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2021/06/11

大和本草諸品圖下 マヽカリ・サヾヱワリ・フナシトギ・ワカサギ (サッパ・ネコザメ・コバンザメ・ワカサギ)

 

8

 

[やぶちゃん注:国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミングした。]

 

マヽカリ

是コノシロノ

類也ウロコ

コノシロヨリ

小也味ト

臭ハ似

タリ海魚

ナリ

○やぶちゃんの書き下し文

まゝかり

是れ、「このしろ」の類〔(るゐ)〕なり。うろこ、「このしろ」より、小なり。味と臭〔(にほ)ひ〕は似たり。海魚なり。

――――――――――――――――――

サヾヱワリ

海魚フカノ

類モダマニモ

味相似テ

ヨシ形與

說ハ見ハス

本書

○やぶちゃんの書き下し文

さゞゑわり

海魚「ふか」の類。「もだま」にも、味、相ひ似て、よし。形、諸魚と異れり。說は本書に見〔(あら)〕はす。

――――――――――――――――――

フナシトギ

[やぶちゃん注:以下、上・下図のキャプション。右から左書き。]

   仰 圖       俯 圖

――――――――――――――――――

ワカサギ

形ハエニ

目口ハエト

味美

春最好其

香ハ鰷ニ

似テヨシ長五

六寸河魚也

○やぶちゃんの書き下し文

わかさぎ

形、「はえ」に似て、目・口、「はえ」と異れり。味、美〔(よ)〕し。冬・春、最も好し。其の香〔(かをり)〕は鰷〔(あゆ)〕に似て、よし。長さ、五、六寸。河魚なり。

[やぶちゃん注:「マヽカリ」この「飯借(ままか)り」の異名(加工品)でよく知られるニシン目ニシン亜目ニシン科ニシン亜科サッパ属サッパ Sardinella zunasi

である。本巻に立項されていない。当該ウィキによれば、酢漬や「ママカリ寿司」などの「ママカリ」料理(「あまりの美味さに飯が進んでしまい、家で炊いた分が足りなくなって、思わず、隣家に飯を借りに行くほどの旨さ」に由来する)は岡山県の郷土料理として良く知られる。別に「ハラカタ」の異名があるが、これは、『腹部の鱗が硬く発達していることに由来する』。『全長は』十~二十『センチメートルほどで、体は木の葉のように左右に平たい。背中よりも腹が下に出ている。体色は背中側は青緑色、体側から腹側までは銀白色をしている。他のニシン目魚類に比べ、鱗が硬く発達していて落ちにくい』。鮨の「シンコ」「コハダ」で知られる『コノシロ』(ニシン科コノシロ亜科コノシロ属コノシロ Konosirus punctatus )『とは外見や生息域が似ているが、体の側面に黒い点線がないこと、背びれの最後の軟条が長く伸びないことなどで区別できる。また、ヒラ』(ニシン科ヒラ属ヒラ Ilisha elongata )『という魚も』棲息域ともに、『よく似ているが、こちらは成魚の全長が』四十『センチメートル以上と』、『より大型になる』。『東北地方以南から黄海、東シナ海の沿岸域に分布し、内湾や河口の汽水域に群れを作って生息する。マイワシやニシンのような大規模な回遊は行わず、一生を通して生息域を大きく変えることはない。プランクトン食性で、プランクトンを水ごと吸いこみ、鰓耙(さいは)で濾しとって食べる。繁殖期は初夏で、直径』二『ミリメートルほどの浮遊卵を産卵する。冬にはやや深場へ移る』。『刺し網や投網などの沿岸漁業で漁獲される。また晩夏から秋にかけて防波堤のさびき釣りの好対象である。釣りあげたサッパには、後頭部あたりの体表にフナムシのような虫が寄生していることがある。これはウオノエ科』Cymothoidae(「うおのえ」は「魚(うを)の餌(ゑ)」。魚類の口腔内に好んで寄生する巨大な種がおり、それを餌と誤認した和名)『の甲殻類で、本種に好んで寄生するサッパヤドリムシ』節足動物門甲殻亜門軟甲綱等脚目ウオノエ亜目ウオノエ上科ウオノエ科ウオノギンカ属サッパヤドリムシ Anilocra clupei )『である。外見は不気味であるが、人間には無害である』。『日本では、おもに瀬戸内海沿岸や有明海沿岸で食用にされる』。『小骨が多いが』、『淡白な味で、塩焼き』、『から揚げ、酢締め、刺身などで食べられる。中でも酢締めは小骨も気にならず、美味な惣菜や寿司ネタとなるのでよく知られた食べ方である。また、三枚おろしにして皮を剥いだ刺身は身が締まっており、さっぱりとした味である。サッパの名は、淡白でさっぱりとした味に由来する。サッパの酢締めは、かつては「光もの」として江戸前寿司でもネタにされたが、戦後になって使われなくなったという』。地方名は『ママカリ(瀬戸内海沿岸地方)、ワチ(広島県・香川県)、ハラカタ(関西地方)、ハダラ(佐賀県)など』。

「サヾヱワリ」は「榮螺割」で、ネコザメ目ネコザメ科ネコザメ属ネコザメ Heterodontus japonicus の異名としてよく知られる。立項はないが、大和本草卷之十三 魚之下 フカ (サメ類(一部に誤りを含む))で、益軒は破格の詳述と高評価をしている。引用する。

   *

○「さゞいわり」と云ふ魚あり。「ふか」の類なり。頭、大に、両目の上のきはに、たてに、かど各々、すぢありて、首、方(けた)なり。細き齒、多し。腮〔(あぎと)〕は、よこに五つ、きれたり。両鼻あり。背に鰭に、各々、大なる刺ありて、尖れり。口は腮の下にあり。両わきに大なるひれあり。腰にも小なるひれあり。尾は小さき岐(また)あり。凡そ常の魚の形にかはれり。皮に「さめ」あり。色、斑〔(まだら)〕なり。薄く切り、酒の糟を加へ、羹〔(あつもの)〕として食す。又、指身〔(さしみ)〕にして、最も、よし。「つのじぶか」に、まされり。

   *

この食味の好評はすこぶる特異点で、現在では食用サメとして挙げられることはない(私も食べたことはない)。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページに料理が載るので参照されたい(そこでも漁師の評判は劣悪ではある)。なお、ぼうずコンニャク氏はそこで「和漢三才図会」の記載について、『「栄螺破魚」があるがネコザメに当てはまらない。西日本でのネコザメの呼び名を別の魚に誤って当てたのかも』と言っておられるのにはちょっと疑問がある。「和漢三才圖會 卷第四十九 魚類 江海有鱗魚」(リンク先は私の古い電子化注)のそれは以下である(一部の気に入らない部分に手を加えた)。

   *

さゞいわり  正字、未だ詳らかならず。

榮螺破魚

△按ずるに榮螺破魚、形・色、藻伏魚に似て、頭、圓く肥え、脊中沙有り。其の齒、河豚(ふくとう)魚のごとし。齒、能く榮螺を咬み食ふ。故に之を名づく。春、西海より出づ。肉の味、淡甘。筑前に多く有り。

[やぶちゃん注:現在、「サザエワリ」の異名を持つ種としては、軟骨魚綱板鰓亜綱ネズミザメ上目ネコザメ目ネコザメ科ネコザメ Heterodontus japonicus (私がまず思い浮かべるの断然こっちである。その理由は以下にも記す「和漢三才圖會 巻第五十一 魚類 江海無鱗魚」の「鱣」の項にある「猫鱣」を参照されたい)及び軟骨魚綱板鰓亜綱ネズミザメ上目テンジクザメ目オオセ科オオセ Orectolobus japonicus である。頭部が丸く肥えているという表現からは、圧倒的に前者ネコザメが一致する(オオセは魚体全体が扁平で、頭部も平たく潰れて横に広い)。但し、ここには食用に供するの記載があり、そうした食用度と言う点では、後者のオオセの方が、現在でも複数の地方で食用とされていることから、オオセに軍配が上がりそうだが、ネコザメも「一日一魚」というサイトの「ネコザメ」の項を見ると(リンク連絡の義務を明示しているのでリンクは張らない)、『淡白で刺身に向いている』らしいとし、『川口祐二さんの「サメを食った話」によると、前志摩地方では今でも祝いの席に「さめなます」は欠かせないという。大きな釜に湯を煮立てておいて、そこに生きたままのサメをザブンと入れ、皮をむき、身をうすく細かく切ってさらに湯引きをし、氷水で締め食べるようである。サメの洗いとでもいおうか、湯引きというか、もともと「なます」とは魚の肉を細かく切ったものをいうそうであるから、さめなますは文字通り、サメの刺身である。このさめなますはネコザメに限るという』と記すので、ネコザメに同定したいのであるが、実は良安は「和漢三才圖會 巻第五十一 魚類 江海無鱗魚」の「鱣」の項に「猫鱣」の柱を立てて「大いさ、三~四尺。頭の形、猫に似、扁たく、身、虎斑〔(とらふ)〕の文有り。齒有り。味、佳からず。」と記すことになる(又は先に記した)。それでも、私は「圓く肥え、脊中沙有り」という語が、明白な軟骨魚のネコザメを示すように思えてならないのである。良安は全ての魚種について実見している訳ではなく、聞書が多いと思われる(でなければ稀に見られる「私も見た」風の記述はしないと思われる)。但し、では、

 軟骨魚類のネコザメ=「藻伏魚」=スズキ目ベラ科のコブダイ(カンダイ) Semicossyphus reticulatus

の等式が成立するのかと迫られると、似ていないと引かざるを得ないのである(共通するのは生息場所ぐらいか)。やはり「藻伏魚」は再考の余地ありか?

 「河豚魚」は硬骨魚綱フグ目 Tetraodontiformes フグ科 Tetraodontidae。但し、ネコザメの歯は、人の大臼歯状の歯がそれぞれに癒合して石畳様になっており、噛み砕き潰す能力に特化している。フグの場合は、上下各二枚の左右の中切歯状の歯が、それぞれ吻部中央で癒合して裁断機並みの鋭さを呈しており、すっぱりと噛み切るに相応しい形状をしている。因みに、フグ目及び科の学名“Tetraodonti-” はギリシャ語由来で「四枚の歯を持つもの」の意である。]

   *

わざと、頭に配されてある、図を外した。これがぼうずコンニャクが「ネコザメではない」と一蹴した致命的な箇所なのである。図はこれだ。

 

Sazaiwari

 

確かに。たまらんわ! これは敢えて言うなら、妙な等式で示したコブダイの頭部が突出しない若魚に似ているとは言えると思うのである。口直しに、私の『毛利梅園「梅園魚譜」 ネコザメ』、或いは「栗本丹洲 魚譜 ネコザメの子 (ネコザメの幼魚)」をどうぞ! 「もだま」は恐らく「藻玉」で、ジロザメ目ドチザメ科ホシザメ属ホシザメ Mustelus manazo などに代表されるサメ類の総称(但し、益軒の場合はスマートなエイ類も含まれる)。

「フナシトギ」は条鰭綱スズキ目コバンザメ科コバンザメ属コバンザメ Echeneis naucrates

(「サメ」とつくが「鮫」とは全く無縁なので注意)である。「大和本草附錄巻之二 魚類 ふなしとぎ (コバンザメ)」で立項しているが、個人的には先般、電子化した『栗本丹洲「栗氏魚譜」より「小判鮫」 (コバンザメ)』を強くお薦めする。恐らく世界中のコバンザメの博物画では最上位にランクされるものと思われるものである。解説もいい。

「ワカサギ」条鰭綱キュウリウオ目キュウリウオ科ワカサギ属ワカサギ Hypomesus nipponensis 大和本草卷之十三 魚之上 ワカサギで立項済み。「はえ」は「はや」に同じで、複数の淡水魚の種を総称する語。さんざん注してきたので、もう言わない。「鰷〔(あゆ)〕」この字は現行では前の「はや」と読むのが一般的だが、古くは「鮎」を指すことも多かった。益軒は専ら「あゆ」と訓じているようである。本来は河川の中上流で素早い動きをする概ね流線形の淡水魚は、十把一絡げに「はや」だったものと私は推測している。]

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