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2021/05/06

大和本草卷之八 草之四 水草類 芰實(ひし) (ヒシ)

 

芰實 一名蔆又作菱水中ニ生ス實四角三角兩角ア

リ果トス生ニテモ蒸テモ食フ飢ヲ助ク河内州茨田池

ニ多シ花黃白色八九月實ヲトル性不好トイヘ𪜈凶

年ニ民ノ飢ヲ救フ古人コレヲ用テ飢饉ヲ救シ事合璧

事類ニ多ク引ケリ○ヒシノカラヲアツメヤキテ香爐ノ

灰トスヨク火ヲタモツ

○やぶちゃんの書き下し文

芰實(ひし) 一名「蔆」。又、「菱」と作(な)す。水中に生ず。實は四角三角、兩角〔(りやうかく)〕あり。果とす。生〔(なま)〕にても、蒸しても、食ふ。飢えを助く。河内の州〔(くに)〕「茨田(まんだ)の池」に多し。花、黃白色。八、九月、實を、とる。性、好からずといへども、凶年に民の飢えを救ふ。古人、これを用いて、飢饉を救〔(きう)〕し事、「合璧事類〔(がつぺきじるい)〕」に多く引けり。

○「ひし」のからを、あつめ、やきて、香爐の灰とす。よく、火を、たもつ。

[やぶちゃん注:双子葉植物綱フトモモ目ミソハギ(禊萩)科ヒシ属ヒシ Trapa japonica 。一年草の水草で、葉が水面に浮く浮葉植物(後述引用する通り、完全な「浮草」ではないので注意)である。本邦には同属のヒメビシ Trapa incisa、及び変種オニビシ Trapa natans var. japonica も植生する。ウィキの「ヒシ」より引いておく。『春、前年に水底に沈んだ種子から発芽し、根をおろし茎が水中で長く伸びはじめ、水面に向かって伸びる』。『よく枝分かれして、茎からは節ごとに水中根を出し(これは葉が変化したものともいわれる)、水面で葉を叢生する』。『葉は互生で、茎の先端に集まってつき、三角状の菱形で水面に放射状に広がり、一見すると輪生状に広がるように見える』。『上部の葉縁に三角状のぎざぎざがある』。『葉柄の中央部はふくらみがあって、内部がスポンジ状の浮きとなる』。『その点でホテイアオイ』(ツユクサ目ミズアオイ科ホテイアオイ属ホテイアオイ Eichhornia crassipes )『に似るが、水面から葉を持ち上げることはない。また、完全な浮き草ではなく、長い茎が池の底に続いている』。『花は両性花で、夏から秋の』七 ~十月に『かけて、葉のわきから伸びた花柄が水面に顔を出して、花径約』一センチメートルの『白い花が咲く』。『萼(がく)、花弁、雄蕊は各』四個。『花が終わると、胚珠は』二『個あるが一方だけが発育し大きな種子となる。胚乳はなく、子葉の一方だけが大きくなってデンプンを蓄積し食用になる。果実を横から見ると、菱形で両端に逆向きの』二『本の鋭い刺(とげ。がくに由来)がある』。『秋に熟した果実は水底に沈んで冬を越す』。『菱形とはヒシにちなむ名だが』、葉の形に由来する、実の形に由来する、という両説があって、はっきりしない』。平地の溜め池、『沼などに多く、水面を埋め尽くす。日本では北海道、本州、四国、九州の全国各地のほか、朝鮮半島、中国、台湾、ロシアのウスリー川沿岸地域などにも分布する』。『ヒシの種子にはでん粉』が約五十二%も含まれており、茹でるか、蒸して食べると、『クリのような味がする。アイヌ民族はヒシの実を「ペカンペ」と呼び、湖畔のコタンの住民にとっては重要な食糧とされていた』とある。

 さても。私は私の年代では珍しいヒシに親しんだ経験のある人間で、ヒシを偏愛する、今や、化石のような人種である。鹿児島出身の母の実家は大隅半島中央の岩川というところにあったが、小学校二年生の時に初めて訪ねた折り、近くの山陰の池に平舟を浮かべて、鮮やかな緑色のヒシの実をいっぱい採って、茹でて食べた思い出がある。それから三十年の後、妻や友人とタイに旅行し、スコータイの王朝遺跡を訪れた際、路辺で婦人が黒焼きにしたヒシの実を小さな竹籠に入れて売っていた。それは棘が左右水平方向にほぼ完全に開いたもので実の湾曲が殆んどない如何にも美しいのフォルムであった(グーグル画像検索「ヒシの実」はこちら)。まだ二十歳の美しい優しいガイドのチップチャン(タイ語で「蝶」の意)に「これは日本語ではヒシと言います」と教えると、「ヒシ」という名をノートに記し、何を思ったものか、そのヒシの実一籠を自分のお金で買い求め、私にプレゼントしてくれた。それから、また、三十年が経った……そろそろ……また……ヒシに出逢えそうな予感がするのである……

「芰實(ひし)」「本草綱目」の巻三十三「果之五」に、「芰實」を項目として載せ(「芰」の音は「キ」)、これは明らかにヒシを指している。そこには「水栗」「沙角」の異名を記す。

「實は四角三角、兩角〔(りやうかく)〕あり」非常に腑に落ちる謂い方である。見たことがない方は、こちらの画像を見られたい。

「果とす」食用の果実とする。

『河内の州〔(くに)〕「茨田(まんだ)の池」』古くはこう呼んだ。後に郡名としては茨田(まった)郡が近代まであったが、現在は地名も池も消滅しており、原型の「茨田(まんだ)の池」というのがどこにあったかは定かでない。古代の河内国茨田郡にあった池が元で、東方の生駒山系北部に発する諸河川を水源としたと見られている。北西を流れる淀川が氾濫すると、淀川左岸の地が浸水したことから、これを防ぐために茨田堤が築かれたが、この築造に関する説話が「日本書紀」の仁徳紀に見え、これは大和朝廷が河内平野北部の開発に積極的であったことを物語る。この事業により、耕地化が可能となったのことから、大和盆地における溜池灌漑の経験をもとに、茨田池の水利用によって「茨田屯倉(まんだのみやけ)」の経営に当たったものと考えられている(以上は平凡社「世界大百科事典」の「まんだのいけ(茨田池)」の記載文に主に拠った)。「伝・茨田堤(まんだのつつみ)」(大阪府指定史跡)がここにある(グーグル・マップ・データ)。

「合璧事類」「古今合璧事類備要」(ここんがっぺきじるいびよう)。宋の虞載の編になる膨大な類書(百科事典)。]

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