つて麻を漚(ひた)すべし

彼(か)の美なる淑姬(しゆくき)は

與(とも)に晤歌(ごか)すべし

東門の池は

以つて紵(ちよ)を漚すべし

彼の美なる淑姬は

與に晤語(ごご)すべし

東門の池は

以つて菅を漚すべし

彼の美なる淑姫は

與に晤言すべし

   *

「陳」は現在の河南省南部にあったとされる国。但し、べっちゃん氏のブログ「静かなる細き声」の「詩経陳風」では、ブログ主は分析されて、『陳風は殷(商)の遺民が建てたとされる国、宋の祭事詩で』あって、「陳風」の冒頭に出てくる詩篇「宛丘(ゑんきう)」の『宛丘は新鄭の宛陵と考えられ』、『鄭は殷の都の上に町を作』ったとある。「漚(ひた)す」のは、皮を剝いで水に浸して繊維を得ることを指す。「淑姬」「姫姓の妹娘」は「姬」は元来は周の最も高貴な貴族の姓であった。「晤」は「迎える」或いは「ともに」の意。「紵」苧麻(ちょま)。双子葉植物綱イラクサ目イラクサ科カラムシ属ナンバンカラムシ変種カラムシ Boehmeria nivea var. nipononivea 。茎の皮から採れる靭皮繊維は麻などと同じく非常に丈夫で、績(う)んで取り出した繊維を、紡いで糸とするほか、糾綯(あざな)って紐や縄にし、また、荒く組んで網や漁網に用い、経(たていと)と緯(よこいと)を機(お)って布にすれば、衣類や紙としても幅広く利用できる。分布域では自生種のほかに六千年以前から人の手で栽培されてきた歴史がある。

「朱子傳」南宋の儒学者朱熹(一一三〇年~一二〇〇年)の「詩経」の注釈書「詩集傳」の「滑澤」滑らかで光沢(つや)があること。

『「すげ」の類、多し。水澤に生ず』誤り。既に引用で見た通りで、必ずしも水辺・湿地のみでなく、広く激しく乾燥した内陸などにも繁茂する種の方が多い。

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