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2021/06/04

大和本草卷十四 陸蟲 山蝦蟆(やまかへる) (カジカガエル)

 

【外】

山蝦蟆 山邊ニアリ晩ニナク常ノカハツニカハレリ其聲カマ

ヒシカラス面白シ山州井手ノカハツ是ナリ鴨長明無名

抄曰井手ノカハツハ外ニ侍ラスタヾ此井堤ノ川ニノミ侍ナ

リイロ黑キヤウニテイト大キニモアラスヨノツ子ノカヘルノヤウ

ニアラハニヲドリアリク事ナドモ侍ラス常ニ水ニノミ住テ夜

更ルホドニカレガ鳴タルハイミシク心スミ物哀ナル聲ニテナン

侍ル○篤信云井堤ニカキラス處々山邊ニアリ或曰常ノ

カハツコヱカマヒスシキ處ニ井手ノカハツヲ一ハナテハ衆蛙ナキ

ヤムト云本草ニ山蛤アリ似蝦蟆而大黃色トアリ是井

堤ノカハツト同キ乎

○やぶちゃんの書き下し文

【外】

山蝦蟆 山邊にあり。晩になく。常のかはづに、かはれり。其の聲、かまびしからず、面白し。山州井手のかはづ、是れなり。鴨長明「無名抄」に曰はく、『井手のかはづは、外に侍らず、たゞ此井堤(〔ゐ〕で)の川にのみ侍〔る〕なり。いろ、黑きやうにて、いと大きにもあらず。よのつねのかへるのやうに、あらはに、をどりありく事なども侍らず。常に水にのみ住みて、夜、更(ふく)るほどに、かれが鳴〔き〕たるは、いみじく心すみ、物哀なる聲にてなん侍る』と。

○篤信云はく、井堤にかぎらず、處々、山邊にあり。或いは、「曰常のかはづ、こゑ、かまびすしき處に、井手のかはづを、一〔つ〕、はなてば、衆蛙(〔しゆ〕あ)、なきやむ」と云ふ。「本草」に「山蛤(さんがふ)」あり。『蝦蟆に似て、大に、黃色』とあり。是れ、「井堤のかはづ」と同じきか。

[やぶちゃん注:無尾目ナミガエル亜目アオガエル科カジカガエル属カジカガエル Buergeria buergeri である。当該ウィキによれば、『清流の歌姫とも呼ばれとても綺麗な鳴き声で鳴く』。『日本(本州、四国、九州、五島列島)』『固有種』。『他のアオガエル同様、メスはオスより大きく、体長』はオス三・五~四・四センチメートル、メス四・九~八・五センチメートル『体形は扁平で』、『岩の隙間に隠れるのに適している』。『体色は灰褐色で、不規則な斑紋があり』。『岩の上では保護色になる。また、両目の間に丁字状の暗色の模様が入る』。『体色の濃淡は、環境によりある程度変色させることができる』。『個体による色彩の変異はあまり顕著ではない』。『指趾の先端には吸盤が発達する』。『卵は直径』二ミリメートルで『暗褐色』。『幼生(オタマジャクシ)は渓流での生活に適応しており、口器は大型で吸盤状になり、急流で流されないように水中の岩に貼り付くことができる』。『山地にある渓流、湖、その周辺にある森林などに生息する』。『食性は動物食で、昆虫、クモなどを食べる』。『幼生は藻類を』摂餌する。繁殖期になると、『オスは水辺にある石の上などに縄張りを形成し、繁殖音をあげる』。『鳴くのは、繁殖期の』四月から七月の『夕方から明け方までである。和名の「河鹿」はこの鳴き声が雄鹿に似ていることが由来』する。四~八月に、『水中にある石の下などに約』五百『個の卵を数回に分けて産む』。『卵塊は直径』五センチメートル『ほどの球体』で、『卵は約』二『週間で孵化する』。『鳴き声から和歌の題材になったり』、『また』、『美声で唄う個体を「河鹿」と呼んで讃えることもあった』。『ペットとして飼育されることもあ』り、『江戸時代には専用の籠(河鹿籠)による飼育がされ』、夏場の贈答品として民間でも大いに流行った。今は想像出来ない風流である。本邦では、昭和一一(一九三六)年に『美川町』(現在の岩国市美川(みかわ))『の錦川中流域が「南桑カジカガエル生息地」』に、昭和一九(一九四四)年に岡山県『湯原町』(現在の真庭市の湯原(ゆばら))『が「湯原カジカガエル生息地」として生息地が国の天然記念物に指定されている』とある(引用元には鳴き声の音声データと動画もある)。蛙類の最後に、素敵な私の「小泉八雲 蛙 (大谷定信訳)」をリンクさせておく。

「山州井手」京都府綴喜(つづき)郡井手町(いでちょう)。古来より山吹と蛙(かはづ)の名所として知られており、歌枕として多くの和歌に歌われた。

『鴨長明「無名抄」』鴨長明の歌論書。建暦元(一二一一)年十月以降で長明没の建保四(一二一六)年の閒に成立したと考えられている。当該部は第十七話「井手の山吹、并かはづ」。国立国会図書館デジタルコレクションの「日本歌學全書」(佐々木弘綱・佐々木信綱共編・博文館・明治二四(一八九一)年刊)の当該部を参考にして示す。

   *

  井手の山吹幷かはづ

 或人語りていはく、事の緣ありて井手といふ所にまかりて、一宿つかまつりたる事侍りき。所の有樣、井手川の流れたる体、心も及び侍らず。かの井手の大臣の跡なればことわりなれど、河に立ち並びたる石なども十余丁ばかり、さのみやは遠くたておきけん。石毎に、たゞ

なほざりの如くは見えず。わざと立てたるやうになん侍りし。そこに古老の者の侍りしを、語らひて、昔の事ども尋ね侍しついでに、

「井手の山吹とて名に流れたるを、いと見え侍らぬは、いづくにあるぞ。」

と尋ね侍りしかば、

「さる事、侍り。かの井手の大臣の堂は一年(ひととせ)燒け侍りにき。その前におびたゞしく大きなる山吹、むらむら、見え侍りき。その花の輪(りん)はこがはらけの大きさにて、幾重(いくへ)ともなく重なりてなん侍りし。それをさやうに申しおきて侍るにや。又、かの井手河の汀(みぎは)につきて、ひまもなく侍りしかば、花の盛りには、黃金の堤などを築(つ)き渡したらんやうにて、他所には優れてなん侍し。されば、いづれを申しけるにか、今、わきがたく侍り。たゞし、下﨟(げらふ)のいふかひなく侍る事は、かく名高き草とて所もおき侍らず、『田作るには草を刈り入れたるが、よく出でくる』と申して、何ともなく、なん刈とり侍し程に、今は跡もなくなんなり侍る。それにとりて、井手のかはづと申す事こそ、やうある事にて侍れ。世の人の思ひて侍るは、『たゞ「かへる」をば、みな、「かはづ」といふぞ』と思ひて侍るめり。それもたがひ侍らず。されど、「かはづ」と申す「かへる」は外にはさらに侍らず。たゞこの井手河にのみ侍る也。色黑きやうにて、いと大きにもあらず。世の常の蛙のやうにして、あらはに踊りありく事なども、いとも侍らず。常には水にのみすみて、夜更くる程に、かれが鳴きたるは、いみじく心すみ、物あはれなる聲にてなん侍る。春夏の頃、必ずおはして聞き給へ。」

と申し侍りしかど、その後、とかくまぎれて、いまだ尋ね侍らず、となん語り侍りし。

 この事、心にしみて、いみじくおぼえ侍りしかど、かひなく、三年(みとせ)にはなり侍りぬ。年長け、あゆみ、かなはずして、思ひながら、いまだ、かの聲を聞かず。かの登連が雨の日に急ぎいでけんには、たとしへなくなん。

 これを思ふに、今より末ざまの人は、たとひおのづから、事の便りありて、かしこに行き臨みたりとも、心とどめて聞かんと思へる人もすくなかるべし。人の數寄(すき)と情けとは、年月をそへて衰へゆくゆゑなり。

   *

「曰常のかはづ、こゑ、かまびすしき處に、井手のかはづを、一〔つ〕、はなてば、衆蛙(〔しゆ〕あ)なきやむ」なんてことは、あり得ない。

『「本草」に「山蛤(さんがふ)」あり。『蝦蟆に似て、大に、黃色』とあり。是れ、「井堤のかはづ」と同じきか』「本草綱目」の巻四十二の「蟲之四」の以下。囲み字は太字に代えた。訓読は完全に私の勝手流なので注意されたい。

   *

山蛤【宋「圖經」。】 

校正【原(もと)は「蝦蟇」の下に附すも、今、分出す。】。

集解 頌曰はく、「山蛤、山の石中に在り、藏(かく)れ蟄す。蝦蟇に似て、大にして、黃色なり。能く氣を吞み、風露を飮みて、雜蟲を食はず。山人、亦、之れを食ふ。」と。

主治 小兒の勞瘦及び疳疾、最も良し【蘓頌。】

   *

「圖經」は「宣和奉使高麗圖經」(せんなほうしこうらいずきょう)。中国の宋王朝の徐兢(じょきょう)が編纂した朝鮮半島の高麗の史書。ですが、益軒先生、違いますよ。漢方生剤名ですが、これは本邦では、日本固有種のアカガエル属アカガエル亜属ヤマアカガエル Rana ornativentris を使用しました。中国での使用種はアカガエル属というだけで、種は判りませんでした。既に述べた通り、カジカガエルは日本固有種ですから。]

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