大和本草諸品圖下 淡菜(イガイ)・白(シラ)貝・大貝(オホカイ)・紫貝(ムラサキカイ) (イガイ・サラガイ或いはアラスジサラガイ・不詳(ヒメシラトリ?)・ウチムラサキ)
[やぶちゃん注:国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミングした。]
淡菜(イガイ)
一名東海夫人
――――――――――――――――――
白(シラ)貝
扁ク有二橫文一味不ㇾ美
殻白色橫條多シ其ノ條
甚細也無二雜色一純白也
○やぶちゃんの書き下し文
白貝(しら〔がひ〕)
扁たく、橫文〔(わうもん)〕有り。味、美〔から〕ず。殻、白色、橫條〔(よこすぢ)〕、多し。其の條、甚だ細きなり。雜色、無し。純白なり。
――――――――――――――――――
大貝(オホカイ)
海邊ニ多ク生ス橫一寸七
八分長二
三寸橫
紋ノ條(スヂ)
多シ
食シテ
味不ㇾ美カラ是
亦白貝ノ類ナリ
――――――――――――――――――
紫貝(ムラサキカイ)
筑紫ノ海ノ㴱キ處ニアリ稀也
[やぶちゃん注:「㴱」は「深」の異体字。]
色紫也肉多クシテ殻ノ内ニ
ミテリ
味甚
ヨシ
三月
捕ㇾ之ヲ
ヨコニ細
ナルスヂ多シ
[やぶちゃん注:「淡菜(イガイ)」斧足綱翼形亜綱イガイ目イガイ科イガイ Mytilus coruscus 。「大和本草卷之十四 水蟲 介類 淡菜(イガイ)」、及び、「大和本草附錄巻之二 介類 淡菜 (イガイ)」参照。言うべきことは、そちらで総て、言ってある。図はよろしい。単簡ながら、特徴は押さえている。現物を見て描いたと思われる。
「白貝(シラ〔ガヒ〕)」異歯亜綱マルスダレガイ目ニッコウガイ科サラガイ属サラガイ Megangulus venulosus
或いは同属の、
アラスジサラガイ Megangulus zyonoensis
である。私もキャプションに賛同する。私は美味いと思わない。図は全体を丸く描き過ぎで、成長脈もはっきり描き過ぎて、膨らみが見た目、大きく感じられるのが難点。もっと平たい。「皿貝」だもの。
「大貝(オホカイ)」図の貝形が妙に歪んで気持ちが悪く、不詳。万一、キャプション通りに、前の「白貝」=サラガイ類の仲間であるとして、ニッコウガイ科 Tellinidae で調べてみると、この、見た目の地味さ、一見して殻に変形が多いところから、辺縁が欠損したり、殻頭部表面が剥離したりする傾向のある種で、どこか妙に薄汚れた印象からは干潟などに多そうで、そうしたマイナー・イメージを重ねて至ったのは、例えば、
ニッコウガイ科シラトリガイ亜科シラトリガイ属ヒメシラトリ Macoma incongrua
などが挙げられるかも知れぬ。より相応しい種があれば、御教授願いたい。
「紫貝(ムラサキカイ)」先般、「アマリガイ」の候補の一つにした、斧足綱異歯亜綱マルスダレガイ目マルスダレガイ科 Saxidomus 属ウチムラサキ Saxidomus purpurata をここで単独候補で挙げておく。]
« 大和本草諸品圖下 潮吹貝(シホフキガヒ)・彌勒貝・コブシガニ・石𧉧(カメノテ/シイ) (オニアサリ・イソシジミ或いはウスレイソシジミ・コブシガニ・カメノテ) | トップページ | 大和本草諸品圖下 石ワリ貝・タチ貝・ツベタ貝・シリタカニナ (穿孔貝の一種・タイラギ(図は無視)・ツメタガイ及びその近縁種・バテイラ) »