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2021/06/04

大和本草卷十四 陸蟲 蝦蟆(がま/かへる) (カエル類)

 

蝦蟆 コレモ他土ニスツレハ必モトノ處ニカヘル故ニカヘルト云

王荊公字說東垣食物本草及び潛確類書ニモ本處

ニカヘル事ヲノセタリ故ニ懐土ト云カヘルノ子モ初ハ尾アリ

長乄後ハ尾ナシ○土黽ハ足ノ長キ靑カヘル也蛙モ同蝦

蟆ト一類ニ乄別ナリヨクナク又褐色ナルモアリツ子ノカヘ

ルヨリ大ナリ○土鴨ハアマカヘルト云最小ナリ色靑シ

雨フラントスレハナク木枝ニスム○中華ノ人ハ蝦蟆ヲ食ス

本草ニ見ヱタリ本邦ニモ古ハ吉野ノ河上國栖ト云邑ノ

人煮蝦蟆爲上味名曰毛瀰ト日本紀應神紀ニ記

セリ今モ關東ノ土民ハ食ト云

○やぶちゃんの書き下し文

蝦蟆(がま/かへる[やぶちゃん注:右/左のルビ。]) これも、他土にすつれば、必ず、もとの處に、かへる。故に「かへる」と云ふ。王荊公が「字說」、東垣が「食物本草」及び「潛確類書」にも、本處〔(ほんじよ)〕にかへる事を、のせたり。故に「懐土〔(くわいど)〕」と云ふ。「かへる」の子も、初めは尾あり。長じて後は尾なし。

○「土黽(〔ど〕まう)」は、足の長き「靑がへる」なり。「蛙(あ)」も同じ。「蝦蟆〔(かへる)〕」と一類にして、別なり。よく、なく。又、褐色なるも、あり。つねの「かへる」より、大なり。

○「土鴨(〔ど〕あふ)」は「あまがへる」と云ふ。最小なり。色、靑し。雨ふらんとすれば、なく。木〔の〕枝にすむ。

○中華の人は蝦蟆を食す。「本草」に見ゑたり。本邦にも古〔(いにしへ)〕は吉野の河上〔かはかみ〕、國栖(くず)と云ふ邑〔(むら)〕の人、蝦蟆を煮て、上味と爲〔し〕、名づけて「毛瀰(もみ)」と曰ふ。「日本紀」應神紀に記せり。今も關東の土民は食ふと云ふ。

[やぶちゃん注:前のヒキガエルと次のカジカガエルを除いた両生綱無尾目 Anura のカエル類の総論「和漢三才圖會卷第五十四 濕生類 蝦蟇(かへる)」の本文と私の注を参照されたい。

『王荊公が「字說」』北宋の辣腕政治家にして唐宋八大家の一人に数えられる王安石(一〇二一年~一〇八六年)が漢字の由来を述べた大著。

『東垣が「食物本草」』元の医家李東垣(りとうえん 一一八〇年~一二五一年:金元(きんげん)医学の四大家の一人。名は杲(こう)。幼時から医薬を好み、張元素(一一五一年~一二三四年)に師事し、その技術を総て得たが、富家であったため、医を職業とはせず、世人は危急以外は診て貰えず、「神医」と見做されていた。病因は外邪によるもののほかに、精神的な刺激・飲食の不摂生・生活の不規則・寒暖の不適などによる素因が内傷を引き起こすとする「内傷説」を唱えた。脾と胃を重視し、「脾胃を内傷すると、百病が生じる」との「脾胃論」を主張し、治療には脾胃を温補する方法を用いたので「温補(補土)派」とよばれた。後の朱震亨(しゅしんこう 一二八二年~一三五八年:「陽は余りがあり、陰は不足している」という立場に立ち、陰分の保養を重要視し、臨床治療では滋陰・降火の剤を用いることを主張し、「養陰(滋陰)派」と称される)と併せて「李朱医学」とも呼ばれる)の著(但し、出版は明代の一六一〇年)。但し、名を借りた後代の別人の偽作とする説もある。

「潛確類書」「潛確居類書」とも。明代の学者陳仁錫(一五八一年~一六三六年)が編纂した事典。「中國哲學書電子化計劃」の同書で検索したが、見当たらない。

「土黽(〔ど〕まう)」「黽」の字は歴史的仮名遣では音は「ばう」でなくてはおかしい(「バウ(ボウ)」。この字自体が「カエル」の一種を指すとされ、古文献によれば、「ヒキガエル」に類似するものの、水のあるところに住む種とされ、「アカガエル」ではないかと考えられている。参照したウィキの部首の「黽部」によれば(但し、かなり手を加えた)、「爾雅」の「釋魚」に「鼁𪓵(きよしう)、蟾諸(せんしよ)。水に在る者は黽(まう)。」とあり、それに対する東晋の郭璞の注には、「鼁𪓵、一名、蟾諸。蝦蟇(がま)に似て、陸地に居る。その水に在る者は黽に名づく。一名、耿黽(こうまう)、一名土鴨(どかう)。青蛙(せいあ)に似て大腹。」とある。また「鼃黽(わいばう)」で「蛙一般」を総称した、とある。アカガエルと言っても、中国産種は判らないので、無尾目 Neobatrachia 亜目アカガエル科アカガエル属 Rana とするしかない。ニホンアカガエル Rana japonica は日本固有種だからである(因みに、私の高校時代の尊敬していた生物の先生は「アカガエルは鶏肉のようにヒジョーに美味い!」としばしば仰っていた。残念ながら、ニホンアカガエルを食ったことは今までない)。しかし、ここで益軒は、この「土黽」を『足の長き「靑がへる」なり』と言っている。後肢が長い(=跳躍力が強い)、一般的に見かけるカエルと言えば、アカガエル科アカガエル亜科トノサマガエル属トノサマガエル Pelophylax nigromaculatus である。日本語の「青」江戸以前は緑系に偏った色を示すことも多かった。同種のはご存知の通り、背面が茶褐色から緑色を呈する。

『「蛙(あ)」も同じ。「蝦蟆〔(かへる)〕」と一類にして、別なり。よく、なく。又、褐色なるも、あり。つねの「かへる」より、大なり』かく、ブン投げられてしまうと、ちょっとやる気がなくなるよ、益軒先生、よぅ!

『「土鴨(〔ど〕あふ)」は「あまがへる」と云ふ。最小なり。色、靑し。雨ふらんとすれば、なく。木〔の〕枝にすむ』これはもう、カエル亜目アマガエル科アマガエル亜科アマガエル属ニホンアマガエル Hyla japonica である。但し、本種は「ニホン」を冠するものの、日本・朝鮮半島・中国東部まで広く分布している。私の「和漢三才圖會卷第五十四 濕生類 蛙(あまがえる)」を参照されたい。

「中華の人は蝦蟆を食す」私は中華料理でも、フランス料理でも、カエルを食べたことがある。鶏肉のようで癖は全くなく、普通に美味しい。

「吉野の河上、國栖(くず)と云ふ邑」現在の奈良県吉野郡吉野町国栖(くず)(グーグル・マップ・データ。以下同じ)。ウィキの「国栖」によれば、『国栖(くず、くにす)とは大和国吉野郡、常陸国茨城郡に居住したといわれる住民である。国巣、国樔とも書く』。「古事記」の『神武天皇の段には、国神イワオシワクノコを「吉野国巣之祖」とする。また』、「日本書紀」の応神天皇十九年の『条によれば、応神天皇が吉野宮へ行幸したときに国樔人が来朝し、醴酒(こざけ)を献じて歌を歌ったと伝える。同条では』、『人となり』、『淳朴で』、『山の菓やカエルを食べたという。交通不便のため』、『古俗を残し、大和朝廷から珍しがられた。その後』、『国栖は栗・年魚(あゆ)などの産物を御贄(みにえ)に貢進し』、『風俗歌を奉仕したようで』「延喜式」では、『宮廷の諸節会や大嘗祭において吉野国栖が御贄を献じ』、『歌笛を奏することが例とされてい』た、とある。なお、別に(以下はリンク先の記載が乏しく、意味がとれないので、私が原本に当たって書いた)「常陸國風土記」の久慈郡の条下の「薩都(さつ)の里」(現在の常陸太田市里野宮)には、『古(いにしへ)、國栖(くず)あり、名を「土雲(つちぐも)」といひき。爰(こゝ)に、兎上命(うなかみのみこと)、兵(いくさ)を發して誅滅(ころ)しき。時に能く殺して、「福(さち)なるかも」と言へりし所、よりて「佐都(さつ)」と名づく』ともある。]

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